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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第8章 魔王誕生編
95/105

94・春が訪れる秋の森1

「そろそろ教えてくれないか? たのむよ……美少女魔法探偵マルゲリーテよ」


 危うくSランクを怒らせそうになった俺は、下手に出る。


「仕方ないですねっ。でもこれは、アランが自分で気付いた方がいいかも知れませんよ?」

「俺にはなんの事だか、さっぱりなのだが?」

「このにぶちんがっ! さっさとフォレスを呼ぶがいいわっ!」


 何故か結局、怒らせてしまった。


「呼ぶってどうやるんだよ。おーいフォレスーって呼んだら来るのか? フォレスに訊いたら分かる事なのか? まあ確かにこの森の精霊だから、そうなのかもしれんが」


 すると一陣の風が舞い上がり、目の前に緑色のドレスをはためかせたフォレスが現れた。


「あ、来たぢゃないですかっ」

「本当に来たか」

「お久しぶりでございます。アラン様。また逢えて……嬉しゅうございます」


 顔を赤らめたフォレスが、俺だけ(・・・)に挨拶してきた。


「そんなに日も経ってはいないけどな。……ところでフォレス、どうやら俺たちは、この森から抜けられないようなんだ。なんとかならないか?」

「なんと。そのような事が……私には分かりかねますが、いったいどうした事なのでしょう」


 どうやらフォレスに訊いても分からないようだ。――だがここに異議を唱える者が居た。


「異議あり! ちょーーっと待ったぁ! そこのお嬢さん。アナタっ。何か身に覚えはあーりませんか?」


 マルゲリーテはフォレスに向かって、偉そうに指を突きつけていた。


「ええっ? 私ですか? 私には何も……」

「おいマルゲリーテ、いったい何を疑って……」

「だーまらっしゃいっ! てやんでぇっ! フォレスとやら、世間の目はごまかせても、あたしのこの目は、ごまかす事なんて出来ねーぜっ! アナタ、自分じゃ分からないかもしれないけど、――顔が赤いぜっ!」


 マルゲリーテはフォレスの目の前に仁王立ちとなって、捲し立てた。


「そ、そんな」


 フォレスは自分の頬に両手を当て、チラリと俺を見た。


 そこへマルゲリーテは例のパフォーマンスを始める。


「ひとぉつ、人の世(ひとよ)の生き血を……」


 新作だった。


「ふたぁつ、不埒な悪行三……」

「ちょっと待ったマルゲリーテ。お前さっきからいったい、何を言っているんだ? フォレスが困ってるじゃないか」

「邪魔するんぢゃないわよっ! このにぶちんがっ!」


 パフォーマンスを邪魔されて、怒り心頭に発したマルゲリーテは、俺を殴ろうとフォレスをすり抜け――


 ――すり抜けた?


「あっ逃げた!」


 フォレスはいつの間にか消えていた。


「アラン! あんたのせいで犯人逃がしちゃったぢゃないのっ! どーしてくれんのよっ!」

「犯人って、フォレスがか? もしかして森から抜けられないのは、フォレスのせいだとでも言うのか?」

「あたりまえでしょっ! あんたバカぁ? よく考えなさいよっ。なんでフォレスがあんたにしか挨拶しなかったのかっ。あんたの前で顔を赤らめてたのかっ。……あんたしか目に入らなかったのよっ。あんたの事を好きになっちゃったのよっ!」

「えっと……つまり?」

「つまりも糞づまりもないわよっ! あの子はあんたが好きで離れたくなくて、森から出さないようにしてるのよっ」

「ええええ!?」


 魔力なしで生きてきて、かれこれ二十五年。

 俺にそんな甘い話が降って湧くとは、思いも寄らなかった。


「ど、ど、ど、どうすれば!?」

「ど、ど、ど、童貞ですかっアランは? 初心(うぶ)ちゃんですか? せっかく追い詰めてたのにっ。アランのせいですからねっ責任とりなさいよっ。あたしはもう知りませんからねっ。爆発しろ!」


 マルゲリーテはそっぽを向いてしまった。

 本当にどうすればいいのか分からない。チラリとフォウを見れば――


「わたくしもその手の事は疎いので、よく分かりません。ご自分でなんとかしてください」


 ――けんもほろろだった。


「分かったよ。俺が何とかすればいいんだろ。フォレスを説得してくればいいんだな」


 どうやら俺が原因らしい。

 女どもは手を貸してくれそうにないので、俺は一人でフォレスを探す事にした。




  

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