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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第5章 王都編~闘技場のあれこれ~
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51・そして反省

「素晴らしい試合だった! 私は感動したよ」


 女騎士ことシャランは大絶賛だ。同じランクAから見てもニナの戦いは圧倒的だったらしい。

 俺たちは今、シャランの事務室に戻ってきていた。もちろん報酬をもらうためだ。


「明日も期待しているが、誰が出てくれるのかな。誰が出ても凄いものが見れそうだ」


 フォウを見ると、そっぽを向いていた。


「明日もニナだ。今日の試合で消耗もしていないからな」

「なるほど、了解した。ではそのようにお願いする。それでは報酬を受け取ってくれたまえ」


 金貨十枚を受け取ると、ニナにはそれがお肉に見えるらしい。「おにくおにく」と目を輝かせていた。

 よしよし、たらふく食べさせてやろう。


「では明日も同じ時間にお願いする。今日はありがとう。助かったよ」


 シャランに見送られ、俺たちは事務室を後にする。

 今日は宿の食堂ではなくて、外で夕食をとろう。


「さあニナ、肉でも食いに行こうか」

「はいなの!」


 ニナはひとつ目を齧ってはいたが、不味くて飲み込めなかったらしい。

 フォウが予め不味いと言っていたのに、自分で確かめるまで信じていなかったようだ。


 俺たちは夜の街に繰り出す。




 王都の夜の街は、昼間とはまた違う様相を呈していた。

 魔力が籠められた街路灯はぼんやりと光を灯し、酒に酔った者もちらほらと見受けられる。

 

 田舎の町だと夜などはすぐに、人影もまばらになるが、王都の街は昼も夜も賑わいを途切らせないらしい。

 道ゆく女性も、既に季節は夏という事もあり、その服装は夜でも軽い。


「アランおにく」

「わかっている。今良さそうな店を探している所だ」

「毎日お肉を食べているような気がするのは、気のせいでしょうか」

「……」


 確かに飽きてはいるが、今日は特別だ。特に良い肉を食わせてやろうと思い、それなりの店を探す。

 そのうち一軒の豪奢な佇まいの店を発見した。


「よし、ここにしよう。入るぞ」


 入ればかなり凝った店内で、壁には様々な動物の頭部の剥製ハンティングトロフィーが、これでもかと展示されていた。

 入り口で待ち受けていた黒服の男が、すぐに寄ってきた。


「いらっしゃいませ。当店は初めてでございますか?」

「ああ」

「それでは簡単にご説明させていただきます。当店ではすべて個室の席となっております。個室はABCとございます。Aは金貨一枚、Bは銀貨五十枚、Cは銀貨二十枚となっておりまして――」


 説明によると、A~Cとは個室の質、給仕者の人数とその質、そして接客と応対とその質のことらしい。

 提供される料理やそれを作るシェフ、その他給仕に関するすべてのサービスの質に関わってくるようだ。

 席に着くだけで金貨一枚とは、とんでもない高級店だった。だが問題はない。――金ならある。


「じゃあAで。金ならある」

「かしこまりました。それではご案内いたします。こちらへどうぞ」

「アラン……」

「いや、今日だけだからフォウ。今日だけ」


 店内のかなり奥まった場所に通されると、デカい扉の前で立ち止る。すでに扉からして豪華だ。


「それではお客様。お席代として金貨一枚を前金でお願いいたします」

「ほい」


 金を渡すと黒服は畏まり、扉を開けてくれた。


「なんだこりゃ」


 中はどこの王族の部屋か、と思わせるような絢爛豪華さだ。

 絨毯がもうフカフカだ。壁に掛かっている絵画がどう見ても安物に見えない。

 長方形のテーブルにはキャンドルが厳かに辺りを照らしている。

 微かに良い香りも漂ってくる。


 どこからともなく現れたメイドが五人、俺たちを席に案内して椅子を引いてくれた。

 一人につき一人のメイド、そして一人は待機だ。誰もが皆美人だった。


「それではごゆっくり御寛ぎくださいませ」


 黒服は一礼すると下がって行った。メイドたちは俺らの傍らにそれぞれ付いている。


「いらっしゃいませご主人様。本日の給仕を担当させていただきますトーニャと申します。ただいまメニューをお持ちいたしますので、しばらくお待ちくださいませ」


 待つ事もなく、待機していたメイドの一人がメニューを持ってきた。

 美しい姿勢とその恭しい様は、完璧な教育を受けてきたに違いない。


 やばい。……緊張してきた。

 なんだかとても場違いな気がしてきた。

 俺のような庶民以下の身分の者が、来ていい所ではなかった。

 頭が白く霞がかっていく感じがする。


 ぼんやりとした頭で俺は何を頼んだのか覚えていない。

 メニューの料理の金額はすべて『時価』と書かれていた。

 眩暈もしてきた。

 何かとても豪華な食事が、コースで出されたような気がするが食べた気がしない。




「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」


 気付くと俺たちは店の外――夜の街に出ていた。

 夢でも見ていた気がする。


「アラン……アランしっかりしてください」

「ん? おお」


 ぼんやりとする俺に、フォウはずっと話しかけていたらしい。


「おなかいっぱいなのー」


 ニナは満足していた。何を食ったのだろう。本当に覚えていなかった。


「アラン、金貨五枚も使って良かったんですか? 無駄遣いしすぎです」

「ごちそう……さま……でした」


 そんなに払ったのか。……全く覚えていない。


「ま、まあ今日だけだ。……ニナのご褒美だからな」


 金貨五枚だと? ニナの報酬の半分を使ってしまったのか。……ちょっと使いすぎだな。

 もう調子に乗らないようにしよう。だいたいそんな大金使って食事して、記憶にないとかありえない。

 

 俺には身分不相応過ぎた。あの店には二度と近寄らないようにしよう。

 俺は少し……いや深く反省した。


 だが……金ならある。




  

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