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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第7章 姿なき追跡者編~ジーク~
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88・あなたと……したい

「あなたと……合体したい」


 森の精霊ことフォレスは、頬を赤らめて懇願した。

 合体? 何故に俺? ここは魔力豊富なニナの出番なのでは?


「そ、それはどういう事だ?」

「私には見えるのです……あなたがとてつもないチカラの……持ち主だという事が」

「それは……」


 この精霊、マイナス値を読んだだと? しかもそれがチカラだと認識している?


「よく分からないが、俺なんかが力になれるのか? それでお前は救われると?」

「はい……むしろアラン様が……いいのです……それで私は、救われます」


 うむ。女性にあなたがいいなどと言われて、喜ばない男はいないだろう。

 俺が力になれるとは思っていないが、その気になって協力してやろう。合体というものにちょっと興味ある。ちょっとだけだ、ちょっとだけ。


「で、俺はどうすればいいんだ?」

「よろしいのですか?……うれしいです……ではそのままでいて下さい」


 フォレスは俺に近づいてきた。そしてその体を俺に重ねると――文字通り重なった。


「な、なんだ!?」


 俺の体とフォレスの体が重なって、二重になっている。

 やがてフォレスの体が俺に溶け込んで消えた。その瞬間に俺は何かが吸い上げられてゆく感覚に陥った。

 

 これは、魔力?

 俺に無いはずの魔力が吸われている感覚がする。

 そしてその感覚は……とても……快感だった。


(気持ち……いい)


 俺の中でフォレスの声が聞こえた。どうやらこの感覚は共有しているようだ。

 俺たちはしばらくその快感に身を震わせていると、フォレスは満たされたのだろうか、俺の体から分離して元の姿に戻った。

 その姿は今は透き通っていない。しっかりとした存在感を持っていた。


「ありがとう……ございます。私、助かりました」

「これが、合体? 何かが吸われた気がしたが」

「はい……アラン様の精気を……少々……美味しゅうございました」


 俺は気付いていなかったが、この時の俺の魔力値は、加算されていたのだ。

 マイナス方向に。


 だが気づいたやつも居た。


「アラン、チカラが……凄いことになっていますけど」

「え?」

「なの」

「どういう事だ?」

「チカラが……今まで以上に大きなものになっています」

「なの」


 ニナにも分かるらしい。つまり、俺の魔力値はマイナスの値が大きくなったという事だろうか。

 だがまてよ、いずれ俺のマイナスはプラスに転換させる予定だ。ならばマイナスが大きければ大きいほど俺の表に出るチカラも大きいものになるのではないのか?


 ニナとフォウの間から、マルゲリーテがひょいと顔を出した。


「ちょっといいですか? アラン。今非常に自分に都合のいい事を考えていませんかっ? いけませんねっ危ないですよっ。あたしには見えませんが、フォウが言っている事が事実なら、アラン、アナタ、命を縮めたかも知れませんよ? マイナスが大きくなってそれがプラスになった時の事を想像してみてくださいっ。果たしてそのチカラの大きさにアナタの器、身体が持つのでしょうか? もともとゼロの身体に大量のチカラ……怖いですよっ危ないですよっ。気を付けてくださいねっ。下手したら……ボン! ですよっ」


 頭に当てた両手をパッと広げ、爆発を表現している。

 ……マルゲリーテに脅されてしまった。

 確かにそうなのかもしれない。あまり喜んでもいられないようだ。


「ごめんなさい……私……自分勝手な事を……」

「いやいいよいいよ。俺生きてるし。たぶん大丈夫だ、きっと」


 ひとりの女性が助かった。それでいいじゃないか。


「ではアラン、男の様子を見に行きましょうよっ。あたし気になりまくりですっ」

「そうだな。フォレス、案内してくれるか?」

「はい、アラン様。よろこんで」


 元気になったフォレスは笑顔で答えた。俺たちはその男の元へと向かう。


 そこで待っていた男の姿は、想像通りでもあり、意外なものでもあった。




  


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