83・マルゲリーテは語る2
神様の件は信じたくないらしい。「ないわぁ」を繰り返す彼女は、頭を振り振りしている。
「途中で自分の事、美少女とか言ってなかったか?」
「ありがとーおにーさんっ。そんなに可愛い?? てへっ」
こいつとは会話がうまく繋がらない。
「で、なんで四天王とその幹部が出て来たんだ? そっちの話を聞かせてくれないか」
「そんなの簡単よっ。種明かししちゃおうかなっ。んとねっ」
マルゲリーテは懐から例の短剣を取り出した。
「これはサジリナのお腹に入っていたものよ。これを見て何か気付いた事はない?」
血糊は綺麗に無くなっていたが、この短剣はあの瞬間を思い出す。――死の直前のあの恐怖を。
俺は眉間に皺を寄せ、その忌々しい物を見つめた。――彼女は何を言わんとしているのか。
「よく分からないが客観的に見れば、よくこんなものが腹の中に入っていたものだと思うよ」
ワクワクとした表情で、俺の顔を覗き込んでいたマルゲリーテは、その顔をパアッと笑顔に輝かせた。
「正解! なかなかやるわねっ。良くできました。おにーさん何者?」
馬鹿にされているのだろうか。
「その通りなのよっ。こんなものがお腹に入っていたらおかしいでしょ? 痛いでしょ? 死んじゃうでしょ? それをどうやってお腹に収めたのかと言うと、簡単に言えば魔法ね。この剣には魔力が籠められている。その魔力によって、お腹も傷つけないし、痛くもないし、違和感もない。で、ただ魔力を籠めただけでは、時間という制限の元、いつ効力が切れるとも限らない。それを可能な限り延ばして、持たせようとすると、魔法陣が必要になる。でもこんな小さなものに魔法陣は書けない。で、どうするかと言うと、それを簡略化した文字列を組み込む事になる。その文字列はこの剣と持ち主の強い繋がりを持つ事柄を記述する事が望ましい。で、結果その文字はこうなった」
マルゲリーテは短剣の柄の部分を近付けて見せてきた。
「何だこれは?」
それは魔族のものと思われる文字で書かれており、俺には読めなかった。ただの記号の羅列だ。
こんなものが魔法陣を簡略化したものだと言うのか?
マルゲリーテが解読してくれた。
「ヴィーダ様にこの命を捧ぐ その名はジーク そう書かれているわっ」
「なんだって?」
「魔族の魔法の使い方は人間のそれとは違うわっ。こんなものよっ」
「お前、こんな解答用紙を持ってて、偉そうに勿体ぶってたのか?」
俺はペテンにあったような気分になった。こんな短剣に答えが書かれていたのだ。
だがマルゲリーテの言い分は違った。そしてそれは俺の短絡的な考えを酷く後悔させるものだった。
「何言ってるのよっ、おにーさん。その文字を見てそれが四天王だなんて誰が分かるのよっ。下の名前がその幹部だなんて誰が分かるのよっ。おそらくそれは四天王のヴィーダがジークってやつに授けた短剣だって誰が読み取れるのよっ。だいたいその文字が女の腹に短剣を仕舞うための簡略陣記述だなんて誰が理解出来るのよっ。そ・れ・い・ぜ・ん・に! その魔族文字を誰が読めるって言うのよっ! それはあたしっ。あたしだから出来るのよっ。それがランクS美少女魔法探偵マルゲリーテなのっ! 頭が高いっ! 控えるがいいわっ! キラッ」
マルゲリーテは椅子から立ち上がって、ポーズを決め、控えるがいいわっの部分でくるっと一回転して、短すぎるスカートを巻き上げて下着を見せつつ、「キラッ」の部分で左手のVの字を左目に合わせて横にスライドさせた。
「神にかわって~~~~~~~~」
噛み付かれそうな権幕に押され気味だった俺に向かって、彼女は最後に決めポーズをとった。
「おしぼりよ!!!」
「意味わかんねーから!」




