84・再びの襲撃
本気なのかふざけているのか、今一つ掴み所のないマルゲリーテは椅子に座り直し、ツインの赤毛を両手でくるくると弄っている。
俺のチカラに関しての彼女の意見は聞けた。四天王を自分で倒せという。そういうものだという。
確実な根拠など何もないのだが、マルゲリーテが言うと何故か納得させられてしまうものがあった。
俺たちを追うものは四天王ではなく、その幹部であるジーク。こいつが今回の惨殺事件の主犯でもある。
「あたしはこの魔族を追い詰め、捕まえるわっ。そのためにしばらくは、アナタのパーティーに付いて行くからよろしくねっ。ジークはおそらくまだ近くに居るから」
マルゲリーテは俺たちに同行するつもりらしい。それは構わないのだが、なんだか面倒くさそうだ。
「好きにしてくれ、そのかわり自分の身は自分でなんとかしてくれよ」
「何言ってるのよ、おにーさんっ。あたしが一緒に居て、どれだけアナタが守られる事になるのか、思い知るがいいわっ。あたしこれでも強いのよ? ランクSなのよ? 美少女なのよ? キラッ。アナタは死なないわ、あたしが守るもの」
彼女は結界を解除してスタスタと歩きだした。
「何をしているのっ? さっさと出発よっ」
途端にリーダーシップを発揮し始めた彼女に、俺たちは黙って付いて行くのだった。
「これがゴウランド魔法紋っ。すごいわっ。馬車がその馬ごと守られているわっ」
マルゲリーテはサーラの馬車の紋章を見て、何やら呟いている。
御者台にフォウが収まると、俺たちも後ろに乗り込んだ。マルゲリーテも当然のように乗り込んでくる。
馬車は六人乗りなので移動は問題ないが、寝る時は赤毛は外に追い出そう。
「サジリアに挨拶してこなくていいのか?」
「だいじょぶよっ。あたしは自由だからっ。何ものにも縛られないわっ」
何が大丈夫なのか分からないが、大丈夫らしい。
「じゃあさっさと出発するか、この町にも長居しすぎた」
随分と足止めを食ったものだ。
「北へ向けて出発だ、フォウ」
「はい。アラン」
馬車はけたたましい音を響かせ、勢いよく走り出した。
事件からは一ヶ月以上過ぎた。そろそろやつがまた動き出しても不思議じゃない。
そんな事を考えながら町を抜けた途端、下方向から激しい衝撃を受けて、馬車は横転した。
「ぷぎゃう!」
「なんだ!?」
目の前で変な声を出したマルゲリーテが、下着を丸だしにしてひっくり返っていた。
あやうくそこに顔を埋めそうになった。
「みんな無事か?」
聞いてはみたが、俺が無事なのだ、他のやつが怪我をしているとは思えない。
心配なのは非力なサーラだけだ。
「大丈夫ですか、アラン」
フォウが御者台からやって来て、手を引いてくれる。
「なの~」
ニナも無事だ。
「ウチ目が回ったあ」
ルルも健在だ。
マルゲリーテは俺の目の前で、大股を開いて下着を晒している。
サーラは……どこだ?
「サーラ?」
「サーラが居ませんね。外に投げ出されましたか?」
「おーいサーラ!」
「アラン、次の攻撃が来るかもしれません。迂闊に動かないで下さい」
俺たちは身を低く保ち、馬車のまわりに集まった。攻撃はまだない。
そして、サーラの姿もない。どういう事だ。
暫く様子を伺っていたが、それっきり何も起こらなかった。
フォウはその場で何かを探るように、目を閉じている。
ニナは駆け回りだした。サーラを探しているのだろう。
「逃げられました。アラン」
「あたしが今展開した結界の端に、魔族と思われるオーラが引っ掛かったけど、消えたわっ」
フォウとマルゲリーテが揃って言う。
「つまり、どういう事だ?」
「サーラが……」
それは、……そんな事は、あってはならない事だった。
天使も居た。竜だって居た。魔法探偵などというやつまで傍にいたのだ。
そんな事があるはずがない。
俺はサーラの姿を求め、辺りを見渡すがフォウの一言が現実に止めを刺す。
「サーラが……さらわれました」




