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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第7章 姿なき追跡者編~ジーク~
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76・そして絡み付く

 王都を出て一ヶ月も経った頃、俺たちはそこそこ大きな町に着いた。

 大小様々な建物が建ち並び、なかなか堂々とした町並みだ。

 多くの人が行き交い、活気もある。

 ニナが好きそうな屋台も沢山出ていた。


「おに……」

「まずは情報収集だ」


 ニナの言葉を遮り、この辺りの情報収集をするべくギルドを訪れる。

 王都ほどではないが立派な建物で、中もそれなりに賑わっていた。


 まず依頼ボードを調べる。

 依頼ボードを見れば近辺にどのような魔物が出没するのかが知れる。

 端から端まで見たが、特に気になる情報はないようだ。

 すると横から声が掛かった。


「失礼ですが、パーティー『エンジェル』の方でいらして?」


 声の方を向けば、どこかで見たような顔があった。


「当ギルドのマスターをしております。サジリナと申しますわ」

「あ」


 王都のサジリアとそっくりだった。しかも名前まで。いや話し方もだ。


「お察しかと思いますが、王都のサジリアは私の姉ですわ。ギルドの定期魔法便でアランさんのパーティーの事は伺っておりますわ」


 魔法便が何なのか分からないが、どうやら俺たちの事は既に知っているらしい。

 ロビーではなんだという事で、そのまま俺たちはギルドマスターの部屋へ通された。


「あらためまして、サジリナと申しますわ。ここのマスター務めさせてもらってますわ」

「知ってるようだが俺はアランだ。こいつらは――」


 順にメンバーを紹介したところで、奥の扉から出てきた女性が飲み物を運んできた。


「どうぞ」

「秘書のマキナですわ」

「マキナと申します。お初にお目にかかります。どうぞよろしくお願い致します」

「ああ。よろしく」


 何がよろしくなのか分からなかったが、とりあえず挨拶を返す。


「で、サジリアの妹さんだって? 確かにそっくりだ」

「よく言われますわ。姉も以前はここに務めていたのですわ」

「そうだったのか」

「アランさんのパーティーがこの町を通るかもしれないと、姉から伺っておりましたのですわ」

「しかしよく、見ただけで俺たちだって分かったな」

「はい。姉からはそのパーティーは美少女を四人も連れたハーレムパーティーだと伺っておりましたから、すぐに分かりましたわ」

「……」


 サジリナは姉とそっくりだが、よくよく観察してみると少し違った。

 目つきが姉より艶やかだった。化粧のせいだと言ったらそうなのかもしれないが、性格によるものかもしれない。視線がねっとりとしていた。


 その視線が舐めまわすように俺たちを見まわしてから、俺に戻ると――


「アランさん方はもう宿はお決めになられたのでして?」


 ――訊いてきた。


「いや、まだだ」


 寝る時は馬車でいいと思っていたから、宿はとっていない。


「是非アランさんの武勇伝を聞いてみたいのですわ。よろしかったら私の家にお泊りになってくださりませんこと?」


 ギルドマスターが宿を提供してくれると言うのか。……まあ断る理由もない。


「かまわないが、いいのか?」

「はい。広い家に一人で住んでいるものですから、私としても寂しいのですわ。是非いらっしゃってくださいまし」

「では、遠慮なく泊まらせてもらおうか」

「よかったですわ。今夜は腕に縒りをかけて、ご馳走させていただきますわ」


 サジリナは喜び、薄い唇が微笑みに形作られる。

 その瞳は艶やかなまま俺を捉え、絡み付いてきた。




  

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