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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第8章 魔王誕生編
98/105

97・サーラ 覚醒

 わたし、告白します。

 わたし、魔族語わかりません。


 馬車が転倒した瞬間、わたしは以前洞窟のおじいさんの所で体験した、あの感覚に包まれました。

 転移です。


 転移した先でいきなり、悪魔のような容姿の巨大なものと対峙していました。すごく怖いです。

 直感で四天王だと感じましたが、その貫禄はすでに魔王と呼んでもいいような佇まいでした。


 真っ黒で大きいです。一つ目の鬼よりおっきく見えます。


 わたしが現れた瞬間こそ、驚いた様子でしたが。すぐに睨まれました。怖いです。

 その形相はまさに悪魔で、とても直視できません。睨まないでほしいです。


 そしてただでさえ怖いのに、わざわざ『威嚇(スキル)』まで発動したようです。

 止めてほしいです。本当に怖いのです。ぷるぷる震えてしまいます。漏らしそうです。


「من∥ أين Ⅲأتيت؟x هلДИ ⅱتريد 〇الموت؟∩」


 何か言っていますが、わたしに魔族語はわかりません。

 何が言いたいのでしょうか。

 でも顔は怒っているようです。とても怖いです。

 どうすればいいのでしょう。あやまったら許してくれるのでしょうか。


 わたしは平和を意味するという、ピースサインというのをやってみました。

 ぶいっ。

 するとなにやら悪魔さんは余計に怒りだしたようです。何故でしょう。納得がいきません。

 もう全然意思の疎通が出来ません。未知との遭遇です。歌でも歌えばいいのでしょうか。その歌で文化に目覚めればいいと思います。


 あっ悪魔さんの背中から何かが出てきました。……触手のようです……それも一本や二本じゃありません。

 百本はあろうかという触手が蠢いていました。


「や……やだ……」


 わたしは戦慄しました。あんなに気持ち悪いものを見たことがありません。黒くて、テカテカしていて、ぬめぬめしていそうです。そんなものが百本も!

 ゆっくりと近づいてきました。嫌です、汚らわしいです。


 わたしはあんな気持ちの悪いモノに、汚されてしまうのでしょうか。鞭のように打たれ、貫かれ、絡め取られる姿が想像できました。もう生きた心地がしません。


 目の前にまで近づいてきました。もうだめです、お婆様。先立つ不幸をお許しください!

 わたしは怖くて目も開けられずに、お婆様の杖をぶんぶんと振り回しました。


「やだ……やだ……やめて……わたしを……汚さないで……お願い……ゆるして……ごめんなさい……痛く……しないで……こわい……こわいです……こんなの……いや……いや……嫌あっ!!!」


 とても恐ろしい想像をしていたわたしですが、いつまでたっても触手が触れてきません。

 恐る恐る目を開けてみました。


「……」


 なんという事でしょう。

 目の前には触手もろとも、ぐちゃぐちゃになった悪魔さんが居ました。

 いえ、すでに居ませんでした。ぐちゃぐちゃですから。

 モザイクを掛けないと直視できないほどです。

 いったい誰が!?


 見ればわたしの杖の魔石が、これまでになく光輝いていました。


「これは……」


 わたしの体が、魔力を解放した後の余韻で温まっていました。

 それも大魔法を何発も連発した後のような、気怠さを伴って。


「わたしが……したの……かしら」


 そう思った直後です。わたしの体に異変が起きました。


「あっ……あっ……あああっ!」


 何かが入ってきます。わたしの中に。

 そして何かがわたしの中から出てきます。外に向かって。


「こ……これ……は」


 チカラが……溢れます……こぼれます……吹き出します。


「ああああああああああああああああああああっ!!!」


 その瞬間わたしは理解しました。

 これは、アレだと。

 チカラの、解放だと。


「だめ……これは……このチカラは……アラン様の…」


 アラン様が居ないこの状況でわたしだけが解放などと……。でも……だめ……止まらな――


 チカラの全開放。

 それは果てしない快感を伴って、やってきました。

 わたしは何度も痙攣して、だめよ、だめだめと思いながらも、受け入れてしまいました。

 そしていつしか気を失って、目が覚めた時には、すべてを理解していました。




 わたし、告白します。

 わたし、覚醒しました。




  

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