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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第7章 姿なき追跡者編~ジーク~
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89・その男、暗殺者につき

 大木に寄り掛かり、両足を伸ばして俯き、座り込んだ男は確かにジークだった。

 その身体が淡く光り、周りから何かを吸収しているようだ。フォレスが言っていた森の精気だろう。


「弱っている?」


 そう、弱っているように見えた。ジークは座り込んだまま俺たちの方を見ようともしない。


「どういう事だ」

「アランは下がっていてください」

「なの」

「今回はウチも遠慮しないよー」


 ルルがボフンと竜の姿になる。俺は当然のごとく後ろに下がる。フォレスも一緒だ。

 こちらの戦闘態勢が整っているというのに、ジークは立ち上がりもしなかった。


 ジークが少しだけ顔を上げて、その視線を俺に向けた。――目が合った。


「ふん。切り札の女が居ないというのに、……それでもまだそれだけの戦力など、……化け物どもめ」


 こいつ今、サーラの事を言ったのか? 

 俺はあの晩、サジリナの口から出た男の声を思い出した。――確かにこいつだ。


「おいジークとやら、サーラはどうした?」


 俺は我慢できずに訊いた。


「さあ……な。俺が訊きたいくらいだ」


 こいつ何を言ってやがる。こいつがさらったんじゃないのか?

 ジークは気だるげに、ゆっくりと立ち上がった。


「くそ、まだ半分か」

 

 小さく何かを呟いたが俺には聞こえなかった。だがそれを拾ったやつが居た。


「何かを企んでいます。気を付けて下さい」


 フォウが注意を促したその時、ジークが消えた。

 いつかの闘技場の再来だ。

 次の瞬間、俺の目の前にやつが現れた。

 フォウとニナが神速の如き動きを見せる。

 後ろに下がっていた俺の元へ駆けつけようと――

 だが二人の目の前に緑の壁が立ち塞がった。


「精霊の壁!」


 フォレスの叫びは俺とジークとの間に緑の壁を立ち上がらせる。――天使たち二人の前に出現した緑の壁と同じだった。

 ジークは構わず壁越しに、長めの杖(・・・・)を俺の居る方向に向けて発砲してきた。

 ドン! と衝撃音が聞こえた時には、フォレスの左腕が飛んでいた。


「フォレス!」


 フォレスは俺の近くに居た。俺を庇ったのか!?


 ニナとフォウが緑の壁を突き抜けて、ジークに迫る。

 ジークはまたしても姿を消して、さっきの大木に戻っていた。


「うっ」


 フォレスの左腕は、綺麗に無くなってしまっていた。


「くそっ」

「影よっ、あいつは影を操る。あたしにはお見通しよっ。なぜならあたしは……」


 マルゲリーテのやつ、こんな時でもポージングを決め始めやがった。


「あの男は森の精気を吸って、今やその力も己のものにしています。先程の壁は精霊のものです」


 フォレスが説明してくれた。だがそれよりも先にやる事がある。


「ニナ! 回復だ!」


 ニナが駆け寄ってすぐに回復魔法を掛けるが――


「無理です。私たち精霊には通常の回復魔法は効きません」

「なんだって? じゃあどうすればいい!?」


 その間にもジークが動く。

 ブフォッ!……その軌道に合わせてルルのブレスが一閃する。

 遠くの木々が次々と消滅してゆく。


 ジークは木の幹に向かって飛んだ。

 足を掛け空に跳ね上がる。

 そのまま長めの杖(・・・・)をルルに向けて――


 ドン! 大きな衝撃音に何か違和感を感じたが、それが何なのか分からなかった。


「フォレス! しっかりしろ!」

「アラン様……許されるのでしたら……もう一度……あなたと……」

「合体だな? そうすれば助かるんだな? してやる! いくらでもしてやるぞ!」

「アラン様……うれしい」


 俺はフォレスを抱きしめた。

 途端に俺の体に溶け込むフォレスは、俺に無いはずの魔力を吸い込み始める。


「いくらでも吸えばいい。俺は……大丈夫だ」


 快感に震えながら、自分に言い聞かせるように言った。


(ああっ、アラン様……気持ち……いいです)


 ルルは魔法で強化したはずの翼に穴を開けていた。

 違和感の正体が分かった。やつの杖が強化されていたのだ。

 以前見た時よりも杖がさらに長くなっていた。そのせいだろうか、威力も増しているようだ。

 だが、よく見れば連射は出来なくなっている。


(アラン様、よろしければこのまま、私のチカラをお使いください)


 フォレスは合体を解かないで俺にチカラを貸すと言う。

 魔法の使えない俺がそれを使いこなせるのか分からないが、貸してくれると言うのならやってみようじゃないか。


「助かる。正直いつ死んでもおかしくない状況だ。少しでもチカラは欲しい」


 ニナが跳び、フォウが魔法で援護する。ルルはブレスの狙いが定まらないようだ。

 マルゲリーテは……まだポージングの途中だ。――本気でアホなのかと思った。


「神にかわって~~~~!」


 ようやくポージングがラストまで来たらしいマルゲリーテは、ひらりとスカートをひらめかせ、今日は赤いボーダーの下着を見せつけると――


「おしおきよっ!!! 」


 ――自らを弾丸と化し、ニナとフォウの間を抜けてジークに突き刺さった。


「ぐはあ!」


 戦闘が始まって以来、初めてジークに当てた攻撃は、マルゲリーテの頭突きだった。

 ジークはそのまま吹き飛び、大木の幹を粉砕させてさらに後方の樹木を真っ二つにして止まった。

 

 疾風迅雷――ニナとフォウは追い打ちに駆ける。

 それよりも先にルルのブレスがジークに迫る。

 瞬間またしても影となったジークは、俺の前に再び現れた。

 その手には逆手に持った短剣。

 魔力で発光したそれが、俺の首元を狙って軌道を描く。


 俺は落ち着いていた。

 フォレスと合体している俺は、何をすればいいか分かっていた。


 俺は(フォレスは)――

 ゆっくりと両手を広げ――


 ――そして。




  

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