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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第4章 王都編~道中~
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42・サーラ 鬼2

 突然揺れたような気がしました。いえ、気のせいではありません。

 その証拠に天使様お二人は飛び出していきました。わたしも慌ててお湯から出て服を着ます。

 

 濡れた肌のままなので、なかなか思うように着れませんでした。

 お二人は裸のまま表に出てしまって、アラン様に叱られています。


 旅の責任者の方がやってきて、ひとつ目が目撃されたとアラン様に伝えていました。

 ひとつ目。わたしはそれを知っています。巨人の怪物です。鬼とも呼ばれます。


 実は以前、お婆様がわたしの魔法の出来を見るために、その巨人とわたしを戦わせた事があるのです。

 その結果わたしはちょっとやり過ぎたようで、巨人の村を壊滅させてしまいました。

 

 ひとつ目の巨人は百体は居たでしょうか。戦っているうちに、わたしは巨人の弱点を知りました。

 そのおかげで楽に倒せる事が出来たのです。


 旅の責任者の方は、村長に相談するために駆けて行きました。

 ああ、天使様たちが巨人へ向かうようです。弱点を教えて差し上げなければいけません。

 もしくはわたしも参戦させていただけたらと思い、大魔導師の杖を解き、手に持ってアラン様に訴えようとしましたが――


「お前は俺と居るんだ。危ない目に遭う必要はない。あいつらの事は大丈夫だから心配するな」


 ――と言われてしまいました。どうしましょう。まだ弱点も伝えていません。

 わたしはなんとか言葉にしようと努力しましたが、男性の前ではなかなか口が開けません。

 アラン様にはこれでも、慣れた方だと思っていました。


「で、でも……」


 これが精いっぱいでした。言えないもどかしさに体をぷるぷるさせていますと、アラン様は憐れな者を見るような視線を送ってきます。

 

 はい。わたしはアラン様がたぶん思われているような愚か者です。

 言いたい事も伝えられない、未熟者です。自分で自分が悲しくなります。


 そうこうしていると責任者の方が戻ってきて、アラン様と報酬のお話を始めてしまいました。

 天使様二人はあっという間に駆けて行きます。取り残されたわたしは成すすべもなく立ち尽くすのみです。


 アラン様が天使様たちに倒すように叫んだ時、わたしは初級の魔法でもある強化魔法で、視力を強化してお二人の姿を求めました。


 わたしのそれまでの憂いはすべて杞憂でした。

 なぜならフォウ様が空中に飛び上がり、巨人の巨大な目を殴っている姿が見えたからです。


 そうです。巨人の弱点はその巨大な目にありました。フォウ様はそれを知っていたのでしょうか。

 いえ、先ほどまでの会話ですと、詳しい事は知らないようでした。

 因みにその会話で出た巨人の村の壊滅は、わたしの事だと思います。


 でもさすがは青き天使様、わたしごときの助言など必要もない事でした。

 巨人はその一撃で地に倒れてしまいました。

 ニナ様はやる事もなくなっておろおろしています。とても可愛らしいです。




  

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