表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/28

生命の根源


教会の裏まで廻ると、リュイとライラはすぐに見付かった。日差しを避けるように建物の影に入り、チョコンと座り込んでいた。

ベルはそろっと近付いたが、足音に気付きリュイが警戒態勢に入った。


「来るな!!」

「うっさいわね!!私はあんたに言ってやりたい事があるのよ!」


ばれてしまったが最後。お構いなしに、ズンズンと近寄った。


「なんだよ。」

「全部聞いたよ!それを踏まえつつあんたには二つ言ってやりたい事がある!」


チラリとライラの方を見ると、目まぐるしい状況の変化についていけてなかった。リュイは中に戻るよう促した。リュイは幼いライラにはまだ伝えたくないのだろう。


「ライラ、あっちいってろ。」

「やだぁ」

リュイを気にして、中々行こうとしない。


「シュークリームいっぱいあるよ!食べてきたら?」

「いいよ。食べて来な!!」


諦めた様にはぁっとため息をつきながら言う。ライラは許可が降りると、嬉しそうにパタパタと教会の中に戻って行った。


「何だよ、早く言え。」

「あんたって本当に!偉そうでムカつく。アマギの事も気になるんだから、さっさとすますわよ!!」

人差し指を高らかに突き上げる。



「一つ目!!シュークリーム"なんて"って馬鹿にしないで!!」

「はぁ?そんなくだらない事わざわざ言いにきたのか!?」

「くだらないってシュークリームを馬鹿にするとシュークリームに泣くわよ!!シュークリームの神様から天罰くだるよ!!」

「天罰」


リュイはフッと笑った。子供らしくない笑い方で。


「だから、それがムカつくの!!」

「何なんだよお前は!!」


只でさえ気が立ってるのに、ベルの言っている事が、何がなんだかさっぱり分からないリュイは、イライラが募る。


「悲しいなら、子供らしく泣けばいいでしょ!!そぅ!!それが二つ目。私だったら泣いてやるわ!」

エッヘンと偉そうに言う。


「私だって母親はいない。しかも、この国に来て一人になってしまった。」

「………。」

「けれど、周りにはよくしてくれる人がいて、私は幸せ者だと思う。」


リュイは黙って聞いていた。

「リュイにもそういう人っているでしょ。」


誰にも母親の穴は埋められないけれど、前に進む為に手を差し伸べてくれる人はいる。

悲しみは消えはしない。それから逃げてもどうにもならないし、かと言って忘れろとも思わない。それをどう乗り越えて幸せになるかだ。リュイにはライラがいる。神父様たちもいる。


「月並みな言葉かもしれないけれど、母様は私達が幸せになって欲しいと思ってるよ。私はそう信じてる。私母親の顔も見た事ないの。本当にそう思ってるかなんてわからない。でも未来は自分で変えるしかないんだから。プラスに思った方がいいでしょ?」



リュイは涙目になっていた。

「ふふふ。」ベルは嬉しそうな顔を浮かべ、ガシガシリュイの頭を撫でた。


「なんだよ!泣いてねぇよ!」


リュイはベルの手を払った。さっきまでの拒否の表情は無く、照れて隠しに反抗しているのが伺えた。

「戻ろっか。」


神父達が待っている。建物の方を指を指し、二人は協会に向かい歩き出した。


「ねえ、リュイ。」

ベルは途中で足を止めた。



地面に、弱々しく雑草が生えているその光景が目に止まる。日陰にひっそりとして。

「何?」リュイは不思議そうに訪ねた。



「町には、植物が全然なかったのにここには、あるんだね。」


ベルは座り込み、そっと指でなぞる。褐色の地面に、今にも枯れてしまいそうな姿だけれど、必死に土に根を張ろうとしていた。




「それは、アマギ様と一緒に植えたんだ。」

「へぇ」

「いろんな所に植えたんだけれど駄目だった。それももうすぐ枯れちゃうよ。」


神に見捨てられた国と呟く者もいたが、僕らは必死に、抵抗した。でも太陽は、そんな人々をあざ笑うかの如く日増しに強くなっていった。



「まだ、生きているよ。この子!!」

「こんな、日照りばっか続いてるんだから、持つわけないだろう!!」


リュイは自分に言い聞かせる様に叫ぶが、ベルは黙って草を見つめていた。



「リュイは、この子に頑張って欲しい?」

「当たり前だよ。出来るなら緑になっている所を見てみたいよ。」


アマギが切々と語っていた、緑に恵まれていた頃のイルフォード。夢のまた夢の様な事だけれど、希望を捨てず、アマギは植樹し続けていた。そんな姿に心打たれ、協会にいるみんなは手伝い、共に植え続けていた。


ベルはリュイの両手をギュッと握ると、目を閉じた。


「手!?」

「いいから信じなくてもいいから、この子が元気になって欲しいと思ってるなら、それを願って。」



ベルのいつになく真剣な言葉に、「うん。」と頷いていた。天を見上げ、ベル歌いだした。



『この大地よ憂いに満ちよ悲しければ我も悲し

我が雫で潤うなら涙枯れるまでこの身を捧げよう天露の導きあれ。愛し愛しき慈しい我が大地』



悲しげなのに暖かく、なんとも不思議な歌。格別上手いと言う訳ではないが、澄んだ心地よい歌声。リュイは手だけでなく、胸の内までギュッと掴まれた気分になった。その瞬間空を見上げていたリュイの顔に、ヒヤッとした感覚が走った。

「え―――――?」


気のせいかとも思ったけれど、また同じ感覚が走る。

「え―――雨――!?」

リュイは蒼白しながら叫んだ。


ポツリポツリと降ってくる。それは、微量でしかないけれど確実に降っていた。空は照りかえっているのに、どこから途もなく降ってくる雫は幻想的だった。

ベルは歌い終えると、力を抜き、リュイの手も離した。


「もぅちょっと雨雲がきてくれれば降ったのにな。」

「ベルッッお前がやったのか!?」


喚起に満ちた声をあげて驚く。リュイは初めて『雨』を見た。「秘密だよ?」と言うとベルは話し出した。


「私は、手伝っただけ。この雨はリュイの思いだよ。願えば叶う気持ちもあるの。」

「僕の………」

「微量だけど、自分でも何か出来てるでしょ?」

心なしか潤った気がする植物を見て、ベルは嬉しそうに笑った。



「すげぇもん見ちまったな!!」

ジャリッとした足音と共に、ニタニタしながら薄気味悪い男達が近づいて来た。

一人はベルの3倍はあるんじゃないかと思わせる大男で、もう一人はひょろっとした男だった。いかにも狼藉人みたいな二人組で、ベルはリュイを背中に庇うと警戒した。



「こんな珍しい女高く売れるんじゃないか!!」

「だな。」

間合いをあけようとするが、男達はジュワリジュワリと近づいて来る。


「雨が降らせるなんて、もの好きな成金が囲いそうだぜ。」

「王族も、金を惜しまないんじゃないかッッ!!必死だからな。グフフ」



ベルは男達が目を逸らした隙に、リュイに耳打ちをした。

「あんた、先に逃げなさい。」

「お前はどうすんだよ。」


リュイは不安に見る。今にも「僕が残る」と言い出しかねない目で見詰めてくるから、ベルは先手を打った。

「馬鹿ね。狙ってるのは私なんだから、私が呼びにいったらアイツらも付いて来るでしょ。協会の中には、小さい子もいるんだから。今はリュイにしか出来ないんだから誰か助け呼んできてよ!!」

「僕にしか出来ない、、、」



リュイはわかったと首を縦に振ると、男達の隙を見て走り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ