59・シャランの正体
俺たちは事務室でシャランと対峙していた。
「あれはいったいどういう事なのか、説明してもらおうか」
もちろん馬鹿勇者乱入の件だ。
「言い訳はしたくないが、私は何も聞いていなかったのだ。関係者に聞くと待機中の魔物はローランド様によって倒されていた。そして彼はニナ殿の試合に乱入を果たしたという事らしい。私も驚いているのだ」
闘技場のスタッフも、勇者の肩書きを持つローランドには逆らえなかったと言う事か。
「昨日のニナの試合を見て、自分が戦いたくなったという事でしょう」
「それで返り討ちか。本当に馬鹿な事をする馬鹿だな、あの馬鹿すぎる馬鹿勇者は」
勇者ローランドという名前にいくつ馬鹿を付けても足りないくらいだ。
それに、――俺はニナが負けたとは認めていない。
「医務室にもローランド様が来てニナ殿を勧誘したと聞いて、私も彼の見方が変わった。さすがに見損なった。どこまで自分勝手なのだ」
「それでシャランさんよ。名高い勇者様と無理やり戦わされて担架で運ばれて、まさか報酬はそのまま金貨十枚とか言わないよな?」
俺は事務室の長椅子に座りながら、シャランを睨みつける。
「当然だ。既にオーナーに話は通してある。今回の試合報酬は金貨三十枚だ。それで許してほしい。本当にこちら側の管理不行き届きだ。すまなかった」
「わかった。そこまで出すというなら、俺もこれ以上は何も――」
「アラン殿がそれでは済まない、代わりに私に脱げと言うのなら私はそれに従う事もやぶさかではない。アラン殿の気が済むように言いつけてくれ」
「……」
「……」
「……」
「おにく」
何でそうなる?……俺は確信した。こいつ絶対露出狂だ。この部屋の鍵も壊れたのではなく、こいつが壊したに違いない。
そして常に下着か裸の状態でこの部屋をうろついているのだ。何時誰に見られてもいいように。
シャランの提案に俺はむしろ、金貨三十枚よりもそっちの方がいいと思ってしまったが、フォウ達の手前、なんとか踏みとどまって金貨だけでよしとした。
「脱いで……じゃなくて金貨だけでいい。はよよこせ。もう帰る」
「そうか、遠慮しなくてもいいのだぞ? アラン殿はたしか、ここに来る度に見たがっていた様子だったしな。私はとてつもなく恥ずかしいのだが、アラン殿が言うのなら私は従うしかない。仕方ないのだ。……で、いいのか?」
頬を赤らめて言っている。恥ずかしいのは本当らしい。だが見せたいという意思がチラホラと垣間見える。
「う……見た……いや金貨だ! 早くしろ! 俺の理性が残っているうちにだ!」
俺はフォウやサーラに、これ以上軽蔑されるわけにはいかない。まがりなりにもパーティーリーダーなのだ。
これで俺が本能のままに動いたら、絶対に見捨てられる。……それは嫌だ。
俺は金貨を奪うように手にすると、シャランから視線を逸らして足早に退出する。
一人だったらやばかった。絶対に要求していただろう。――脱げ、と。
だが次に来る時は俺一人で来ようと、心の中で密かに誓った。
フォウがそんな俺の心を読んだかのように、冷えた視線を向けていたのは気にしない。




