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第三王女

 

―ガヤガヤガヤガヤガヤガヤ

 

王宮は騒がしくなっている。ここは『アメジスト王国』

本日はアメジスト王家第三王女の15の誕生日。各国から人々が集まり、盛大に行われようとしている。

 

「ベル様!ベル様はどちらですか!?」

王宮に仕える使用人達が第三王女を必死に捜していた。パーティーが始まると言うのに、主役が見当たらない。

 

名は『ブルーベル=メイ=アメジスト』

色素の薄い茶色い髪に、薄紫色の瞳。まだ幼さが少し残る顔つきの、愛らしい少女だ。三姉妹の末っ子で姉達とは10近く歳が離れていた為、回りから可愛がられて育った。そのせいか、だいぶ自由奔放になってしまった。

 

「困ったものじゃ。また、城を抜け出して森にでもいってるんじゃろ。いい、儂が連れ戻して来る。」

ため息がてらに重い腰を老人はあげた。

 

 

「フォルト公様すみません。」


『フォルト公』と呼ばれる老人は、アメジスト王家に先帝の代から仕える、重臣の一人だ。三ノ姫の世話役も任されていたから、大体の居場所は予想出来た。

王宮の裏側には、森があり、ベルは大体そこにいた。森には言い伝えで、森を守護する聖獣が住んでいる。アメジスト王家の『雨露の力』は初代アメジスト王家の者がその聖獣を助け、礼に力を分け与えて貰った事からと言われている。

今となっては、聖獣を見た者はおらず、何百年と昔の話しにだから、真偽を確かめるすべはない。伝説でしかないけれど、アメジストにとっては、王族しか入れない、神聖な森であった。

 

「ベル様!出て来て下さい!!」

森の入り口に立つとフォルト公はベルを呼んだ。

 

…………………

葉がサラサラと風に揺れる音しか聞こえない。

フォルト公は「コホンッッッ」と咳ばらいをすると、森に向かって独り言を始めた。

 

「本日のオヤツはベル様の好物のシュークリームじゃったのにベル様がいないのでは、仕方ないですな。」

くるっと森に背を向け、歩き出した。


 

すると、サラサラと揺れていた葉の音が、ガサガサと揺れだす。次の瞬間、凄まじい音と共に叫び声があがった。

「きゃーーーー!!」

ズササササッッッドサッッッッ!!木の上から、薄紫色の瞳の少女が降って来た。

 

「痛たたたた」

立ち上がると、ヒョコヒョコとフォルト公の元に近寄って来る。

 

 

「シュークリーム食べる」

「はい。では、ベル様!祝いの席に御準備しますので、さっさと支度しますぞ。」


フォルト公はニンマリと笑いながら答えた。

―――――第三王女捕獲完了!―――――

 

 

「嫌ー!騙したの!!?じーや!酷い」

「何を人聞きの悪い。嘘ではありません。ちゃんと、シュークリームの準備はしてありますぞ。」

 

うぅう確かに嘘は付いてないけど!!

ジタバタ暴れるベルを捕まえて、フォルト公は城へと戻って行った。

王宮に戻ると、ベルは使用人達に着替えさせられてた。淡いふんわりとした水色のドレス。装飾品はベルの瞳と同じ色をした薄紫色だ。清楚な感じだけど、愛らしい格好である。

 

 

「動きずらい」

ベルはドレスの裾をヒラヒラさせながらふて腐れていた。

 

 

「ベル様、笑って下さい。今年は特別な日。我慢してくだされ。」

フォルト公はベルの仕上がりを見て満足そうにしていた。

 

 

………!!?特別ってなんだろうか?誕生パーティー以外にも何かあるのか??式とかパーティーなどかしこまった事が好きじゃなかったが、ベルも観念した様だ。

 

「わかった!!シュークリームはいっぱい食べるからね?それは譲らないよ!!!!」

「いいですよ。好きなだけ食べて下さい」

 

いつもはシュークリームは3個までと制限されるのにしないなんて怪しすぎると思いつつ、抵抗しても無駄そうなので、ベルはパーティーが行われている大広間にその間々連れて行かれた。

大広間の扉を開くと、中では盛大にパーティーは行われていた。

 

飾りも料理もいつもと比べ物にならない位豪華。参加している人達も各国から、倍以上の人数が集まっている。

上座に座られている父親のアメジスト国王と目が合ったので、即座に父親の元に行き挨拶をする。

 

「父様、本日はわたくしの為に盛大なパーティーを開いてくださり有り難うございます。」

ヒラリと膝を付き、ドレスの裾を持ち上げ、深々と頭を下げる。

 

 

「ベルやっと来たか!待っておったぞ。」

ベルがきちんと挨拶をしたので、国王が上機嫌になった。

 

「ささ、皆さんにもご挨拶に行って来なさい。お前の為に集まってくれたんだ。」

 

 

ベルは言われるが間々に、客人達に挨拶にまわり始めた。


―――わざわざ来たのに、父様の機嫌をそこねてシュークリームお預けになるのは嫌だもの―――

 

一人一人丁寧に挨拶をする。軽く世間話を交えながら。物腰しも柔らかに。最上級の笑顔で微笑んで。

普段からフォルト公に、厳しく王族としての礼儀作法を叩き混まれているので、皆「何て愛らしく、礼儀正しい王女なんだろう。」と口々に呟く。


そんな姿を見て、国王も安心パーティーを楽しみ始めた。

一通り挨拶を済ますと、主役にも関わらず隅っこでシュークリームをほうばり始めた。

 

「うーん!!あまあま。」

外はサクサク中はとろーり。生クリームとカスタードのコンビネーションが最高。

皿に沢山盛ってあったのを、ペロリと平らげている。無我夢中で食べていたら、後から声をかけられた。

 

 

「ベル!そんなに食べると太りますよ。」

クスクスと笑い声と共に優しい声が聞こえる。

 

 

振り返った先にいたのは、姉達だった。

第一王女『アニシス』第二王女『リルア』アニシスはアメジスト後継者として婿をとり国にいるからたまに会うけれど、リルアは遠く『シャノール王国』に嫁いだから会うのは久しぶり。

 

「姉様達!!来てたんだ!」

はしゃぎながら姉達の元へと駆け寄った。

 

「久しぶりね。ベル」

「本日はわたくしの為にお越しいだだき有り難うございます。」

ぺこりと挨拶をする姿を、姉達は微笑ましく見ている。

 

「ベルもいつの間にか大人になったのね。立派に挨拶なんてして」

「小さい時は、こういう場所嫌がって森に隠れてたのにね!偉い偉い」

姉達に褒められて、顔を赤らめながら喜ぶ。

 

 

「でも……本当はシュークリームに釣られただけだったりして!!?」

 

―――――――――ギクッ!!!!!!さすが姉様達鋭い!何でもお見通し!!!!!!?

 

 

「違うよ!今日は特別な日なんだって!!」

とりあえず否定してみた。嘘は言ってないよね(てへ

 

「じゃあ!ベルがそう言うなら、そういう事にしておきましょうか。」

アニシスが冗談まじりに答えた。リルアもクスクス笑っている。

 

「うーん信じてないでしょ!?」

ベルは不満だったけれど、この話題を続けると墓穴を掘りそうだから、やめておいた。

 

「でも、本当にじーやが今日は特別な日って言ってたんだけれど、姉様達は何か聞いてる?」

ベルは気になっていた事を投げかけてみた。ベルの誕生パーティーにしては、客人も規模も盛大過ぎる気がする。

 

 

「私は、ベルの誕生パーティーって名目で父様から招待状がきてましたよ?」

「そうね。私も聞いてないわ。でも、この盛大さに加えて、フォルト公の意味深発言を考えると何かありそうな気もするわね!」


アニシスとリルアが真剣に推理し始めた。


「多分私の予想は、ベルの結婚相手探しパーティーじゃないのかな?若い殿方も多いし。リルはどう思う?」

「えぇ。それなら、納得できますね。ベルももうお年頃ですし!」

 

いやいやいやいや!そんなの私迷惑だから!

ベルの否定も虚しく、姉達の頭の中では、「ベル結婚相手探しパーティー」が第一候補にあがっていた。

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