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第149話 玉座に鎮座する我覇王



 昨夜は凄かった。


 それはもう凄かった……お陰で現在覇王は全力で寝不足だ。


 八か月ぶりにエインヘリアの城に帰る事が出来た俺は、魔力収集装置の置かれた大広間……そこで皆の前でただいまの挨拶をした。


 お祭り騒ぎといった感じではなく、どちらかといえば粛々とした雰囲気だったけど、本当に久しぶりに皆の顔を見ることが出来て、個人的には良い時間を過ごすことが出来たと思う。


 式典的なものをやりそうだと身構えていたけど、皆に向かって挨拶と感謝を伝えるくらいでさくっと終わったし、本当に良かった。


 まぁ、色々と大変なことになった皆が正気を取り戻すまでに少し時間を有したけど、それは些細な問題だろう。


 その後は、とりあえず風呂に直行……ボディソープやシャンプーを使い全身漏れなくピッカピカに磨き上げ、半年以上ぶりにまともな入浴をして命の洗濯をした。


 別にこの後に何かとかそういうアレでは無く、とにかくさっぱりしたのだ。


 入浴後はラフな格好に着替え、フィオと合流……湯上りのフィオの姿にマイリトル覇王が玉座から立ち上がろうとするのを意思の力で抑え込みつつ、食堂へと向かう。


 普通の王族とか貴族とかだったら晩餐会?的ななんか堅苦しそうなパーティとかやりそうなもんだけど、俺達は普通にみんなが使う食堂でご飯……まぁ、上司と同席すると下の人達はあまり居心地が良くないもんだけど……うちの子達は寧ろ俺が一緒に食事をとる方が喜ぶまである。


 慕われている感じで悪い気はしないけど……気を使わせているんじゃないかと疑心暗鬼に陥る我小心覇王。


 それはさて置き、晩御飯も特に肩ひじ張ったメニューではなく、俺の好きなものをがっつり頼んだ。


 豚汁、から揚げ、餃子……ご飯は、チャーハンにするか白米にするか……そんなことで悩みつつ、久しぶりのエインヘリアご飯を堪能することができた。


 風呂といい食事といい……最高だったと表現する以外、覇王の語彙力では無理でしたね。


 そんな最高の体験をした後、俺とフィオは俺の自室へと向かった。


 まぁね?


 俺達新婚なわけで……それなのに八か月も強制単身赴任とかさせられて……こう……ね!


 い、いや、勿論、そんなアレだけが目的じゃないですよ?


 俺の部屋にはね、ルミナがいるからね。


 色々やる事があったからゆっくりルミナの相手が出来ないと思って部屋には近寄らなかったけど、もう部屋から出るような用事はないので問題ない……という判断である。


 久しぶりにルミナと会う訳だけど……俺のこと忘れたりしていないか若干心配はした。


 犬は一年やそこらで飼い主の事を忘れたりはしないけど……いや、ルミナは犬じゃなくって狼か。


 何処からどう見ても子犬だけど……。


 そんな事を考えながら部屋の扉を開くと……小さな黒い塊が俺に向かって飛び掛かってきた!


 それをある程度予想していた俺は、当然のごとく黒い塊をキャッチ……俺のお腹あたりに飛び込んで来たルミナを抱き上げて顔を覗き込む。


「ただいま、るみうぶっ!?」


 挨拶を最後までさせて貰えず、大興奮中のルミナが抱き上げられた状態から更に俺の顔に突撃。


 俺の顔を抱きかかえるように前足を伸ばし、俺の顔中を舐めまくり……迂闊にしゃべろうものならルミナの舌が口の中まで潜り込んで来る状態だ。


 抱き上げられたまま、俺の腕の上に立ち上がり、俺の顔を攻めるルミナ。


 尻尾は残像が見えるくらいにぶん回され、俺が抱き上げなくても尻尾で宙に浮けるんじゃないかと思えてしまうレベルだ。


 ルミナの大歓迎に部屋の入り口で動けなくなってしまった俺の背中をフィオが押し、どうにかソファーまで移動するも、ルミナの大興奮は収まらない。


 引きはがす様にルミナをソファーに下ろすも、コンマ一秒後には俺の膝に飛び乗りそこから俺の胸……頭へとよじ登って来てひたすら舐めて、匂いを嗅いで、体をこすりつけて……興奮し過ぎて倒れるんじゃないかというくらいの歓迎っぷりを見せるルミナ。


 その興奮に阻まれて、俺はフィオに触れる事すら能わない。


 俺がルミナから手を離そうとすると、即座に前足を伸ばし俺の手を手繰り寄せるように自分の背中やお腹に置こうとする。


 俺が立ち上がろうとしても、頑なに膝の上から降りようとしない。


 暫く好きにさせていると次第に落ち着き……膝の上で眠そうにうとうとしているなぁ、と思って見ているとハッと覚醒してとりあえず俺によじ登ろうとする。


 フィオはその様子を仕方ないなぁといった様子で苦笑しなが見ていたが、ルミナがうとうとしだす様になってからは横に座り、俺の肩に体預けるようにくっついていたのだけど……俺の方からは一切フィオに手を出すことが出来ず、体の右半分にフィオの暖かさや柔らかさを感じるだけに終わった。


 だが、夜も更けてそろそろ寝ようかといった時間帯になってからは違う。


 覇王の夜はこれから……覇王オンザベッドの時間である。


 普段……俺とフィオは同じベッドで寝ているが、当然ルミナも同じベッドで寝ています。


 ですが、こう、アレな感じをアレする時は……やはりルミナが一緒のベッドにいると気まずい訳ですよ。


 ルミナの「なんしょっと?」ってな感じの無垢な瞳に見られていては、さしものマイリトル覇王も玉座から中腰くらいまでしかあげられず、威風堂々たる仁王立ちなんて無理ってなもんなわけで……真に恐縮ではありますが、一つ、隣の部屋のケージの中に居て頂きたく存じます。


 ……とまぁ、普段であればそういう感じにルミナに我慢してもらう流れなんだけど……昨夜はそうはいかなかった。


 ルミナがね、俺から離れようとしなかったんですよ。


 いや、八か月もほっといたわけだから、寂しがるのも、その反動でべったりくっつくのも分かるんですよ。


 でもこう……覇王にもヤりたいことがあるといいますか……。


 しかしまぁ……しょうがないよね。


 フィオは……くすくす笑っていたし、致し方なし。


 俺はフィオとルミナと共にベッドに入り……一晩中ルミナと戯れた。


 ルミナは疲れて寝そうになるんだけど、俺が少しでも動くと飛び起きて手や顔を舐め始める……朝までその繰り返しでしたよ。


 ルミナがようやく眠りについたのは、空が明るみ始めてから……。


 とりあえずアレだ。


 寝ているルミナとフィオをベッドに残し。俺は大浴場に向かう事にした。


 手も顔も首も髪も……ルミナにねろんねろんにされたからね。


 朝風呂に入ってさっぱりしようと思った次第である。


 いや、寝不足だけど……今日も忙しいだろうな。


 じわじわと登ってきた太陽が、やけに黄色く感じられた。



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― 新着の感想 ―
お風呂入っても匂い凄いことになってそう……嬉しションまでは流石にしなかったかーw
ルミナ本当に何なんだ?と思ってましたが、可愛いのでどうでも良くなりました
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