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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第6章 王都編~黒い影~
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68・遭遇1

「昼間でも眠れるものだな」


 目が覚めると既に夜だ。


「とりあえず巡回してみるか。もし幽霊と遭遇したら、捕獲優先でそれが無理なら面倒だからやっつけちゃって」

「いいのですか?」

「かまわない。逃げられる方がやっかいだ」

「了解しました」

「ウチもやる!」

「なの!」


 闘技場内をぞろぞろと練り歩く。全員で回る必要があるだろうか?


「お散歩なの」

「ウチなにすればいいの」

「……」

「静かにしてください。幽霊が逃げちゃいますよ」


 こいつらにまかせて俺、戻ろうかな。


「アランは報告する役ですから、一部始終を見ておいて下さい」


 いつも思うのだが、フォウは人の心が読めるのかもしれない。


 夜の闘技場はひっそりと静まり返り、昼間の熱気など跡形もない。

 俺たちの歩く足音が、その場内の壁に跳ね返り、こだまする。


「ちょっと……怖い……です……ね」


 臆病なサーラはビクついている。


 広い場内を無作為に歩き回る。何かあれば天使たちが感じ取ってくれるだろう。


 観客席から控室、医務室と回りそのうち、なんの部屋か分からない扉の前に来た所で、フォウが小声でニナに囁いた。


「ニナ、わたくしが扉を開けたら突入してください」

「なの」


 フォウが扉を少し開けた瞬間、ニナが滑り込む。その動きは速い。

 途端に中から、けたたましい破壊音が鳴り響き、フォウも続く。

 

 ルルとサーラは待機させて中を覗くと、ニナが飛んだり跳ねたりして部屋を荒らしていた。

 目を凝らすと真っ黒な影を相手にしている。

 その影は人型をしているがその姿は曖昧で、ゆらゆらとかげろうのように揺らめいていた。


 ニナは影に向かって攻撃をしているようだが、それらはみな影を素通りしている。

 影に対して打撃は有効打とならないようだ。

 影からの攻撃は無い。だがニナは執拗に追いかける。


「ニナ離れてください!」


 フォウの言葉に神速の反応でもってニナが飛び退いた刹那、フォウの左手から赤い閃光が迸る。

 影に直撃したように見えたが、それは素通りして部屋の壁に焦げ目を付けた。


「ウチも手伝うよー」


 ボフンと隣で竜の姿になったルルは「あ~ん」と、おもむろに大口を開けた。


「まさか! ニナ、フォウ! 逃げろ!」


 ブフォッ! とルルの口から放たれた白いブレスは、影を飲み込みつつ激しい破壊音と共に部屋の壁を貫通し、遥か先まで大穴を開けた。

 ルルのそれは炎でも光でもなかった。純粋な衝撃波だ。

 天使たちは部屋の隅に退避していた。


「やったのか?」

「いえ、一瞬霧散したかのように見えましたが、その大穴から逃げたようです」

「逃げたなの」

「えっウチのせい? ごめんちゃい」


 ルルの開けた穴から逃げたようだ。しかしこの穴、どこまで続いているんだ? いくつもの部屋を貫通していた。


 この穴……弁償だろうか……。

 ルルは子供なのでまだ五メートル級の竜だが、その攻撃の威力は計り知れなかった。

 さすが竜と言うべきか。それとも古竜が特別なのか。


「まあいい。一日目から遭遇出来たんだ、まだ出会う可能性はあるかもしれん」


 今の騒音でシャランも起きた事だろう。このまま報告に行くか。

 まてよ、シャランはどこに住んでいるんだ? まさか事務室じゃないよな。


 そう考えた時、そのシャランが現れた。


「何があったのだ!?」


 寝る時の恰好なのだろうか、体のラインがはっきり分かる白いローブを着て腰帯で結んでいた。

 その豊満な胸の隆起に俺の鼓動が跳ね上がる。無機質な鎧姿とはまた違って、女の色香を漂わせる雰囲気に頭がクラクラしてくる。


「アランしっかりしてください」

「だ、大丈夫だ。俺はまだ無傷だ」

「私の部屋の半分を破壊して衝撃波が通り過ぎて行ったぞ。あと少しずれていれば私も危なかった」

「そ、そうなのか? 他の連中は?」

「ここに泊まり込んでいるのは責任者の私だけだ。心配ない」

「ウチのせいなのーごめんちゃい」


 人型に戻ったルルは謝るが、こいつのせいには出来ない。影に会ったら攻撃しろと命令したのは俺だ。


「お前は関係ない。ちょっとだけやり過ぎただけだ」

「ともかく報告を聞こうか。事務室までお願いする」


 踵を返すシャランの後ろについて歩き出した俺は、その腰のくびれと、ヒップのラインに目が釘付けになっていた。

 こいつ……下着はつけているのだろうか。シャランの事だ、その下は裸の可能性が高い。

 

 俺は透視するかの如く睨んでいたが同時に、隣のフォウの視線が突き刺さるのを感じていた。

 だが今はそれどころじゃないと、俺は無視を決め込んで前方に揺れる大桃を眺めるのに集中した。


「ただの変態ですよ。アラン」

「俺は今、あるスキルを習得するべく集中しているのだ。黙っていなさい」


 本当に透視みたいなスキル、あったらいいなと切に願うのだった。




  

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