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第24話 情報整理 Side 覇王

 


「それでは、会議を始めます。今回の議題はルモリア王国との開戦についてです」


 キリクの開会の言葉と共に会議が始まる。


「先日、フェルズ様自ら統治下に入れた村……その付近はルモリア王国という勢力の支配下にありました。あぁ、当然と言いますか、我等の城のあるこの付近一帯の草原も彼の国の勢力圏にありますが、いわくつきの土地ということで入植は進んでいないようです」


 え?いわくつきってなんぞ?ちょっと怖いんだけど?


 俺は内心もやもやとしたものを抱くが、そのいわくとやらをキリクは説明してくれない。ま、まぁ……今度聞いてみよう……かな?知らない方が幸せ……?いや、でもなんかいわくがあることはしっちゃったから知らないと逆に怖い……。


「一先ず、フェルズ様に不敬を働くという大罪を働いた、コッポルなる汚物から得た情報を共有します」


 そう言ってキリクはキャスター付きの黒板の横に立つ。黒板には既にこの辺りの地図が描かれているが……かなり略式で城の位置、村の位置、そしてバンガゴンガ達の集落のあった森しか描かれていない。


 っていうか、捕まえたヤツってコッポルだったっけ?オッポレじゃなかったっけ?


「城から東におよそ三十キロの地点、ここが件の村の位置になります。この村から北東に約十二キロ行くと街があり、敵軍はこの街を経由して進軍してくる筈です。また、この付近の地形はほぼ平地となっており、村の南側に広がる森以外特徴を上げる程の地形はありません」


 レギオンズでは戦う場所によっていくつも戦争用のマップが用意されていたけど……平地戦は兵の損耗が激しくてあまり好きじゃなかったな。他の地形だと地形効果を利用したり、奇襲による側面攻撃とか背後からの攻撃とか、作戦や行軍次第で色々な攻め方が出来たんだけどね。


「ゴブリンを殲滅するために派遣されて来た兵は二百。斥候が十、騎兵が二十、魔法兵が五、残りが歩兵と輜重隊。この騎兵というのは、私達が戦ったことがない兵種ですね」


 騎兵か……正直格好いいとは思うけど、あまり強そうには思えないんだよな。


 確かに西洋甲冑で騎乗突撃みたいなのは凄そうだけど、馬の足を止めてしまえばただの的だし、側面からの攻撃に弱そう。騎馬弓兵は強そうだなって思うけど、この前の騎士達は剣を持ってたからな。馬に乗った状態で剣って……めっちゃ戦いにくそうだけど、彼らがどんな風に戦うのか見てみたい気はする。


 まぁ……馬が全速力で正面から走ってきたら超怖いと思うけどさ。そう考えると、今回の戦場となる平原で騎兵は中々厄介か?


「注目すべきは一つの部隊に兵種が四つ以上いる事ですね。これはフェルズ様が常々言われている、今までの常識を捨てろという事にも当てはまります。私達の兵の運用の仕方では一部隊には多くても三つの兵科しか組み込めませんでしたからね」


 レギオンズの一部隊は最大三人の将を組み込む形だったからね。その将が召喚する兵は自分の分身の様な物で、兵科は当然将と同じものになる。


「未知の兵科に部隊編成。これまでと同じ戦い方では痛い目を見る可能性は十分あります。アランドール、戦術の研究が必要になるでしょう。ウルルと協力して未知の兵科や戦術に関する情報を集めて下さい」


「承知した」


 うむ、素晴らしい提案だキリク。この世界に来てまだ十日程度だというのに成長が見える。自分達の情報にない未知に対する姿勢……最初の会議の頃はまだ理解していなかったように見えたが……流石参謀、順応が早い。


「知っての通り、ゴブリン討伐に来た部隊はリーンフェリアの勧告により速やかに引いて行きましたが、すぐに正規軍を送り込んでくる筈です。私達の常識で考えるなら、国内の隣接拠点からの派兵であれば今週中といった所ですね」


 レギオンズでは、自分の支配地域の拠点には拠点間ワープで移動が出来て、そのターンの内に拠点から出陣。攻め込んだ拠点との距離に応じて到達ターンが決まるというシステムだった。キリクの計算では、十二キロ離れた街からの派兵であれば一ターン未満で到着するという事だろう。


 しかし、ここはレギオンズではない。あの部隊が情報を持ち帰り、そこから軍を編成して出陣……ここから彼らの拠点までどのくらい距離があるか分からないけど、歩兵が一生懸命行軍したとして……流石に今週中にここには来られないだろう。


 ゲームと違ってボタン一つで出陣出来るわけじゃないしね。軍を動かすなら色々と準備が必要なはず。オッポ……いや、コッポルも軍を動かすのには金が凄いかかるってあの村の村長に怒ってたしな。


 その事を注意するべきかと思ったが、キリクの話はまだ終わっていないので一先ず黙っておくことにする。


「ですが、捕らえた者を尋問した結果。彼らは魔力収集装置やそれに付随する拠点間移動の知識が無い事が判明しています。これはつまり、自国内であっても兵の移動にかなりの時間を有するという事に他なりません」


 おぉ……キリク、君は本当に素晴らしい。伊達にインテリ系眼鏡をかけていないな!


「さらに驚くべきことに。ルモリア王国の兵は、全てが実在の人間という情報が入っています」


 キリクの言葉に、俺とウルルを除く会議参加者が目を丸くする。


「一兵卒に至るまで、全てが指揮官クラスの武人ということか?」


 アランドールが険しい顔をしながらキリクに尋ねる。レギオンズでは兵卒は全部召喚兵になるからね……実在の人間イコール指揮官というのが常識だろう。


「武人と呼べるかどうかは分かりませんが、兵の全てが調練を受けており、命令を忠実にこなすと……」


「最寄りの拠点を出立した時に敵軍の総数をしっかりと確認する必要があるのう。仮に千人がそれぞれ一万ずつ召喚兵を出して来おったら、とてもではないが防ぎきれぬ」


 そのアランドールの言葉を聞いて、俺はとんでもない勘違いをしていることに気付いた。


 俺はここがレギオンズの世界でないと考えているけど……だからと言って、レギオンズと同じことは出来ないと決めつけるのもまずいのではないか?


 現実である以上、ゲーム時代と考え方を変えるべきではあったけど……現実であったとしても、レギオンズのゲームシステム的な事を相手が出来ないとも限らない……そもそも、全く未知の戦い方だってあるかも知れない。


 こちらに召喚兵という手段があるのだから、相手だけ生身で吶喊してくると考えるのは大間違いだろう。


 まずい……これは相当マズイぞ!?


 レギオンズの召喚兵は拠点でしか呼び出すことは出来ず、一度呼び出すと一週間は召喚されたままとなる。


 仮にこの前の部隊の人間がそれぞれ百人の召喚兵を呼び出せていたとしたら、二百人ではなく二万人の軍だったことになる。ゴブリン相手に訓練も兼ねて召喚兵を使わなかったという可能性もゼロではない……?


 俺が内心冷や汗をだらだら流していると、冷静さを崩すことなくキリクがアランドールに言葉を返す。


「召喚兵という概念が、そもそも相手にはないようです。戦場に立つのは一兵卒に至るまですべてが生身の人間……動物や魔物を使役する者もいるようですが、基本的に人間だけだそうです」


 キリクのその言葉に……これ以上無いくらいの安堵のため息が……出ない様にぐっと堪えつつ、心の中でガッツポーズをしながら小躍りする。


 よ、良かった……一千万の敵兵に襲われるかと思ったよ……いや、一千万人の軍ってどんなだよ……どのくらいの広さがあれば布陣出来るんだよ……焦らせんなよ、アランドール。


 いや、俺が悪いな……今度からもっと注意しよう。


「ふむ、魔物の使役……それもまた未知の兵種じゃな」


 落ち着いた様子で既に別の話をしているアランドールをちらりと見る。


 その胆力、覇王よりもよっぽど覇王していると思う。分けて貰いたい。


「未知の兵種や戦術について色々と調べたかったところですが……捕虜にした者達は用兵や戦術には明るくなく、大した情報は得られていません。可能であれば此度の戦の折、指揮官クラスは率先して捕虜にするべきかもしれません」


 キリクの言葉に、アランドールが少し考えるようなそぶりを見せた後口を開く。


「……いや、キリクよ。この際、敵兵は兵卒であっても出来る限り捕虜とするべきではないかのう?」


「どういうことですか?アランドール」


「一兵卒に至るまで、全てが人なのじゃったら……捕虜としておくだけで魔石が取れるのではないかの?」


「っ!?……なるほど、確かに捕虜にはそういう使い方もありますね」


 むむ、アランドールも中々良い発想をするじゃないか。レギオンズの頃は敵も指揮官以外は全部召喚兵だったからそんなことは出来なかったけど、この世界ならそれも可能だ。


「ちょっとまって~。捕虜から魔石を取るのっていい案だと思うけど~その子達もご飯を食べるのでしょ~?流石に何百人のご飯ってなると~魔石の消費も大きくなるわよ~?」


 ……確かに!イルミット、お主も中々やるのぅ!


「牢屋の問題もあるね。流石に何百人も収監出来る程、牢屋の数がないよ」


 オトノハからさらに問題点が上がる。うむ……目の前の魔石に釣られて即座にアランドールに賛成しなくて良かった。


 でも、みんな色々考えてくれてて、余は大変満足じゃ。


「ふむ……問題点が山積みのようじゃな。すまぬ」


「いえ、私も色々見落としていました。ですが、コスト計算をして収監施設を作っておくのも悪くないかもしれませんね。イルミット百人当たりの収監コストを算出できますか?」


 イルミット達に指摘されたアランドールが謝るが、キリクは眼鏡のフレームを指でクイっと上げてイルミットに確認を取る。


「今捕虜にしている子達を基準にすれば出来るわよ~」


「では、纏めておいてください。一般兵と指揮官クラス、後は貴人用にパターンを用意して貰えますか?指揮官と貴人は一人当たりで出してください」


「了解~」


「それとオトノハ、収容施設の建設コストを……ひとまず千人を収容可能な施設で算出出来ますか?」


「少し時間をくれるかい?全く新しい施設だし、防御面や間諜対策も必要だろう?設計図の開発からだから……最低でも三週は掛かるよ」


「設計図の開発となるとフェルズ様の決裁が必要となるな……」


 おっと……ここで俺の判断が必要になるのか。


 まぁ、確かに開発部門に何かを作らせるときはプレイヤーが指示しないといけないからな。とは言え……少し考える時間が欲しい。何か時間稼ぎを……。


「ふむ。今城にある牢屋は何人程度収監出来るのだ?」


「百人です~」


 誰とは無しに尋ねるとイルミットが答えてくれる。城の施設だからイルミットの担当になるのか。


 とりあえず百人収監出来る牢が、多いのか少ないのかさっぱり分らんけど……少なくとも戦争で捕らえた捕虜を入れておくには足り無さそうだな。


「ならば、此度の戦に関しては指揮官クラスのみを捕虜とするのが良かろう。収容施設の設計図を開発するかの判断は、イルミットの算出するコスト次第だな。赤字になるようでは元も子もない」


「はっ!おっしゃる通りかと、性急に事を考えすぎました」


「いや、そんなことは無いぞキリク。アランドールよ、素晴らしい提案だった。そう言った今までにない、新しい発想こそ俺が求めていた物だ。これからも頼むぞ、期待している」


「はっ!有難きお言葉!」


「それに、イルミットにオトノハ。すぐに問題点に気付いた点も素晴らしいかった。よく考えてくれている」


「「はっ!」」


「最後にキリク。問題点が見つかった時の素早い対処と指示。流石は参謀を任せているだけの事はある。お前がその職にある限り、俺は安心して任せていられるな」


「あ、ありがとうございます!」


 アランドール達は少し嬉しそうに返事をしているだけだが、キリクはちょっと泣きそう……いや、完全に泣き顔になっているな。


 早く会議の続きをしましょうって言いにくいな……。


「捕虜の件はひとまず脇に置くとして、他に敵軍に関する情報はないのか?」


「は、はっ!最初に捕虜にした三名から得た情報は以上になります」


「他にも捕虜がいるのか?」


 キリクの言葉に引っかかった俺が問いかけると、キリクではなくウルルが答える。


「……撤退した部隊から……間者が放たれたから……捕まえた」


「ほう」


 あの騎士……老紳士って感じだったけど、油断ならない相手みたいだな。引いたと見せてしっかり監視要員を残していたか。いや、当たり前の事なんだろうな。


 まぁ、うちの子達にあっさり捕まったみたいだし問題はない。


 いや……間者全員が捕まったとは限らないか……潜伏している間者が、俺達の事を探っている可能性は否定出来ない。


 とは言え、存在しないことの証明は出来ないしな……非常に気持ち悪いが、うちの子達を信じるしかないか。


「でも……流石に……中々口を割らない……」


「間者であれば当然であろう」


 対拷問訓練を受けているか……うむ、絶対就きたくない職業だな。そう言えば、ウルル達外交官もそう言う訓練受けているのか……?レギオンズには尋問とかの描写は無かったが……。


 そんなことを考えながらウルルの事を見ていたら、俺と目が合ったウルルが表情をあまり変えずに体をくねくねと捩る。若干顔が赤いけど、照れてるのか……?


 そんな不思議なウルルの姿を見ていると、正気に戻ったキリクが再び会議の進行を始める。議題は変わり、ルモリアの軍とどう戦うか、編成はどうするかといった話になる。


 俺が魔石を出来る限り温存したいと考えているのは皆理解しており、その方向で話を進めてくれているので、俺は極力口を挟まずにその様子を眺めていた。



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