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ショートショート9月~

たまごが割りたい

作者: たかさば
掲載日:2020/09/13

「さてさて、本日のメニューはと…。」


夕方、私はキッチンで晩御飯の支度にとりかかっていた。なんだかんだで料理が嫌いではない私、如何に手際よく、如何にボリューム満点で、如何に洗い物を少なく作り上げるか、そのあたりに力を入れておりましてですね!野菜から切って肉は最後に切るとかさ、そういうとこね。


今日のメニューはチーズオムレツにマカロニサラダ、チキンとトマトのマスタード炒めにコーンスープ…。野菜を切りつつお湯を沸かし、マカロニをゆでつつチキンの下ごしらえをし、茹ったマカロニを冷ましつつコーンスープを作って、具材を炒め始めたところでドタバタと騒がしい足音が聞こえてきた。


「ねえねえ!!今すごく面白かった!!雨がさ、降ってんだけど、降ってなかったの!!!」

「あれ、お帰り。」


娘がずいぶん興奮した様子でキッチンにやってきた。ただいまぐらい言わんかい!!


「なんかちょうど雨の境目だったみたいでさ!!ちょっと先は雨がすごく降ってるのに、あたしの歩いてるところは雨が降ってなかったんだって!!」

「まあ、そういう事もあるんじゃない、珍しい…いいもん見れてよかったね。」


雨は上がって、今はきれいな夕焼けが出ている。あ、もしかして虹が出てるんじゃない?


「ちょ!!見て!!外!!」


キッチンの窓に、奇麗な虹がかかっているのが見える。思わず調理の手を止めてリビングの出窓まで行き、空を見上げた。いやあ、これはいい虹だ。くっきりはっきり、しかもオレンジ色の太陽光が幻想的な雰囲気を醸し出し…。私は夕焼けも虹も大好きなのさ。ああー、いいもん見れた、明日はいい日になるな、うん。


「外、すごい虹が出てる。」

「あれ、お帰り。」


息子がやや興奮した様子で、だがしかし言葉少なに、キッチンへやってきた。ただいまぐらい言わんかい!!…どうもこう、うちの子達は気になることがあるとそっちに意識が行っちゃってやるべきことや言うべきことをそっちのけにするがさつさがあるな。いったいだれに似たんだ…、うん、旦那だな!!!




「卵割りたい。」


息子がランドセルを置いてきて、手を洗っている。愛用のエプロンをつけて準備万端だ。卵料理が作りたくて仕方がないんだよね。


「いいよ、じゃあ、そこの卵全部割って混ぜといて。」


スープも作ったしチキンとトマトも作った、マカロニサラダも作って、あとはオムレツを作るだけ。チーズ入りだからさあ、食べる直前に作ろうと思ってたんだよね。よし、今日は息子に全部作らせて差し上げよう。ずいぶん料理の腕が上がっててさあ、半熟加減とかなかなかの出来で…。


「あ、殻がちょっと入っちゃった、混ざっちゃって見えない…。」

「いいよいいよ、カルシウムカルシウム!」


私はまもなく出来上がるであろうオムレツを予測して、食卓におかずを並べ始めた。


「ただいまー!なんかすごい雨だったね!!!」


旦那が帰ってきて、手も洗わずに食卓の鶏肉をつまんで口に入れる。相変わらずの行儀の悪さにあきれつつ、檄を飛ばす。


「ちょっと!!!手を洗え!!服を脱げ!!できれば風呂に入って来い!!!」

「ええー、もうご飯できてるじゃん、あとであとで。」


作業着を脱ぎ捨て手を洗って椅子に座った旦那はかっぱかっぱとマイどんぶりにご飯を盛っている。はいはい、どうせね、このあと腹いっぱいになって眠くなってソファで寝ることになり、真夜中に起きて風呂に入ることになるんだよ。


「ご飯できた?わーい、いただきまーす!!!」


娘までもがマイどんぶりにご飯を盛り始めたよ…。


「オムレツできた。」


息子の作ったチーズオムレツが食卓に運ばれてくる。見た目にも気を使う息子は、なんと自分のお小遣いで乾燥パセリを購入してですね!!!すげえな、きっちり見せるオムレツに仕上げてきている。この完成度、努力する姿勢、うん、私に似たんだな、さすが。


「うまうま!!飯が進むー!」

「オムレツにケチャップかけていい?!」

「うまくできた、おいしい。」


取り分け皿にチーズオムレツをひとすくい取ると…チーズがびよんと伸びた。半熟具合がすばらしい。


「うん、やわらかくてすごくおいしいよ!!」


息子の作ったチーズオムレツはとろりと口の中でほどけて、まったりとしたチーズが芳醇な香りをまき散らしながらのどの奥へと…


がりっ!!!


ない歯触りと蕩ける舌触りを堪能している私の口の中で、ずいぶん無粋な音がした。うぐぐ、これは…さっきの卵の殻かっ!!!相変わらず運がいいなあ、私。…そう思っておけば、何てこと無いのさ、ははは。


カルシウム摂取した私は、いつもより幾分おだやかに食事をすることができた。


…いつの間にかなくなっていた鶏肉にも、自分がズッキーニばかり食べている事実にも、ご飯をよそおうとしたら小鉢一杯分しか残ってなかった事実にも、デザートのゼリーが一口も食べられなかった事実にも怒りの声を上げることはなくてですね、…ねえ、泣いていいですかね?


まあ、泣かんけどな!!!腹八分目って言うでしょう、これでいいのです。そう思えば万事丸く収まるんです、はい。


私は洗い物をするために、食卓を離れキッチンに向かったのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 相変わらず賑やかな食卓ですね。 いつもあまり食べられてなさそうですが……。
[良い点] あるある。ガリッ! [気になる点] 虹……ジジイの残滓ですな? [一言] 学校行きながら家事は大変。お体にお気をつけて。家事要員の育成も視野に…
2020/09/13 20:11 退会済み
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