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孤児院

 

「もぅ行きますか?準備しますね。」ベルはピョコンと跳び撥ね、私物の入った箱を開く。

 

「ふふばれない様な服装がいいわ。何かあったら大変だからね。」

 

アマギのアドバイス通り控えめな服装を探した。まだ片付け切れず、部屋の隅に積み重ねられた、荷物をガサゴソ漁る。

ガサゴソガサガサ……ん――!?ギャー!!!!お父様に中身入れ替えられてる!!!!

 

いつも森に抜け出してる時に着ていた、動きやすい洋服あったはず。だが全部排除去れ、代わりに愛らしいドレス達でいっぱいになっていた。

 

「いいいっいつの間に!?やられた(泣」

「ふふ。ベルは楽しい人ね。いらっしゃい、私の服貸してあげるわ。」

「本当!!ありがとうございます!」

くるくると変わる表情のベルに、嬉しそうにアマギも微笑んだ。

 

「うん。ピッタリね。捨てないでとって置いてよかったわ」

アマギの部屋に行き、着替えを始めた。アマギが幼い頃着てた服が丁度あう。

ベルは鏡で自分の姿を確認した。うん。村人Aにちゃんと成り済ませてるな!我ながら平凡な顔だ((笑)

チラリとアマギの方も見ると、アマギも質素な服装に身を包んでいた。

 

「ああ…あ……アマギ」

「ん?なあに?」

「アマギって」

 

やばい!!何着てもかわいい!気品が隠し切れない!!

こういうのが本当の"姫"って言うんだろうな。

「褒めすぎ。そんな事ないわ。私からしたら貴方の方が可愛らしいわ」

 

そんな謙遜しなくてもいいのに。平凡顔が勝てる訳ない!

 

「美しい上にお心もお優しい。憧れちゃいます」

私もアマギみたいに姫様らしかったら、この結婚も欝じゃなかったかな?

 

でへへ!まぁ無理か。可憐な姫様に憧れるのは本当だけど、森でのびのびしてる方が性に合ってるし!

 

 

「心だなんてそんな……ただの偽善的な心なんじゃないかしら。」

「え?」

 

ポツリと呟くアマギ。小さ過ぎてはっきりと聞き取れなかったが、曇ったその表情を見て、何か気に障る事を言ってしまったんじゃないかと一瞬思った。

 


「ごめんなさい。何でもないわ。さぁ行きましょう。」

アマギはコホンと咳ばらいをすると、ほんわか笑顔に戻っていた。荷物の入ったカゴを手に取り、部屋を後にした。


 

―――――――

 

城を抜け出し、二人で町を歩いた。城から離れれば離れるほど、大地は綻びていた。城の中庭には、椰がまだ少しだが生えていたけれど、町外れまで来ると、それすらなくなっている。歩けば歩くほど、褐色の世界になっていく。

大地の悲しみがヒシヒシと伝わって来て、ベルの胸ははち切れそうだった。

 

大丈夫?とアマギは心配そうに顔を覗き込んだ。

「日差しに当たり過ぎたのかしら?馴れない土地だからね……」


アマギは帽子がわりにベルに上着を頭から被せた。

 

大地が泣いてる。足元の土を一掴みするも、潤いが全くなく、パラパラと手の中で崩れ落ちていく。ベルは空を見上げ、照り付ける太陽を見る。

「もぅ少しで着くから頑張って!!ね?」

 


それから少し歩くと、町外れの孤児院に着いた。教会の一角にあるようで、中からは、子供達の元気の良い声が響き渡っているのが聞こえる。手慣れて中に入っていく、アマギについてベルも教会の中に入って行く。

 

中には空から舞い降りる、女性と太陽の絵が飾られていた。

「天女様?」

「はい。我が国の守護の天空の巫女様の絵ですよ」

奥から、子供達に囲まれ神父が出て来た。

 

「アルノン神父!!お邪魔しております。」

「アマギちゃーん」

バタバタバタバタっと子供達がアマギに向かって集まって行く。すぐに子供達に囲まれた。

 

「アマギ様、いつもすみません。そちらの方は?」

アマギは手に持っていたカゴを子供達に渡すと、ベルを神父に紹介した。

 


「友達のベルです。姉妹の様に仲良くしてるの!!」

「初めまして!」

「初めまして。アルノンです。ほら皆も挨拶!」


子供達は、一心不乱にガサガサアマギの持って来たカゴの中のお菓子を漁っている。


「こら、ちゃんと挨拶しなさい!」

「初めまして。ベルって呼んでね!」

 

子供達は、名残惜しそうにカゴを置き、順に挨拶した。

孤児院には、五人の子供達がいた。みんないろんな理由で両親がいなく、家を無くした子達らしい。

アルノン神父が、教会で育てていた。

 

上から、10歳の少女キャメル9歳の少年リュイ7歳の少年ボル7歳の少女シェリー5歳の少女ライラはリュイの妹らしい。

 

「アマギの友達なのに、チンチクリンだな。」

「…………!?」

なななっいきなり何!?生意気な!!

 

「リュイ、失礼でしょう。ごめんなさい、ベル。気を悪くしないで。」

「本当の事だろ!!」

突然失礼な事を言い出したリュイに対し、キャメルはフォローをする。リュイはキャメルに小突かれふて腐れた。

そんな事に動じず、ベルも負けじと言い返した。


「大丈夫だよ。私もそう思うし。ただ、あえてそれを口にするなんて、リュイは子供みたいね。あ、まだ子供だったか!」

「なっ…!!」



リュイの悔しそうな顔を見て、してやったり!とベルは微笑む。うーんそんな自分もまだまだ子供だなぁ。

「あら、子供達と打ち解けて!さすがベルだわ。」なんて事を話しながらアマギとアルノン神父は微笑ましく眺めていた。

―――これって打ち解けてるの!!?なんか違くない?どっちかって言うと、私嫌われてるよね?


 

ベルは子供達の元から離れ、アマギと神父の元に戻った。入れ替えにアマギが子供達の所に行き、子供達と遊び出した。アマギは教会にある、オルガンを弾き、歌を歌ったりと楽しそうにしている。その姿をベルは椅子に座り、ぼんやりと眺めた。 

 

 

「ベルさんは、アマギ様のお友達でしたよね?」

アルノン神父が気を使って、ベルの隣に座って話を始めた。そういう事にして置いた方がいいのかな?と思い「はい。」と答えた。

 

 

「アマギ様とはどこでお知り合いに?」

「あ、最近この国に私引っ越して来たんです。それで仲良くして貰って。」

神父の質問にどこまで答えていいのかわからない。当たり障りのないよう、無難に答える。嘘は言ってないぞ(てへ


「彼女と会って、まだ浅いけど、アマギはお優しい方ですね。いればいるほどそう思います。」

「そうですね。私もそう思いますよ。幼さなき頃から、アマギ様を見ていますが、お心美しいかたです。今もそれは変わらず!ただアマギ様自信は…」

「ただ?」


息を飲み、神父の言葉に耳を傾ける。

その瞬間―――!!ばたーんと勢いよく扉を開く音が、教会中に鳴り響いた。驚き皆が振り返ると、入口の扉の向こうに鬼の形相をしたキラが立っていた。

ぎゃあっ!!!ひぃ!!!!

「神父、突然すまない。アマギ様達は来てますか!?」



ツカツカと中に入り、辺りを見回すキラ。ベルは慌てて隠れる場所を探そうとするものの、バチッと目が合い、見付かってしまった。

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