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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第4章 王都編~道中~
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41・サーラ 鬼1

 わたし、告白します。

 わたし、寝不足です。


 毎晩フォウ様と、寝台をご一緒させていただいてます。

 憧れの天使様と一緒に寝ているという事で、緊張してしまってなかなか寝付けません。

 それどころか、昼間の移動もニナ様が御者台に上がる時は、ずっとずっと一緒に居る事が出来るのです。

 幸せすぎです。


 なんでしょう。このまま天国へ行けとでも言うのでしょうか。

 ――確かに天使様が導いてくれそうです。


 寝る時、わたしが遠慮がちにベッドの隅に縮こまっていると、フォウ様が落ちてしまうからと、抱き寄せてくれます。ああ……こんな至福、味わった事などありません。


 フォウ様が密着している状態で、わたしはさらに固まってしまいます。

 だってだって……フォウ様の良い匂いと柔らかい肌が、とても心地いいのですもの。

 

 この世のものとは思えない快感に、身も心も震えてしまいます。

 やはり、わたしは天国に行きそうです。


 そして今日、わたしはフォウ様のあられもないお姿を拝む事と相成りまして、……あ、鼻血が。

 ……温泉に一緒に入る事になってしまったのです。

 

 馬車の裏手に、他の馬車からも見えない場所に、温泉が作られてありました。

 フォウ様の手作りです。


 アラン様が化学魔法と言っていました。

 わたしは愕然としました。


「化学……魔法……」


 つい言葉に出ました。

 わたしはお婆様という偉大なる師の元で、ありとあらゆる魔法を教わってきました。

 そのおかげで、その言葉は知ってはいます。

 けれどこの、魔法こそが全てという世界において、化学という単語を話す人がいったい何人居る事でしょう。

 知らない人がほとんどだと思います。


 ある物質と物質を掛け合わせて、違う物質を作り出す。そういった研究もあるにはあります。

 ですが似たような実験は魔法で済んでしまうのです。それを『魔法錬金』とも言いますが、何と何をどうすればという部分が知られていないだけなのです。


 例えば今目の前にあるこの温泉の成分を、知っている人はどれだけ居るでしょう。

 知らなければ作る事はできません。ですが知ってさえいれば、魔法で作れてしまうのです。

 その知るという部分こそが化学、或いは科学というものの真骨頂だと思われます。


 もし科学というものが発達したとしたら、そのあたりの曖昧であった部分もすべて、解明されていく事でしょう。

 ですがこの世界では魔法が全てです。師から弟子へと伝わるものは科学や化学と違い、曖昧なものなのです。

 

 師が違えば、伝わる魔法は同じようでも、全く違うものなのです。

 科学はそれをまったく同じに生産する技術を、もたらすものなのだと思います。


 お婆様は人はいずれ空をも飛べるようになる、でもそれは科学なのか魔法なのかは分からない、とおっしゃいました。




 アラン様は馬車で待つようです。男性と一緒に入らないで済んでよかったと思いました。

 人前で裸になる事などなかったわたしに、いきなり男性の前でそれは無理な話です。

 死にます。確実に死ねます。――恥辱死する自信があります。

 

 ですが天使様となら大丈夫な気がします。

 見ればすでにお二人は裸になって、温泉に入ってしまわれました。


 わたしは少し躊躇いつつ服を脱ぎ、天使様とご一緒させていただきました。


 フォウ様は肩までお湯に浸かり、気持ちよさそうに目を閉じています。

 確かにとても気持ちがよくて、ふわぁとした気持ちになりますが、わたしはフォウ様に見惚れるばかりでした。

 濡れた髪、上気した頬、透き通る肌、……あ、鼻血が。

 ニナ様は仰向けにぷかぷか浮いて、おにくーと呟いています。とても可愛らしいです。





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