シュークリーム
ドガラガシャーンッッッ「ギャー!!」
王宮から、もの凄い音と叫び声が響き渡る。
「ベル様、私達がやりますから!」
声を聞いて集まって来たメイド達に、ベルは止められた。
ボウルをひっくり返し、薄力粉まみれになりながら、ベルは格闘していた。
「だってみんなシュークリーム見た事ないんでしょ」
「そうですが、、しかし」
ベルをチラチラ見ながら、心配そうな顔を浮かべる。
正直見たことない我々のが上手に作れる気がすると思いつつ、一生懸命作っているベルに誰も言えなかった。
イルフォードに来て以来、まだ一度もシュークリームを食べていない。これ以上シュークリームを補給しないと、ベルは怪獣にでもなって暴れだしそうだった。
この間アメジストに送った文に、シュークリームの愚痴も書いたら、返事にシュークリームの材料とレシピ添えられていた。
「これって、自分で作れって事でしょ!!」
料理なんてやったことのないベルにとって、未知の世界。
しかし、愛しのシュークリームを食べる為に悪戦苦闘ながら、頑張っていた。
「何で書いてある通りにやってるのに。」
ショボーンとしながら、出来上がったシュークリームを見詰める。
膨らみきれず、シナシナした姿が横たわっていた。一口食べて見ても、ベルいわく『外はさくっと』の生地のサクサク感がないので、美味しさが半減する。味はまずくはないのだが、食感はやはり大事である。
「うぅー!!シュークリーム好きとして!!こんなの納得出来ない!!!!」
大量に出来上がった失敗作を頬張りながら、自己嫌悪になった。
キッチンでガヤガヤしていると、少し遅らばせながら騒がしい音に反応し、キラが様子を見に来た。
「何を騒いでいるんだ?騒がしい。」
「げっキラ!!」
やばいっ絶対馬鹿にされる。シナシナなシュークリームを物影に隠そうとしたが、遅かった様だ。見付かってしまった。
「菓子か?しかもこんな大量に」
所せまし置かれたシュークリームをキラは一つ掴むと、パクっと頬張った。
「あ"ーッ!!!!」
ベルの叫び声に驚き一瞬、キラの動きが止まった。
「何だ!!食べちゃまずかったのか?」
「みんなで食べようといっぱい作ったからそれはいいんだけれど……」
ゴニョゴニョと煮えきらないベルに、キラが痺れを切らした。
「はっきり言え。」
「もぉーっ!!失敗作だから。人様に食べさせる様な物じゃっっないの!!」
キラはジィ―とシュークリームを見詰めると、もぅ一つシュークリームに手を伸ばした。
「普通に旨いと思うぞ?」
―――え?
まさかキラに褒められるとは思ってもいなかった。思いもよらない言葉に、ベルは赤面した。
「なななな褒めても何にもでないよ!!」
よくわからない照れ臭さを隠す為、ベルもシュークリームにかぶりつく。
―――びっくりした。絶対絶対絶対馬鹿にされると思ったのに。
ガブッガブッ真っ赤になりながら、無心に食べ続けた。
「お前、頬にクリームついてるぞ。がっつきすぎだ。」
キラが右頬を指差す。ベルは手で頬を触ると、クリームがベッタリと付いていた。
「ぎゃ――!?」
慌てて頬を拭う。その姿を見て、キラの表情もいつもより緩くなっていた。
―――――そんな風に笑うんだ。
普段眉間にシワを寄せムスッとした顔ばかりなのに、案外優しく微笑むんだ。
口をポカーンと開けてキラを見ていたら、目が合ってしまった。
「ん?」
「何でもないよ!」
「あらー。賑やかで楽しそうね!」
「アマギ!!」
振り返るとアマギも厨房に来ていた。
「甘い香りが私の部屋まで来たからつい来ちゃった。」
シュークリームの甘い香りがいつの間にか王宮中に広がっていた。それもそうだ。シュークリームはキッチンに山積みになり、それでも置ききれず、ダイニングルームまで侵食している。
「いっぱい作ったのね!!」
「うーん」
シュークリームがなかなか納得いく出来栄えにならなくて、気付いたらこんなに出来上がっていた。
「珍しい洋菓子ね!私も一つ頂いていいかしら?」
「良いけれど失敗作だよ!」
「そぅなの?」
アマギが一口食べる。口の中に広がるトロトロと甘々。
「おいしいわ!」
サクサク感がないんだけれど、みんな美味しい言ってくれるし。まっいいか!
「で、この大量のシウリウム?はどうするんだ?」
「シュークリーム!どうしようか」
キラがシュークリームを頬張りながらベルを見る。つい熱中して作り過ぎたといえど、さすがのベルでも、食べ切る前にダメになりそうな量ある。王宮のみんなで食べてもだ。
「無駄にするなよ。その材料費は何から出てると思う。」
チクリと一言。国民が汗水流して働いて収めている税金です。―う"、、、痛い所を。
「わかってるし、反省してるよ!」
それに出来損ないのシュークリームといえど、粗末にしたら、シュークリームの神様に祟られる。
「折角だし配ったらどうかしら?珍しいお菓子だし、子供達も喜ぶと思うわ。」
「そうだね!さすがアマギ」
さっきまで絶望的な表情だったベルの顔が一気に明るくなる。アマギの優しさが胸に染みる!!
ベルはピョンッと飛び上がると、シュークリーム達をカゴに詰めはじめた。




