44・王都
鬼を退治してから二日後に、やっと到着した。――王都だ。
村と違ってしっかりと門を構えており、検問所も設けてある。
俺と天使たちはギルドカードで身分を証明できるが、サーラはどうなのだろう。
冒険者ではないはずだ。検問を通る直前でその事をサーラに聞こうとしたら、検問所の係官がサーラの馬車を見て――
「これは! ゴウランド様の魔法紋ではございませんか! ささ、どうぞお通りください!」
――無条件で通された。
なるほど、神様が融通をきかせてくれたのだなと納得した。
そりゃ天使付きとはいえ魔力なしを二人も送るのだから、なにかしら不都合もあるだろう。
こういう時のための馬車を用意してくれたという事だ。
サーラもほっとした顔をしていた。
よし観光だ。……いや、その前に宿でもとるか。
俺はフォグナーから、護衛報酬の金貨二十枚を受け取って別れた。
それに加えて巨人討伐で金貨十枚だ。すごい大金持ちになった気分だ。
馬車も買う必要もなくなったので、しばらく遊んで暮らせるほどなのだ。
「どこかで宿を探そう。どうせならいい宿……」
言いながらフォウと目があったので言い直す。
「普通の宿でいいだろう。節約しないとな!」
節約するとは言っても、王都のような街中でフォウの魔法を見せびらかすわけにもいかない。
本当なら袖口ポケットからテントでも出してもらった方が金はかからないが、大丈夫……金ならある。
俺たちは検問所に隣接された案内所で、比較的普通の宿を紹介してもらった。
普通の宿とはいえそこは王都。着いて見れば、そこそこいい宿だった。
宿屋に馬車を預け部屋を確認すると、俺たちは街に繰り出した。
「おにく?」
「ニナ、肉もいいがせっかくの王都だ。いろんな物食ってみようや」
「はいなの!」
「あそこに屋台がありますよ」
人の多い街並みに溶け込むように、数々の屋台も出ていた。
野菜もあれば果物もある。もちろん肉だってなんでもあった。
その中でいい匂いをさせている串焼肉の屋台に、ニナが引き寄せられていたが、俺は果物を売っている店で、赤くて丸い果物を買って皆にわけた。シャキシャキとした食感でジューシーで甘くて美味い。
すぐに串焼肉も買わされたが、何を食っても美味く感じる。
「外で立ち食いもいいもんだな」
「なの」
「そうですね」
「おいしい……です」
サーラも満足のようだ。
さて、どこか見る所はないかと周りを見渡すと、ひときわ大きな建物が目に入る。
「あそこへ行ってみよう」
近付くにつれて人の波も大きくなっていった。かなりの人が集まっているようだ。
建物は闘技場だった。中はかなり騒がしい。
なにか催し物でもやっているのだろうか。……少し覗いてみよう。
入り口で入場料として、一人につき銀貨一枚を払わされた。
沢山の人でごった返していたが、なんとか闘技場の中央を見下ろせる場所に出ると、そこでは人と魔獣が戦っていた。
「ただのウルフですね」
フォウから見たらウルフなど、そこらの犬ころ程度の扱いなのだろう。
だが闘技場の観客たちは大層盛り上がっていた。戦っている戦闘士も必死な様子だ。
意外な事にサーラでさえ、なんだという感じで興味もなさそうだった。
ニナにいたっては見てもいない。
「まぁそんな事言うな。戦ってる方は必死みたいだぞ」
戦闘士は息も絶え絶えに、なんとかウルフを仕留めたようだ。観客の声援も一際大きくなった。
まぁ俺としても普段天使たちのおかげで、大物との立ち回りを見せてもらっているからな。
ウルフくらいでは何も感じなくなっていた。
支払った入場料が頭にチラついたが、――俺たちは早々に闘技場を出る事にした。
「そこの君たち、ちょっといいかい?」
俺たちの事か? よく分からずに振り向くとそこには――
「少しだけ話を聞いてもらえないだろうか?」
――立派な鎧を着こんだ女騎士が、俺に向かって微笑んでいた。




