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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第7章 姿なき追跡者編~ジーク~
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84・再びの襲撃

 本気なのかふざけているのか、今一つ掴み所のないマルゲリーテは椅子に座り直し、ツインの赤毛を両手でくるくると弄っている。

 

 俺のチカラに関しての彼女の意見は聞けた。四天王を自分で倒せという。そういうものだという。

 確実な根拠など何もないのだが、マルゲリーテが言うと何故か納得させられてしまうものがあった。


 俺たちを追うものは四天王ではなく、その幹部であるジーク。こいつが今回の惨殺事件の主犯でもある。


「あたしはこの魔族を追い詰め、捕まえるわっ。そのためにしばらくは、アナタのパーティーに付いて行くからよろしくねっ。ジークはおそらくまだ近くに居るから」


 マルゲリーテは俺たちに同行するつもりらしい。それは構わないのだが、なんだか面倒くさそうだ。


「好きにしてくれ、そのかわり自分の身は自分でなんとかしてくれよ」

「何言ってるのよ、おにーさんっ。あたしが一緒に居て、どれだけアナタが守られる事になるのか、思い知るがいいわっ。あたしこれでも強いのよ? ランクSなのよ? 美少女なのよ? キラッ。アナタは死なないわ、あたしが守るもの」


 彼女は結界を解除してスタスタと歩きだした。


「何をしているのっ? さっさと出発よっ」


 途端にリーダーシップを発揮し始めた彼女に、俺たちは黙って付いて行くのだった。





「これがゴウランド魔法紋っ。すごいわっ。馬車がその馬ごと守られているわっ」


 マルゲリーテはサーラの馬車の紋章を見て、何やら呟いている。

 御者台にフォウが収まると、俺たちも後ろに乗り込んだ。マルゲリーテも当然のように乗り込んでくる。

 馬車は六人乗りなので移動は問題ないが、寝る時は赤毛は外に追い出そう。


「サジリアに挨拶してこなくていいのか?」

「だいじょぶよっ。あたしは自由だからっ。何ものにも縛られないわっ」


 何が大丈夫なのか分からないが、大丈夫らしい。


「じゃあさっさと出発するか、この町にも長居しすぎた」


 随分と足止めを食ったものだ。


「北へ向けて出発だ、フォウ」

「はい。アラン」


 馬車はけたたましい音を響かせ、勢いよく走り出した。

 事件からは一ヶ月以上過ぎた。そろそろやつがまた動き出しても不思議じゃない。


 そんな事を考えながら町を抜けた途端、下方向から激しい衝撃を受けて、馬車は横転した。


「ぷぎゃう!」

「なんだ!?」


 目の前で変な声を出したマルゲリーテが、下着を丸だしにしてひっくり返っていた。

 あやうくそこに顔を埋めそうになった。


「みんな無事か?」


 聞いてはみたが、俺が無事なのだ、他のやつが怪我をしているとは思えない。

 心配なのは非力なサーラだけだ。


「大丈夫ですか、アラン」


 フォウが御者台からやって来て、手を引いてくれる。


「なの~」


 ニナも無事だ。


「ウチ目が回ったあ」


 ルルも健在だ。


 マルゲリーテは俺の目の前で、大股を開いて下着を晒している。

 サーラは……どこだ?


「サーラ?」

「サーラが居ませんね。外に投げ出されましたか?」

「おーいサーラ!」

「アラン、次の攻撃が来るかもしれません。迂闊に動かないで下さい」


 俺たちは身を低く保ち、馬車のまわりに集まった。攻撃はまだない。

 そして、サーラの姿もない。どういう事だ。


 暫く様子を伺っていたが、それっきり何も起こらなかった。


 フォウはその場で何かを探るように、目を閉じている。

 ニナは駆け回りだした。サーラを探しているのだろう。


「逃げられました。アラン」

「あたしが今展開した結界の端に、魔族と思われるオーラが引っ掛かったけど、消えたわっ」


 フォウとマルゲリーテが揃って言う。


「つまり、どういう事だ?」

「サーラが……」


 それは、……そんな事は、あってはならない事だった。

 天使も居た。竜だって居た。魔法探偵などというやつまで傍にいたのだ。


 そんな事があるはずがない。

 俺はサーラの姿を求め、辺りを見渡すがフォウの一言が現実に止めを刺す。


「サーラが……さらわれました」




  

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