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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第6章 王都編~黒い影~
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69・遭遇2

「竜のブレスだって?」


 仕方がないのでルルの事を説明した。


「ああ、こいつは竜の子だ。とにかく俺らはやり過ぎたらしい。修理代は……弁償かな?」

「うーん。まだオーナーと連絡を取っていないのだが……」


 シャランは言いにくそうに告げる。


「ちょっと被害が大きすぎる。もちろん私からもとりなすつもりだし、貴殿たちを悪く言うつもりもない。だがもし賠償という事になってしまったらその時は容赦願いたい」


 それは、仕方ないだろう。


「その時はこちらとしてもまあ、諦めよう」

「で、影の正体は分からなかったという事なのだろうか」

「あの影に実体は無いように見えました。ただ微かに魔族の臭いが……」

「したなの!」


 一番距離を詰めて戦っていたニナが保証した。あれは魔族らしい。


「魔族だとしても何が目的だ? 前回の魔族と同様俺らの偵察か?」

「その線は濃いですね。あの影に戦闘能力は見られなかったので、情報収集が目的じゃないでしょうか」

「前回の魔族が倒されたのも、この場所だからな。私もそうだと思う」


 また出てくるだろうか。今回の事でもうここには来ないかもしれない。

 そうなると捜索はひどく困難になってしまう。

 それにもしあの影が情報収集を目的としていたのなら、その情報は四天王の元へ渡るという事でもある。

 今の所どのような情報が敵に渡っているのか分からないが、これ以上相手を有利にさせたくないのが正直な所だ。


「竜のブレスの直撃でも倒せなかったんじゃ、次出て来ても駄目なんじゃないのか?」

「そうですね。何回か戦ってみれば対抗策も見つかるかもしれませんが」

「その度にここの施設が破壊されるのも困るぞ」

「次はそうならないように加減しつつ、相手の能力を探るという方向で行こう」


 俺が提案すると皆も納得したようだ。


「あとひとつ、わたくしが気付いたのはあの影には本体が別にあるかもしれない、と言う事ですね」

「つまりあの影は、その本体のスキルのようなものという事か?」

「はい。あれに意思のようなものは感じられませんでしたし」

「なるほどな。スキルを使って情報収集という訳か」


 シャランも頷いている。


「ならば最終的には、その本体の撃退になるな」

「この王都に潜んでいる、という事でしょうか」

「まだ分からない事だらけだが、引き続き警戒をしておいてくれ。無理を言うようだが施設の破壊はなるべく無いようにしてほしい」


 では解散するか、という所で――


「ところでシャラン、その下はどうなってる?」


 ――その白いローブを指さし、俺は気になっていた事をシャランに聞いた。


「気になるのか? ふふ。どうだろうな」


 教えてくれないようだ。しかし見てろよ、俺はそのうちとんでもスキルを身に付けて、お前の隅から隅まで透視してくれる。


 スキルというものはある特定の魔法なり技なりを極めると、最後に手に入る事がある。つまりなんらかのスキルを使用しているという事は、なんらかの魔法なり技なりが最終段階まで行っているという事だ。

さすがに妄想と想像で睨んでいるだけでは、透視のスキルは芽生えないかもしれないが……。


「そういえばシャランの部屋は破壊されたんだろ? これからどこで寝るんだ?」


 今後のためにもシャランの居所は聞いておきたい。

 いや、特に意味は無いが、念のためだ。……念のため。


「私の事は心配しないでくれ。なんとでもなる。アラン殿が今居る区域の施設でもいいし、そうだな、この事務室でも構わないな」


 普段着替えるのもこの事務室だしな。ここが気に入っているのだろうか。


「じゃあ俺たちは部屋に戻るぞ。明日も一応巡回しておく」

「ああ、頼む。大穴の件は後日オーナーと連絡が取れ次第アラン殿に伝える」


 弁償だとしたらいったいいくら掛かる事だろう。ここ最近で蓄えたものが一気に無くなる可能性もある。

 できればシャランに何とかして欲しい所だ。




 俺たちは部屋に戻ったが昼間眠ってしまったので、まったく眠くない事に気付いた。

 ならばと、この時間をお子様たちとの親睦タイムにする。


「ルルのブレスはあれだけなのか? 炎とか氷とか違う属性は?」


 ルルの事をもうちょっと知っておいた方がいいかもしれない。今回の被害は甚大だった。


「ウチねー他にも出来る気はするんだけどー、今は出来ない感じ? ホントはねー竜の里で先生が付いて色々と教えてもらうんだけどー。ウチさーずっとひとりでさー、先生も付いてくれなかったんよ。だから何も教わってなくてー。さっきのもウチが勝手に作ったブレスなんよー」


「う……お、おま、お前……うっ」

「魔法は使えるのですか?」

「うーんウチねーそういうのもよくわかんなくてさー。何となくで鱗の強化みたいなのは出来るんだけど、それくらいかなー。ウチ飛べないし、使えない子ってよく言われてた。ダメな子だって、いらない子だって――」

「うっうっうううううううおおおおおお!!!! そ、そ、そ、そんな事はないぞぉぉぉルルよぉぉぉ!! うううっっお、俺はぁおま、お前の気持ちがうっううよくわかわか分かるぞぉぉぉ!! うっうううぅぅお前はやれば出来る子なんだよぉぉぉうううううさ、さ、さっきだって凄かったじゃないかぁぁうううお、お、俺はお前の事をぉぉううういらない子だなんてううう……お、思わないぞううう……ひっく……うううダメな子なんて絶対にぃぃ思わないぞおおおおうううう……そ、そんな事いうやつがいたらぁぁうううお、俺がぁああうう殴ってやるからなぁぁぁぁ!! うううおーんおんおん」

「もうアラン……うるさいです」


俺は号泣したせいで疲れたのか、この後ぐっすり眠れたのだった。




  


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