始まり
公大な大地には強い陽射しが照り付ける。
かつて、世界の覇王と呼ばれ太陽を守護としていた大国『イルフォード』は、大地はヒビ割れ、運河の水量は減り、砂漠と化す地が増していた。植物も枯れ果て、青々としていた国が褐色の国へと変わり果てていく。
水不足による、飢饉にさいなまれていた。
「限界だ。これでは国民は死に絶え、王国は絶えてしまう。」
毎日王宮に使える幾人者武官達が集まり、対策を練るが、全く現状は改善される気配すらない。
「天からは見離され、滅びを待てと言うのか。」
国民の大半が生きる事を諦めかけていた。
大国とも言われた国から恵が消えたのは、大切な神の遣いを失ったせいである。
国には『太陽から遣わされた異国の天女』の伝説があり、天女は国では、『天空の巫女』と崇められ、国に恵をもたらす存在であった。
しかし、ある事件をきっかけに天女の加護を受けられなくなってしまった。
国を捨て、新境地を目指すべきなのか。
緑は失われど、国を思う心は失われず、国を捨てるくらいなら、共に朽ち果てる覚悟を大半の者がもっていた。
そんな時、一つの発言が国を揺るがせたのだった。
【遥か北の小国『アメジスト』には雨露の儀と言う物があるらしい。】
「アメジスト!!そんな小国に頼るつもりですか!」
「そんな事をしたら、イルフォードの名が恥じます」
誇り高き、貴族達には国を卑下する事が出来なかった。
「愛国心が強いのは、素晴らしい事だ。しかし!"名"などより国民が大事ではないのか!国と共に生き延びるべきであろう。」
反対するものも多かったが他に策も無く、流れる間々にイルフォードとアメジストの協定の場が設けられた。
そして二ツの国の協定が結ばれて15年もの月日が流れ―――――。