第2話 厄災の再来
「逃げなければ。」「逃げ切れるのか?」「まだ間に合うかもしれない」「どこに逃げる。」「夜の範囲はどこまでだ。」
様々な思考が頭の中で暴れる。情報処理が追いつかない。身体は夏の日差しの熱を失い、すでに冷え切っていた。
「走って、お兄ちゃん‼︎」
その瞬間、足に全ての力を集め、コンクリートを蹴りとにかく走った。持っていたビニール袋を手放し、ショートケーキが道に溶け落ちたことすら知らずに無我夢中に走る。とにかくこの場所から逃げなければ、、、数十メートルを過ぎた地点で轟音に僕は包まれた。
「やぁ 久しぶりだね。ゆずる君」
花色の瞳、透き通るように白い肌に夜を纏ったような漆黒ドレスに手を通した魔女がそこに立っていた。
異常な恐怖感と冷たさに襲われていた僕を見て不気味な笑みを浮かべる。
「お前はなんなんだ。僕になんのようだ。」
魔女という存在は以前からニュースや動画サイトなどで見たことがあるが、意思疎通できるという魔女は聞いたことがない。
そもそも会話が成立するのだろうか。恐怖でのアドレナリンにより一時的に思考が加速する。
「私は君だよ。簡単にいえば、君のために生まれた存在という立場にあるのかな。」
「これはお前が起こしたのか、、?」
周囲を囲む夜はいつの間にか街全体を包み込んでいた。
人の叫び声や動物の鳴き声は聞こえず、僕たちしかいないようにも感じれた。
「 お前は何者なんだ 」
「私はね....」
魔女が口を開いた時のことであった。黒い影が僕たちの上空を通過し、近くに着地、、、落下した。
「 久しぶりだな。話せる個体は...」
頭から血を流している青年はニヤリと笑った。