52・新しいメンバー
宿に戻っても、俺はまだボーっとしていた。
「アラン大丈夫ですか?」
「あ、ああ。……金ならある」
「……」
時間が経つにつれ、ダメージが大きくなって行くような気がする。
金貨五枚。……大金だ。今でこそ何十枚も持ってはいるが、つい最近まで銀貨数枚を稼ぐのに、ひいひい言っていた俺だ。
価値が分からないはずがない。金貨五枚と言えば、銀貨五百枚だ。
何かが麻痺していた。天使たちが簡単に稼いでくれるので、俺は何か勘違いしていたのだ。
せめてもの救いは、ニナが満足してくれた事だろうか。
ニナが稼いだ金だ。彼女が喜んでくれたのなら、それで納得しよう。
「よし、もう寝る」
「反省は終わりましたか? これからは節約しましょう、アラン」
「はい……」
素直に頷き、ベッドに横になった。ニナも入ってきてくっ付いた。
「アラン今日はいっぱい美味しいのありがとうなの。ニナあしたもがんばるなの」
「そうだな。お前が満足してくれてなによりだ。だがあの店にはもう行かない。俺の記憶が飛ぶ」
「そうなの?」
「そうだ」
ニナは分かっていないようだが、基本的に素直だから言う事は聞いてくれる。
俺は上半身を起こし、皆に宣言した。
「よし、明日からは俺たちは節約道を突き進む。宿も取らない、馬車で充分だ。それかフォウのテントでもいい。王都の外に出れば目立たないだろう。食事も肉が食いたければ狩りをしてこい。それ以外は野菜が主食だ」
「ニナまいにち狩りするなの!」
「極端ですね」
「……」
「反対意見は無いな? 方針は決まった。寝るぞ」
どうせ寝る時は二人一組なのだ。馬車で充分だった。フォウにテントを出してもらってもいい。
その場合、目立たないように王都の外へ出なければならなくなるが、狩りをするというのなら、それはそれで丁度いい。
俺は無理やり決定して、さっさと寝る事にした。今夜の事はもう忘れてしまいたい。
◇ ◇ ◇
翌朝、昨夜の事はすっかり忘れて、朝から闘技場へ行くぞとはりきっていた俺は、フォウに止められていた。
「なんでこんな早くから行く必要があるんですか」
「いや、ほら、そのいろいろ準備もあるだろう?」
「ありません」
「他に行くとこもないしさー闘技場でもいいんじゃないかな?」
「闘技場じゃなくて、事務室の間違いじゃないんですか?」
「え? そんな事ないよ? べ、べつに誰かの下着姿が見たいとかじゃないし! 違うし!」
「ニナが毎晩、下着姿でくっ付いているじゃないですか」
「いや、おこさまは……」
「ニナのパンツ見るなの?」
ピクリと反応したニナがワンピースをめくり始めた。
「着た服脱ぐなおい」
「サーラのパンツ見るなの?」
「あ……や、やめ……ぬ……脱がさ……ないで……くだ……」
「サーラならまだまし……いやいやいやいやニナやめなさい!」
「は……はず……恥ずかしい……ですニナ……さま」
朝からカオスだった。
結局朝飯を食うのに狩りに行く事になって、王都を一度出て森へ行き、ウサギだの鹿だの熊だのいろいろ狩って、全部フォウの袖口ポケットにしまった。
そういえば王都に来る前にいろいろ買った食材も、まだポケットにあったはずだ。
そのまま昼飯時まで森で過ごした。天使たちは交代で狩りに行き、一人は護衛に残していた。
サーラは焚火の番だ。
「そうだサーラ、このまま俺たちのパーティー、『エンジェル』に入るか? どうせ一緒に行動してるんだ、ついでにギルドで冒険者登録したらどうだ」
「は……はい……わたしは……どちら……でも」
サーラを俺たちの庇護下に置くという意味でも、はっきりと外から見ても仲間だと認識させた方が、都合がいいように思える。
ただひとつ気にかかるのは、冒険者登録の際、サーラの魔力がマイナスとして出てしまう事だ。
サーラにとっては嫌な気分を味わう事になる。
――という事で本人に確認したが、サーラは大丈夫だと言う。
「なら午後からギルドに行ってみるか」
◇ ◇ ◇
昼食を終えて王都に戻り、ギルドを探す。道行く人に聞いたらすぐに分かった。
さすがに王都のギルド本部は建物から違う。
それは五階建の作りで、一階部分の広さもこれまで見たギルドの倍以上だ。
「立派なもんだな。さてサーラ、覚悟はいいか? 嫌な事言われたりしたらすぐに言え。俺が守ってやる」
「はい……ありがとう……ござい……ます」
嫌な思いをするのは確定的だ。魔力測定されたらマイナスなんて値が出るのだ。
どんな酷い事を言われるのか分からない。だが俺たちが居る。すぐにフォローしてやろう。
午後のギルド内は比較的空いていた。受付に登録の申し込みをすると、すぐに別室に案内してくれた。
「こちらでお待ちください」
サーラだけを部屋に通し、俺たちは外で待機だ。
しばらくすると案の定、部屋の中が騒がしくなった。
「やはりな、どこへ行っても魔力なしだと分かれば驚かれる。その次は嘲笑されて、蔑まれて、ゴミを見るような態度をとられるんだ」
「わたくしが様子を見て来ます」
仲のいいフォウが傍に居れば、サーラも安心するだろう。
「そうだな、任せた。サーラが落ち込んでいたら慰めてやってくれ」
俺はフォウを部屋に送り込んだ。




