炎に染まる
バチバチと燃え上がる熱風と、名前を呼ばれる声で目を覚ました。焦げた匂いが鼻についた。
「よかった!」
ダイアナが懸命に、ベルを揺さぶりながら起こしていた。
まだ真夜中なのに、外は真っ昼間の様に明るい。
「何が起きてるの?」
「話はあとでだよ!!早くしないと焼け死んじまうよ。」
ダイアナはクナに火の粉が直接かからない様、覆い被さる様に抱きかかえて走り出した。ダイアナに抱きかかえられながら、クナは必死に泣くのをこらえている。
家を出ても村全体が炎に包まれている。火がまだ回っていないギリギリの隙間を見つけながら必死に外へ外へと走った。ベルもダイアナの後を追って、訳も分からないまま無我夢中で走った。
一体何があったのだろうか?あの後、すぐに水を配りに行く人。外に出稼ぎに出ている男達を呼び戻しに行く人。2グループに別れて、作業を早急に始めた。
そして、村長はお供をつれ王宮に交渉に出た。
水を無償で配ったお礼にと近隣の村から沢山の野菜を貰って夜は盛大に祝いの食事会が行われた。
出稼ぎに出ている男達とも連絡が行き届き、近々戻ってこれる様になった。連絡を受け、クナも久しぶりに父親に会えると喜んでいた。
残るは王都に出た村長の帰りを待つだけだったので村人達は個々の家に帰り、眠りについた。
「ベル!!そっちは駄目だ!!」
火の粉をさけながら走るベルとダイアナは足を止めた。振り返るとジニがいた。
「ジニ無事だったのね!」
「ベルも無事でよかった。ダイアナとクナも一緒だね。」
三人の顔を確認すると、「こっちだ!!」とジニは辺りを確認し誘導した。
喜ぶのもつかの間、手をひかれまた走り出した。
「そっちには、夜盗がいるんだ!見付かったら酷いめにあわされるよ」
―――夜盗?なんで静かな村なのに。何故??
村の裏手に回ると、村人達が、物陰に隠れてながらいた。
「みんないるかい?」とジニが村人が逃げそびれた者がいないか、人数確認を取り始めた。
「巫女様、無事で何よりです。」
村人達が、ベルの無事な姿を見て集まって来た。
「あ。。うん、ありがとう。でも何でこんな事に?」
「その………。」
村人の一人が躊躇いながら答えた。夜盗は、この村の泉を狙ってやってきた。周りの町や村に、水を配っているのを目をつけられたのだろう。
「私のせい?」
蒼白するベルに村人達は慰めたが、逆効果だった。
「大地が荒廃しているせいで、泉の本来の入り口は塞がれてますので、泉はまだはれてないですから、大丈夫です。村人さえ捕まらなければ、泉にたどり着く事はあいつらに出来やしない!」
「でも、村が燃えてるんだよ!!」
目に移るのは真っ赤に燃える村。泉が守れたとしても、家も何もかも失ってしまった。
私が軽々しく、水を配ろうなんて言ったから?
こんな事想像もしてなかった。こんな事になるなんて微塵も思わなかった。
ただ、みんなで笑えたらと思ってただけ。
結局は浅はかな考え。
「私、会ってくる!!」
「何言ってるんだ!?」
ジニが慌ててベルを制止する。
「会ってどうするの?話が通じるような相手じゃないよ!!それに、夜盗共は天女様、君を探しているんだ。」
――――天女を?
「きっと泉だけじゃ物足りなく、天女を手に入れて金儲けをしようとしてるんだ。何をされるか分かったものじゃない。」
「私を探してるなら尚更。ここにいたらみんなが危ないよ!まだ負傷者がでていないうちになんとかしなきゃ。」
と、次の瞬間「キャーッッッ」と甲高い叫び声があたり一面に聞こえた。がらんと何かが崩れる音も共に鳴り響く。異常なその物音の先には、息も出来なくなりそうなくらいの悲惨な現実があった。
身の丈二メートル近い大男に、クナが捕まっていた。
ダイアナは投げ飛ばされたのか、地面にうずくまり気を失っていた。
「ちょこまかと逃げ回りやがって。」
男はクナを人質にとりニタニタ笑っていた。小さいクナの体が、男の意図のまま振り回される。
「おっと。よけいな事すると。」
「ゃ…め…く……………な」
うっすらと意識が戻って来たのか、ダイアナがクナの名前を必死に呟いていた。
やめて!!もうやめて!ベルは悲痛に叫んだ。
「あんた達が探してるのは、あたしよ!!」
「天女様……。」
村人達を後ろに、ベルは大男に近付いていった。
「お前が天女?」
ちんちくりんだと言わんばかりの目で、ベルを品定めしだした。
「こんなちんちくりんで悪かったわね。でも残念ながら私よ!私と引き換えにクナを返しなさい!!」
「ベル!!」
「わかってる。でもクナを人質にとられるより私の方が逃げ出せる可能性が1%でもあるから。」
引き止めるジニに耳打ちし、離れた。何も出来ないジニは悔しくて唇を噛み締めた。
野党達は必死に引き留めようとする村人を見て、天女とまでは思わなくても、まあまあ村人の中では重要なガキなのかと思ったらしくベルの提案を受け入れた。
「大人しくしてろよ。」
「まず、クナを離して!!そしたら、抵抗せずに捕まるわ。」
「まぁいいだろう。」
小娘ひとりなにかしようとも大差ないとでも思っているんだろう。ベルが4・5人に囲まれると、クナが解放された。泣きながらクナはダイアナの元へ走った。
ダイアナはクナを抱きしめながらごめんとありがとうを繰り返していた。
ベルは手首には縄をかけられ、完全に拘束された。




