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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第5章 王都編~闘技場のあれこれ~
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54・そしてリフレイン

 サーラが部屋から出てきた。

 泣きながらフォウにしがみ付いている。

 ……やはりな。


 俺は黙ってサーラを抱きしめた。


「大丈夫だサーラ。……俺らが付いてる、何も心配するな。フォウもご苦労だった」

「は……はい……」


 サーラのギルドカードは確認しない。どうせFだ。

 傷を広げるような事はしたくない。


 俺は受付に戻り、サーラをパーティーに組み込む申請をすると、さっさとギルドを出た。

 サーラが辛い思いをしたのだ。こんな所に長居する必要はない。


「よし闘技場へ行くぞ」


 そろそろ夕方だ。今日のニナの相手は聞いていないが、心配はしていない。

 俺たちは新たにメンバーとなったサーラを囲んで、闘技場へ向かった。




 さて、事務室の扉の前だが、当然ノックはしない。

 俺は勢いよく開け放った。


「!!!」


 無言の風圧を伴って鎧が飛んできた。

 俺はかつてない速さで動いた。

 もはや三回目ともなると、考えるより先に体が反応する。――驚くべき事に俺はそれを避けたのだ。

 

 上体を反らし、飛んできたそれをやり過ごすと、即座に姿勢を元に戻す。

 ……ガン見してやった。

 

 俺の目に飛び込んできた光景は天国のそれだ。今日は下着すら着けていなかった。

 その造形はこの世のすべての美に通ずる。そして――

 なめらかな体の曲線(ライン)と豊満な胸のふくらみに釘付けになった瞬間、後頭部に衝撃を受けて俺は気を失った。


 気付くとまたしても長椅子に寝かされていた。


 なんという事だ。俺が天国を噛み締めた瞬間、フォウが後ろから襲いやがった。


「フォウ……なんて事を……」


「申し訳ありませんアラン。考えるより先に体が反応してしまいました」

「先ほどの回避行動は素晴らしかったぞアラン殿。フォウ殿の回し蹴りも華麗だった」


 俺は回し蹴りで落とされたのか。……この三回で成長していたのは、俺だけではなかったようだ。

 俺にとって都合の悪い連携を、こいつ(フォウ)は獲得してやがった……。


 だが、――しかしこの女騎士、本当は着替えを誰かに見せたいのではないのか?

 というか、どのタイミングでも着替え中とか、ずっと裸でこの部屋に居ると考えた方が納得できる。


「今日は私のデモンストレーション的な試合があったのだ。それが終わって着替えていた所なのだよ、もちろん鍵は掛けようとしたんだが、その鍵が壊れていてね、これから修理を申請するところだ」


 女騎士は説明するが、俺は信じない。絶対に裸族だこいつは。


「まあいい。補充は出来た。これで俺は……三年持つ」

「アラン……」


 フォウが呆れている。


「ところで、今日のニナの相手はどんなのが出るんだ?」

「それは教えられないが、Aランクの魔物とだけは言っておこう。ひとつ目を軽くいなしていたニナ殿の敵ではないだろうがね」

「そうか。ニナ、全力は出すなよ。昨日はあやうく一瞬で終わる所だった」


 俺は昨日の試合を思い出し、ニナに注意する。


「はいなのー」

「では控室に行こうか、ニナ殿」

「じゃあ俺たちはまた観客席に居るからなニナ。頑張って手ぇ抜けよ」

「はいなの!」




 観客席で試合が始まるのを待っていたが、いつまで経っても進行役が出てこない。

 ニナはとっくに闘技場の中央に出ていて、ひとりポツンと立っている。

 会場もざわついている。何かあったのだろうか。


 やがて奥の扉から一人の男が出てきた。

 その男の近くの観客席では黄色い悲鳴が上がっている。何事だ?

 男が歩くにつれ、会場のざわめきも大きくなり、やがてその男はニナの前で立ち止まった。


 あれは……!?


 薄ら笑いを浮かべてニナと対峙していたのは――


「待たせたね。ニナたん(笑)」


 馬鹿勇者だった。




  

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