第155話 書類仕事
バンガゴンガから、レヴィアナ達の視察の三日目は詰め込み過ぎて刺激が強すぎるとの進言を受けた為、急遽予定を変更して一日一か所視察をする事になった。
しかし、ここで一つ問題が。
我はこれでも覇王。
予定はしっかり組まれており、暇なようでそれなりに忙しかったりするのである。
故に急遽伸びてしまった視察の全てに付き合う事は出来なかった。
視察三日目は一日空けていたから参加できると思っていたんだけど、これまたバンガゴンガの提案でスティンプラーフ地方にある魔石採掘場の視察となってしまった。
この大陸でも有数の良質な魔石の産出地であるスティンプラーフ地方は、ただ鉱山や採掘場が賑わっているだけの土地ではない。
魔石を求める商人は勿論、地質等を研究する学者や良質な魔石を可能な限り安く手に入れようと移住してくる魔道具技師。
更には、元々蛮族達が支配する地で大規模な集落というものが殆ど無かったスティンプラーフ地方だが、人がやってくれば多くの施設が必要となるということで各地で建設ラッシュが起こっており、その手の商会や業者が我先にと集まる。
人手不足なのでガンガン人を雇い入れて……人とお金が増えれば、当然それを消費する場所も増えていき……恐らくエインヘリアで一番急速に発展している地方といえるだろう。
元々は荒地が多く、乾いた土地で慢性的に水不足だったスティンプラーフ地方だったが、そこは我がエインヘリアの力でどうとでもなる。
水源が無ければ水源を作れば良い。
生簀や鉱山等のような集落に建設する施設の一つ、噴水広場の力であっという間に水不足は解消されたスティンプラーフ地方。
水もあって金もあって産業もあって人もいる……発展しない訳がない。
蛮族と呼ばれていた者達も必死に勉強して、皆それぞれの道を歩んでいるそうだし……頭よりも腕っぷしって連中も治安維持部隊に就職して各地で頑張っている。
因みに、スティンプラーフの元英雄ラフジャスは国営農場で日々汗を流している。
国営農場での仕事とは別に、自前の……エインヘリアの種を使わない普通の畑も持っているのだから、ラフジャスの農業……野菜好きは筋金入りだと思う。
収穫物は俺も貰った事があるが、中々立派なものだった。
今後は品種改良に着手したいと語っていたけど、中々大変な事業になりそうだよね……人を雇う事も考えているそうだけど……農業に特化した英雄も、素敵な生き方だと思うので俺は応援している。
……何の話だったっけ?あぁ、レヴィアナたちの視察だ。
三日目の視察が極々一般的な鉱山や学術都市……っぽくなってきたスティンプラーフ地方の視察となったわけで、こう……ゲーム系施設に連れて行き、俺が見たかったレイフォンの姿を見るのは難しくなってしまった。
いや、噴水広場はあるけど……そっちはメインじゃない……っていうかスティンプラーフ地方以外にも設置してあるし、多分今更……。
とはいえ……レイフォンのリアクションが見たいというだけでレヴィアナ達を巻き込むのもな……それに視察は驚かすことが目的じゃなくて勉強させることが目的だからな。
レイフォンが他国の人間ならともかく、自国の部下だし……バンガゴンガの意見を聞いておくのが得策だろう。
というわけで、スティンプラーフ地方の視察となったわけだけど、俺はあんまりあの地に詳しくないし、この大陸の採掘事情とかもさっぱりだ。
勿論着いていって俺も見る側として参加するのもありだけど、そうしている間にも書類は増えるし、やる事は他にもある。
というわけで、残念ながら視察はバンガゴンガやプレアに任せ、俺は覇王としての仕事に邁進した。
まぁ、それ自体は問題ない。
キリク達から上がってきた書類を読んで……向こうの大陸関係の書類が多かったけど、基本的に全部許可を出して……後は報告書関係だね。
レグリア地方の魔力収集装置はヘパイがメインで動いているようで、ウルルの情報を基に設置計画を立てているようだ。
それと、神聖国領に建設する治療院か。
そっちはコリンが担当と……二人とも開発オンリーの能力だから護衛をしっかりとつけないとな。
勿論、二人とも一般人や準英雄くらいなら何とかなると思うけど、何があるか分からないし……油断してうちの子達が危ない目に遭うとか許せないからね。
そんな感じで色々と書類を処理して……気付いたら昼になっていた。
昼食は、俺もフィオも仕事が一段落した時点で取るからあまり一緒に食べる事はない。
まぁ、俺の方は大体同じ時間に取れるんだけど、フィオの方は実験やら研究やら開発やらが盛り上がると昼食を取らない事も多いからな。
……朝と夜は必ず取らせるようにしているから、健康的には大丈夫だとは思う。
フィオだけだったら不摂生な生活をやりそうだけど、開発部にはうちの子達がいるし、フィオにはメイドの子もついてるからね。
一日二食取るように、こっちの世界に来てすぐうちの子達に厳命しておいて本当に良かった。
フィオが熱中していても誰かが絶対に食堂に連れて行くからね。
俺がこっちにいない間も、フィオの体調管理はしっかり皆がしてくれたことだろう。
……多分五千年前もそんな感じだったんだろうな。
不摂生な生活をするフィオをお世話係の人達がやや強引に食事をとらせたりする……うん、目に浮かぶようだね。
まぁなんにしても、フィオの事は任せておけばいい。
そんな事を考えながら、リーンフェリアと共に食堂のドアを潜ると。
「フェルズ様、お待ちしていましたわ」
満面の笑みを浮かべながら、微妙に迫力のある空気を醸し出しているエファリアがそこにはいた。




