76・そして絡み付く
王都を出て一ヶ月も経った頃、俺たちはそこそこ大きな町に着いた。
大小様々な建物が建ち並び、なかなか堂々とした町並みだ。
多くの人が行き交い、活気もある。
ニナが好きそうな屋台も沢山出ていた。
「おに……」
「まずは情報収集だ」
ニナの言葉を遮り、この辺りの情報収集をするべくギルドを訪れる。
王都ほどではないが立派な建物で、中もそれなりに賑わっていた。
まず依頼ボードを調べる。
依頼ボードを見れば近辺にどのような魔物が出没するのかが知れる。
端から端まで見たが、特に気になる情報はないようだ。
すると横から声が掛かった。
「失礼ですが、パーティー『エンジェル』の方でいらして?」
声の方を向けば、どこかで見たような顔があった。
「当ギルドのマスターをしております。サジリナと申しますわ」
「あ」
王都のサジリアとそっくりだった。しかも名前まで。いや話し方もだ。
「お察しかと思いますが、王都のサジリアは私の姉ですわ。ギルドの定期魔法便でアランさんのパーティーの事は伺っておりますわ」
魔法便が何なのか分からないが、どうやら俺たちの事は既に知っているらしい。
ロビーではなんだという事で、そのまま俺たちはギルドマスターの部屋へ通された。
「あらためまして、サジリナと申しますわ。ここのマスター務めさせてもらってますわ」
「知ってるようだが俺はアランだ。こいつらは――」
順にメンバーを紹介したところで、奥の扉から出てきた女性が飲み物を運んできた。
「どうぞ」
「秘書のマキナですわ」
「マキナと申します。お初にお目にかかります。どうぞよろしくお願い致します」
「ああ。よろしく」
何がよろしくなのか分からなかったが、とりあえず挨拶を返す。
「で、サジリアの妹さんだって? 確かにそっくりだ」
「よく言われますわ。姉も以前はここに務めていたのですわ」
「そうだったのか」
「アランさんのパーティーがこの町を通るかもしれないと、姉から伺っておりましたのですわ」
「しかしよく、見ただけで俺たちだって分かったな」
「はい。姉からはそのパーティーは美少女を四人も連れたハーレムパーティーだと伺っておりましたから、すぐに分かりましたわ」
「……」
サジリナは姉とそっくりだが、よくよく観察してみると少し違った。
目つきが姉より艶やかだった。化粧のせいだと言ったらそうなのかもしれないが、性格によるものかもしれない。視線がねっとりとしていた。
その視線が舐めまわすように俺たちを見まわしてから、俺に戻ると――
「アランさん方はもう宿はお決めになられたのでして?」
――訊いてきた。
「いや、まだだ」
寝る時は馬車でいいと思っていたから、宿はとっていない。
「是非アランさんの武勇伝を聞いてみたいのですわ。よろしかったら私の家にお泊りになってくださりませんこと?」
ギルドマスターが宿を提供してくれると言うのか。……まあ断る理由もない。
「かまわないが、いいのか?」
「はい。広い家に一人で住んでいるものですから、私としても寂しいのですわ。是非いらっしゃってくださいまし」
「では、遠慮なく泊まらせてもらおうか」
「よかったですわ。今夜は腕に縒りをかけて、ご馳走させていただきますわ」
サジリナは喜び、薄い唇が微笑みに形作られる。
その瞳は艶やかなまま俺を捉え、絡み付いてきた。




