58・勇者のやり方2
こいつ……何を言ってやがる!
「僕は君の実力を認めるよ。君には勇者のパーティーに入る資格がある。他のメンバーにはすでに説得済みだから何も問題はないよ(笑)」
ニナは……黙って聞いている。
それほど興味を示している風にも見えない。
「それに勇者のパーティーともなれば、名誉も名声もそしてお金も、すべてが手に入るよ。どうだい? 君は無名のまま燻っていていい存在じゃない。そこの男とどういう関係か知らないけど、僕に付いてきた方が君のためだと思うよ(笑)」
「ふざけるな! ニナは! ニナは……」
あれ? 言葉が続かなかった。
ニナは……何だ? 俺にとってニナとは何だ。天使だ。そして俺はそれに寄生したクズだ。ニナはその名の通り天使で、俺は天使という事実も知らないうちに、俺の中での天使という存在として認めた少女だ。そして本物の天使だと知った。ただ懐いてくれた事をいい事に利用するだけ利用しているのが俺だ。命さえも救ってもらった。そして何も返してやれていない。それが俺だ。何度も怪我を治してもらって、それが当たり前のように振る舞ってきた。そしてこんな美少女と一緒に居て釣り合うはずもない。俺の都合でこんな所まで連れてきて、彼女に何のメリットがあるというのだ。むしろデメリットしかないじゃないか。俺なんかに付きまとわれて、いいように利用されてニナが可哀想じゃないか。客観的に見たら、絶対に俺なんかとは別れろと誰もが言うに違いない。俺なんかが一緒に居ていい存在じゃないのだ。俺と居たらダメなのだ。俺がニナを駄目にしてしまう。何とかしなければ。早く何とかしないといけない。そうだ……今すぐ……。
俺は後悔の海に飲み込まれそうだった。
「そこまでです、後ろの方。これ以上はわたくしが許しません」
フォウが左の掌を、ローランドの後ろの魔法使い(男)に向けていた。
その男の顔はフードに隠れて見えないが、目だけは光って見えた。
「ほう。私が何かしたとでも?」
「そうですね。『邪眼』あたりでしょうか? 試合場でニナを縛ったのもあなたですね。今確信できました」
次の瞬間、俺の心の闇が晴れた。言われて気付くが、確かに何かをされた気がする。
こいつら精神操作のようなものまで使って、俺らを陥れようとしたのか?
「君が何を言いたいのかわからないが、僕は彼女を勧誘しているだけだよ? 変な言いがかりはよしてほしいな。とりあえず彼女の返事はどうなんだい?(笑)」
「ニナ? ニナはアランと一緒なの。ずっと一緒なの。だからごめんなさいなの」
よく言った……ニナ。
「……そうか。それならば仕方ないね。今日の所は引くとしよう。でも何かあればすぐに僕の所へ訪ねて来てほしい。いつでも歓迎するからねニナたん。それからそこの女の子。君も見所があるかも知れない。よかったらニナたんと一緒に来てもいいからね(笑)」
フォウに向かってウインクしてやがる。
「結構です。アラン、行きましょう。もうここに用はないはずです」
フォウに促されてニナをベッドから下ろし、俺たちは医務室を後にした。
ローランドとすれ違いざま、睨むのを忘れない。ニナだけじゃなく、俺にまで何かやろうとしやがった。
俺が自らニナを手放すように仕向けようとしやがったな。
これがこいつの……勇者のやり方か!
いつか俺がチカラを取り戻した時は、必ずこいつをぶちのめしに来る。――絶対にだ。
俺の中で勇者ローランドという存在は、最悪のものとなった。




