12人の怒れる閣僚たち
午後の会議が始まった。
オジサマ魔王はプロジェクターで一枚の写真を示す。
「これが勇者が引きこもる直前に撮られた写真です」
「えっ、すっぴん!!」
一番に驚いたのは厚労相だった。続いて他の閣僚も大きく動揺し言葉を詰まらせる。副相は“まあまあ”とジェスチャーをしながら彼の国では様々な問題があるからと周囲を落ち着かせた。
落ち着きを取り戻した閣僚からは、勇者を最恵待遇で国賓として我が国に迎えたらどうかという意見を出すも者も出たが、オジサマ魔王はその意見に頷きながらもより大事なことがあると閣僚たちに語った。
「実際に勇者を最恵待遇で国賓として迎えるかどうかは別として、彼の国の勇者の目的が何かを明らかにする必要があります。彼の国の政府側の思惑も含めてですが」
「彼の国の政府においては、恐らく“ご友人“と官僚の方々への配慮、省益、巧妙に隠された天下り先への利益誘導、世界の警察を自負する国への利益誘導が最優先であり、それほど深い意味はないと考えます」
外務相は淡々とそう言うと環境相にさらなる意見を促した。
「彼の国の再生可能エネルギーへの転換は政府側への利益誘導が優先です。政府側の思惑に反して再生可能エネルギーを成功させた官僚が左遷されていること、他のプロジェクトでの計画及び取り組みが甘く杜撰であることがそれを支持しています。特にプロジェクトでは管理職側が”R&D“を学んでいないのが明白であり、技術革新を起こす条件から明確に外れております」
法相も環境相の発言に頷き、法相の立場から意見を発した。
「彼の国の司法では、判事補から判事への昇進の問題に加え、政府の思惑に反した者が高裁並びに最高裁の主要なポストから明らかに排除されています。三権分立という意味を理解しておらず、全体の奉仕者として仕事を全うできていない組織であることの証明でもあります」