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第271話 とある演習の前哨戦:副



 俺が引き分けについて考えていると、訓練所のフィールドが切り替わる。


 戦場は石畳の……市街戦だな。


 うん、この二人には全く関係ないけど、このフィールドは特徴のない戦場……ってのはゲーム時代の話。


 ゲーム時代は普通に道の上で戦っていたけど、背景には街並みが広がっていたからね……当然背景も再現されており、建物の中にも入ることができる。


 弓兵の子たちは結構このフィールドを好むんだよね……。


 でも近接物理系の二人にとっては、やっぱりあまり関係ないかな?


 これが室内だったら武器が振りにくいとかの制限が……うちの子たちなら壁や天井ごと貫いて武器を振りそうだけど……あったりなかったりする。


 っていうか、そもそも基本的な戦闘技術が高いから、室内を荒らさずに戦闘するなんて朝飯前って感じなんだよね。


 因みにこの覇王、室内戦闘はかなり苦手だ。


 皆みたいに繊細な動きなんてできないし、そもそも技術も大したことはない。


 まぁ、こっちに来たばかりの頃に比べれば格段に強くなっていると思う。


 ジョウセンを始め、皆に色々と稽古をつけて貰っているしね。


 それでも達人には程遠く……まぁ、どちらかといえば達人よりゴリラだろう。


「始め!」


 相変わらずフィールド変更直後にリーンフェリアが開始の合図を出す。


 しかし、ジョウセンたちの試合と違い、いきなり二人が武器を打ちつけ合ったりはしていない。


 まぁそれも当然の話だ。


 対戦する二人の開始位置が、弓でも届かないくらい離れた位置で始まったみたいだからね。


 さすがの覇王アイでも二人が何処にいるかわからない……というか建物に阻まれて透視能力でもない限り誰も見えないだろう。


 しかし、なんとなく二人のいる位置はわかる……これが気を感じるということ……ではない。


 うちの子たちはそういった、俺にはわからない何かを感じ取ることができるみたいだけど……俺の場合は、闘技場のプラクティスモードのお陰で二人の位置や状態を把握することができるからだ。


 肉眼で見る方が色々わかりやすいんだけど、さすがにここまで距離が離れると肉眼では無理だからね。


 ……そもそもお城の中にある闘技場で、数キロくらいはあるフィールドを再現できるのもどうかと思うけど、そんなことを気にしていてはこのエインヘリアでは生きていけない。


 観客席も広がっているけど気にすることでもない。


 何故なら、ここはエインヘリアだからだ。


 さて、それはさて置き……アランドールとリオ。お互い身を隠して不意打ちを狙うタイプじゃないし、二人ともリーンフェリアのいる場所を目指して爆速移動中だね。


 このフィールドはとんでもない広さではあるけど、二人の距離は物凄い勢いで縮まっているし、もうまもなく……あ、見えてきたな。


 アランドールは馬鹿でかい大剣タイプの練習武器を片手に持って疾走中。


 リオは自身の背丈ほどの槍タイプの練習武器を片手に疾走中。


 その勢いのまま……丁度リーンフェリアの前で激突!


 ピクリとも表情を変化させないリーンフェリアが一番凄い気がする……いや、勿論ダンプカーの正面衝突もかくやって迫力で激突した二人も当然物凄いんだけどね。


 大剣と槍の激突……鉄塊とも言えるような重量感のある大剣を叩きつける老人とあっさりとそれを槍で受け止め、逆に押し返そうとする女性。


 響き渡る人が生み出したとは思えない程の激突音……だけに留まらず、続けて大剣と槍による怒涛の剣戟。


 ジョウセンとレンゲの打ち合いも凄かったけど、アランドールとリオの打ち合いもまた凄まじい。


 アランドールの武器もレンゲのように大型の武器だけど、レンゲのような豪快な連撃ではなく、寧ろ流麗と表現するのがふさわしい動きをしている。


 対するリオは、緩急を織り交ぜた鋭い槍捌きでアランドールの攻撃を打ち払いながら要所要所で反撃を繰り出す。


 建物の壁を蹴ったり飛んだり跳ねたりといった動きは二人とも一切せず、地に足を付けて体捌きをメインにした攻防を繰り広げている。


 リオが足元への一撃から顔面を狙った一撃へと繋ぎ、アランドールは最小限の動きでその連携を躱して切り返す。


 凄まじい速さで攻防が目まぐるしく入れ替わるが、お互いに決定的なチャンスも隙も生まれない。


 お互いに真面目というか、リスクを避け堅実な攻撃と防御は言葉にすれば派手さがないように感じられるだろうが、実際目の当たりにすればこの戦いを地味だなんて言える奴はいないだろう。


 戦闘によって周囲に被害を齎すこともなく、目まぐるしく立ち位置が変わることもなく、雷や炎が吹き荒れることもない。


 しかし響き渡る剣戟の音や、そもそもこれだけ距離がある場所から見ているにも拘らず目で追うことが非常に困難な高速の攻防は、うちの子たちの戦闘を見慣れていない者であればぽかんと口を開けたまま固まってしまってもおかしくないだろう。


 レンゲたちとは違った凄味と、ディオーネたちとはまた違った緊張感を伴った戦い……このままいくとレンゲたちと同じように引き分けで終わるか?


 繰り返される連撃の中、一度として同じ動きをしていない二人の剣戟は永遠に続きそうで……少なくとも俺の目にはどちらが優勢なのかはわからない。


 このまま制限時間が来る可能性は決して低くないと思うのだけど……その場合、一勝一敗二分……大将戦に勝った方が勝利ってことになる。


 でもなぁ、最終戦ってシュヴァルツとサリアの試合なんだよな。


 ディオーネとパオラの試合は大番狂わせというか、俺の予想を覆してディオーネの勝利だったけど、シュヴァルツもサリア相手にいけるだろうか?


 シュヴァルツの勝ち筋……フィールドは身を隠す場所がある様なフィールドで、高低差があるとなお良し。


 そしてこれが一番大事だけど、お互いの開始位置が超長距離だったら……いけるだろうか?


 シュヴァルツもかなりのガチ構成だからなぁ……珍しいアビリティは『邪眼』くらいだろうか?


 あれは相手を麻痺させる効果があるし、ディオーネの『魔眼』みたいにワンチャンいけるかもしれない。


 うん、今からサリアの勝ちだと決めつけるべきじゃないな。


 そんな風に試合を見ながら次戦のことを考えていると、リオの喉元を狙った一撃をアランドールが一歩下がりながら跳ね上げるように受け……その体勢のまま肩からリオにぶつかっていく。


 意表を突かれた様にリオが目を見開き、ほんの少しではあるが体勢を崩した。


 その一瞬の隙をアランドールは見逃さず、その場で横に一回転……手にしている大剣を横薙ぎにしてリオの首を飛ばす……手前で剣が止まる。


「そこまで!」


 ほんの一瞬の隙をつき、アランドールが勝利を収めた。


 これでアランドールチームの二勝一敗一分……シュヴァルツが勝てばアランドールチームの勝利だけど、サリアが勝てば引き分けになる訳だね。



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