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第173話 あっちの大陸の話



 ……結局、フィリア達の件をフィオに相談しようと思っていたのに、なんかイチャコラ過ごしてしまった。


 てへっ!


 あ、今なんか俺、世界の憎悪を一身に集めた気がする。


 くくっ……心地の良い憎悪よ。


 ……うん、アホなことを言ってないで現実を見ないと。


 フィリア達の件は……うん、未来の覇王に任せよう。


 きっと、なんやかんや上手い感じに……多分やれるはず。


 勿論、キリク達に相談しておく必要はあるが。


 よし、めっちゃ現実見た。


 とりあえず、その件はそれとして……目の前のことに集中しないとな。


 今日はいつもの会議……主に向こうの大陸に関する内容だからね。


 気合を入れた俺がキリクに視線を向けると、小さく頷いたキリクが会議の開始を宣言する。


「まずはランティクス帝国から。クーガー報告を」


「うっス。ランティクス帝国とのやり取りは問題ないっス。フェルズ様がガツンとやってくれたおかげっスね。上層部はエインヘリア寄り、ただ下の連中というか……地方の連中は納得していないみたいっス。今のところ皇帝がエインヘリアとの友好を望み、異を唱えるなら自分の敵だと宣言したから抑えられているってとこっスね」


「国外の戦争で、フェルズ様のお姿を目にしたのは上層部の数人だけ。そのご威光をひと目でも感じられたのであれば愚かな考えなぞ持つはずもないのですが……」


 クーガーの報告を聞いて、キリクが愚かなことだとでも言いたげにため息をつく。


 ……さすがにひと目で心折ったりは出来ませんよ?


 心を折るのは物理より難しいしね?


「そうですね~ですが~帝国は反発されることを承知で動いているでしょう~?」


「えぇ、フェルズ様の目論見通りです」


 ニコニコとしながら言うイルミットにキリクが感慨深げに頷く。


 久々に来たよ、この感覚!


 フェルズ様、今回はどんな目論見が成功しちゃったのさ!


「そう遠くない内……時期としては今年の冬の終わり頃に帝国内の反エインヘリア派は事を起こし、皇帝によって粛清されるでしょう」


 へぇ……冬の終わりかぁ。


 半年もないくらい先だけど、まだ接触したばっかりなのにキリクさんもうそんな先まで相手のこと見えちゃってるんですね?


 因みに明日どころか三分後のことも見えない覇王は、つい先程かなりの難題を未来の覇王に丸投げしたところですよ。


「ランティクス帝国は二大大国といってもスラージアン帝国に比べれば小さいっス。その分皇帝の地方への影響力も大きいっスね。それに監視の目も十分行き届いているっス。東側の連中もお気の毒って感じっスよ」


 つまり……皇帝に逆らう地方の貴族がいて、皇帝たちはエインヘリアを使ってそいつらを排除しようとしているって感じか。


 ……それってランティクス帝と上層部の目論見であって、俺関係なくない?


 なんで俺の手柄っぽくキリクは語ったの?


 それにしても、ランティクス帝国は中央集権化を進めるってことだね。


 次の時代区分は絶対王政……時代区分だけでいえばうちと一緒だ。


「ランティクス帝国の東側には以前のオロ神教の影響がまだ残ってるっス。そちらはどうするっスか?」


「当然、それらの処理はこちらでする」


「いいんスか?」


「その為にクーガー、お前を派遣した」


「なるほどっス。帝国には表向きバレないように……神教の連中には徹底的にっスね?」


 爽やかな笑みを浮かべながらめっちゃ恐ろしいことをいうクーガーに、キリクは眼鏡をクイっとしながら頷く。


「あ、それとランティクス帝国の皇帝がフェルズ様に会いたいって言ってたっス」


「暫くは向こうの大陸にはいかないと伝えておいたのだがな。まぁ、気が向いたら会ってやるか」


「了解っス。伝えておくっス」


 ……そのまま伝えないでね?


 マイルドな感じにして伝えてね?


 あのおっさんなら笑って受け入れそうだけど、他の人の目もあるからね?


「次はヒエーレッソ王国方面を、シャイナ」


「はい」


 どうやらランティクス帝国関係はこれで終わりらしい。


 お仕事モードのシャイナがキリっとした感じで立ち上がる。


 普段は俺のことをお兄ちゃんと呼びながら元気いっぱいな感じのシャイナだけど、今日は凛々しいな。


 まぁ、見た目に反してシャイナがしっかり普通の外交官が出来ることは知っているけどね。


「ヒエーレッソ王国は現在、王派閥が神聖国派より主導権を取り戻すべく動いています。こちらはオロ神聖国が潰れているので、王派閥が完全に主導権を取るまでそう時間はかからないでしょう」


「教会勢力はまだ残っている筈ですが?」


「そちらもヒルマテル公爵が積極的に動いて排除しているようです」


「ふむ、ヒルマテル公爵か……」


 キリクが顎に拳を当てるようにしながら考え込む様子を見せる。


 うん……これはヒルマテル公爵、キリクに目を着けられたね。


 ヒエーレッソ王国は独立独歩で頑張ってもらいたい……うちに取り込まれるようなことになったら、多分地獄見るよ?


「それと魔力収集装置ですが、王都近郊の村に設置の許可が出ました」


「ふむ、やはり王都は避けましたか。まぁ、それはそれで構わないでしょう」


「そうですね~どうせ~順番の違いだけですし~。今は~たっぷり恩を売っておきましょう~」


 キリクやイルミットの中で、ヒエーレッソ王国全土に魔力収集装置を設置することは決定事項みたいだな。


 いや、ヒエーレッソ王国だけじゃなくて向こうの大陸全土かもしれん。


「設置が終了次第、食料の輸送も始めます。輸送に飛行船は使えないので保存のきくものが中心になりますが……」


「輸送拠点近郊に配れるように日持ちのあまりしない物も混ぜる予定です。食料が行き渡り、民に余裕が出れば……当然、美味しい食料を欲することでしょう。特に輸送拠点近郊の者達だけそういうものを食べられているとあってはね」


 分断工作ってほどじゃないみたいだけど、うちの力をもっと借りるように民から突き上げさせるってことか。


 ヒエーレッソ王国とは仲良くやっていきたいんだけど……。


「ふふふ~。全土への魔力収集装置の設置は~冬の間に言ってくる筈です~」


「冬かぁ。レグリア地方と神聖国領への設置がね……」


 機嫌の良さそうなイルミットの言葉に、渋い顔をしたオトノハが反応する。


「そちらはヘパイが立てた計画通りに進めて貰って構いません。ヘパイにはある程度人員を残してもらっているので、オトノハは残りの人員で設置計画をお願いします」


「んあ~、かなりカツカツだねぇ。こっちの大陸より向こうを優先かい?」


「えぇ、それで構いません」


 こっちの大陸はもうかなり設置が進んでいるからね。


 主要な場所には設置が終わっていて、今は穴埋めを進めて行ってる感じ……そう遠からず全ての集落に設置が完了するはずだ。


 まだ全然設置が進んでいない向こうの大陸を優先するのは当然だろう。


「最後に、サリアを総大将にした援軍が西の戦線に入りました」


「これで、冬の間に何が起こっても大丈夫ですね。サリアには最激戦区以外の巡回も頼んでおりますが、よろしかったでしょうか?」


 キリクの確認に俺は頷いて見せる。


「あぁ、構わない。今は最激戦区よりも他の場所の方が魔物の被害が多いかもしれないしな。神聖国軍が抜けた穴は完璧に塞いでおきたい」


「畏まりました。サリアにはその旨伝えておきます」


 俺の言葉にシャイナがしっかりと頷き、ヒエーレッソ王国関係の報告が終わった。


「次はレグリア地方、それから神聖国領について……」



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