どうしたい?
あぁなんか最近、邪険にされてばかしだからジーンと来るね。ベルが感激に酔いしれていると、ダイアナが裏口から出てきた。家の前にできた人だかりに「散れ」と言わんばかりの嫌な顔をする。
「何だ!?人の家の前に集まって。裏まで騒ぎ声が聞こえてるよ。」
「ダイアナ、悪いな。珍しいお嬢さんを見に村人達が集まったんじゃよ。許してやってくれ。」
「村長!!村長が言うなら仕方ない、人だかりも我慢するか。こっちこそ突然村に客連れてきて悪かったね。有り難う」
不満そうなダイアナも一瞬にして表情が変わった。村長何者だ!!?と思う。
「お前はよく、群からはぐれた犬やら駱駝やら拾っててくるからもうなれたよ。」
村長はカッカッカッと高らかに笑い声をあげる。
ダイアナも村長に続く様に、高らかに笑い声をあげた。
「あたし!!動物と同じレベル!!!」
「まぁ、細かい事は気しない。」
豪快に笑うダイアナにベルは自然と一緒に笑った。
「そういや、ベルあんたなんで外にいるんだい?」
「あぁ!目が覚めたから、折角泊めて貰ったから、何か手伝おうかなーと思って。何かやることある?」
「恩返し精神。いいじゃないか。恩を売りたかった訳じゃないけど、そういうの嫌いじゃないぞ!!」
嬉しそうにダイアナは微笑んだ。
「そうしたら、あれに水を汲んできてくれないか?」
家の隅っこに置いてある瓶壷を指を指す。ベルは軽く引き受け、瓶壷を抱き上げた。
ベルはこの辺には川があるのか?聞いたらみんな不思議そうな顔をした。この辺りが全然わからないベルにとって、当たり前な質問だった。
「あ、そうだよね。村長、誰か案内だせる?」
「そうじゃな。ジニ!!!ジニはいるか!」
『ジニ』と呼ばれのはベルと同じ年頃の少年で、すぐ、村人をかき分け村長のもとまで走って来た。
「じーちゃん!!!そんなに名前連呼するなよ。はずかしいだろう。」
ジニはソバカスがチャームポイントの可愛らしい男の子。
ここの村人は外仕事が中心なのか、焼けた肌の人が多かったが、ジニはあまり焼けていなかったので、村人の中心に立つと少し目立つ。
「そんなヒョロッこいのに大丈夫か?」
「ジニ、女の子何だから優しくしなよ!」
「間違っても変な気起こすなよ!!」
みなに冷やかされる物だからジニは気恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまった。
それが面白くて、村人たちはまたに冷やかした。しまいにはベルを直視出来なくなってしまった。
「ジニ……?」
「………。」
「ジニ?よろしくね。ジニ?」
「あぁよろしく。」
チラッとベルの方を向き、返事を返すとまた目が泳ぎ始めた。
村を出て、瓶壺を抱えながら二人並んで歩く。
「ジニ!!水場は遠いの?」
「……ぁ……あぁ………。」
「ジニは私の事嫌いなの??」
はっきり物を言うベルに、しどろもどろながらジニは慌てて訂正をした。
「いや………あ……あぁ、もぅ。うちの村、同じ位の女の子なんていないからどうしていいかわかんないんだよ!あぁ……何言ってんだ僕は。」
「えっ……」
確かに、村にはお年寄りばかり。昨日ダイアナもいっていたが、この村の働き頃の男達は仕事をしに外にでる。ダイアナの様に旦那が単身赴任しているのが珍しかった。
大半は、仕事を求めて家族共々村を出ていった。住み慣れた村に残ったのはお年寄りばかりになったのは仕方ないのだろうか。
ふてくされながら真っ赤になるジニを見て、鈍感なベルも照れた。
「いや、そんな女の子扱いされるとこっちも照れるよ!!がははは」
「がはははって。少しでも女の子って思った僕が馬鹿みたいじゃん…。」
「ちょっと、いくら本当の事だって言って良いことと悪いことが!!」
ベルの親しみやすい性格に、ジニもいつの間にか緊張が解けていた。
「ジニは村を出ようと思った事ないの?」
「なんで?」
「なんでって若い人はみんな外に出て行ったんでしょ?」
「僕は村長の孫だからね。」
「孫だから残らなきゃいけないって事?」
自分と一緒に思えて、ベルは何とも言えない感じだった。
が、違っていた。ジニには首を横に振った。
「違うよ。確かに決められたレールの上を進んでいるかも知れないけれど、僕はいつかこの村の長を継いでまた活気に満ち溢れた村に戻すんだ。大それた事を言ってもまだ何も出来ない子供だから、先の話だけどね。」
目を輝かせながら、理想を語るジニは人一倍輝いて見えた。見た目はまだまだ子供なのに、しっかりと考えをもっているジニを見てベルは驚いた。
「ジニ、あなた凄いのね。」
素直にそう思う。私なんて。
自分で決めたなんて言ってるけれど、仕方がないと諦めていた。
「いつか村長になって、いまは寂れたこの村をまた、輝かせるんだ。」
真っすぐな瞳にベルは羨ましく思った。私は何を望んでいるのだろうか?
森が見たくて城を抜け出した。ちょっと木を見たら、帰ろうとしてたくらいの浅はかな考え。
抜け出したらどうなるか何てちょっと考えればわかるだろう。イルフォードだけでなくアメジストまで迷惑がかかるだろう。
子供じみてるのはわかっているが、止められない衝動だった。
結婚したくない。王宮に籠もりたくない。けれど、しかたない。逆らうほど子供じゃないし、従うほど大人でもない。そんなベルの葛藤。
自分で選んだ道だけれど、この国で「どうしたい」が見あたらなかった。自分の不甲斐なさにうなだれて、下を向いていたらジニが顔を覗きこをでいた。
「どうした?」
「んん!何でもないよ!」
心配げなジニの顔に、ベルはにかっと笑って見せる。ピョンと飛び跳ねながら、元気度をアピールした。
「本当に?疲れたなら休んでも大丈夫だよ?」
「大丈夫だって!ほら、早く行くよ。」
ベルはジニの手をとり、引っ張る様に急かした。
「――――手手」
「手?もう馴れたんじゃないの?普通に話してるし?」
「いや、いくら何でもそれは恥ずかしい」
茹でダコの様に真っ赤に染まるジニにベルはおかしくておかしくて、ケラケラ笑った。
「本気で心配したのに、無駄にした気分だよ!」
ジニはぷいっと明後日の方を向いてプリプリした。
ジニも本気で怒った訳じゃないけど、どうにも照れ隠しもあるせいか引くに引けない。
「ごめんっ笑いすぎた。」
腹を押さえ、必死に堪えようとする。
「そんな怒んないでよ!ごめんね。」
「あたし、ジニの事好きよ。あたしも同じくらいの年頃の子周りにいなかったから、友達が出来たみたいで嬉しい。仲良くしましょ!!」
嬉しいのは本心。ずっと王宮で生まれ育ったベルには「姫」と扱われたから、いくら自分がフレンドリーに接しても友達にはなれなかった。
人は裏があるけど、植物や動物達はそのままの姿だから。
だから森にいつもいた。今のジニは私を普通に扱う。だから友達みたいに見えた。
屈託のないベルの笑顔と言葉に、ジニの怒りも収まり始めた。
二人並んで再び歩き始めた。




