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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第3章 めぐりあい編~サーラ~
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36・サーラ アランとの出会い2

 まずは男性がアラン様なのか確認です。


「あ……あの……」

「なんだい? お嬢さん」


 間髪入れずにこの男性は聞いてきます。

 早いです。

 わたし、まだ何も言っていません。

 こんなに早い受け答えなど、わたしには無理です。

 早くも挫折しかけているわたしでしたが、回復魔法を施していた可愛らしい女性が、割って入ってきました。


「アランと同じ匂いなの」

「え……」


 同じとはどういう事なのでしょう。

 この方がアラン様だとしたら、いえ今確かにアランと聞こえましたが、同じマイナスの……という事でしょうか。

 このもう一人の天使様は、それが分かるというのでしょうか。


「あの……わたし……さ、サーラと……もうし……ます」


 何とか勇気を振り絞って、わたしは挨拶をします。

 言い訳をさせてもらいますと、だいたいわたしは男性というものは、あの洞窟のおじいさんしか知らないのです。

 若い男性は初めてです。緊張しないわけがありません。

 しかも麗しの天使様がわたしを見ているのです。もうパニック寸前なのです。


 やはり男性はアラン様でした。

 それと青き天使様がフォウ様。

 おにくの天使様がニナ様。という事がわかりました。

 そしてアラン様はいきなり、「魔力なしか?」 と聞いてくるのです。


 はばかる事なく言葉にするそれは、少し驚きましたが、わたしは正直に、マイナスの生まれだと答えます。


 アラン様は大変驚かれました。

 わたしは何から伝えたらいいのか分からず、あの……とか、その……とか言い淀んでいると、アラン様はハッとした顔をして、何やら確信めいた事を言い出しました。

 ――号泣しながら。


 ビックリしました。

 苦労しただろうとか、わたしの事が分かるとか、いったいどうしたのでしょう。


 確かにお婆様との魔法の修行は苦労しました。

 付いていくのに精いっぱいでした。

 ですが魔法が成功する度に笑顔になるお婆様と、一緒に行った修行は大変楽しい思い出です。

 思えばこれまで、随分と幸せな暮らしでした。


 わたしは忌み子として捨てられましたが、お婆様が例の水晶玉でわたしを感知したらしく、すぐに引き取りに来られたようです。それからはずっとお婆様と暮らしています。


 もの心ついた時にはお婆様のおかげで、数々の魔法を習得していました。

 魔法が使えるという事が、当たり前のように思っていましたが、ある時お婆様が、たくさんの事を教えてくれました。


 わたしは生まれた時は、魔力がマイナスの値だった事。

 でもお婆様がそれを大魔法によって、半分は取り戻してくれた事。

 そしてそれは、勇者様をも凌ぐチカラだという事。

 ――等々。

 

 勇者様よりも強いと聞かされて、怖い感じもしましたが、お婆様はこの土地から出なければ、怖い思いもせずに済むとおっしゃいました。

 わたしはその通りにして、お婆様の土地でずっと過ごしました。


 お婆様は誰もが認める大魔法使いで、その魔法の習得や修練のために、広大な土地を国から与えられて所有しているのです。国が認めた大魔法使いなのです。

 わたしはその土地でお婆様と一緒にずっと、魔法の研究に勤しんで来たのです。


 お婆様の元を離れてそんなに経っていないのに、少しホームシックです。

 早く帰ってお婆様の笑顔が見たいです。


 ちょっと思い出に浸ってしまって、アラン様の言葉を聞いていなかったようです。

 気付くと、わたしを馬鹿にするやつが居たら許さないと聞こえました。

 まだ号泣しています。


 ここでふと、わたしはアラン様はご自分の生い立ちを思い出して、泣いているのだと思い至りました。

 断片的に聞こえた、魔力なしとか人間不信とかの言葉がそれを物語っています。マイナス値の出自たるわたしに会った事によって、アラン様のこれまでの辛酸が思い起こされてしまったのでしょう。

 わたしのせいで……。


 同じ魔力なしの忌み子だったとしても、わたしのこれまでの暮らしはとても贅沢なものでした。

 なに不自由なく生きてこられました。

 それもお婆様のおかげですが、もしお婆様が拾って下さらなかったら、わたしはどうなっていたのか想像もつきません。

 アラン様はその想像もつかない、辛い経験をされてきたのでしょう。

 わたしは申し訳なさでいっぱいになり、アラン様のご苦労を慮るとお気の毒で……。


 気づくとわたしは涙を流していました。

 そしてわたしを馬鹿にするやつは許さないと言ってくれた事に対してお礼を述べると、アラン様はまた、深く思慮の泉へと潜って行ってしまわれました。

 本当にわたしのせいで……嫌な事を思い出してしまわれたのですね。


 わたしはどうすればいいのでしょう。

 アラン様は、あんな事……こんな事……と、何やらぶつぶつ言っています。




 商人風の男性の作業が終わったらしく、出発の準備を始めていました。

 わたしはアラン様に、わたしの馬車にご同乗していただこうと提案すると、快く承諾してくれました。


 後は馬車の中で、詳しくお話しが出来ればいいと思います。

 アラン様も悪い人ではなさそうですし、何よりも青き天使様とご一緒出来るなんて、なんて素敵な事でしょう!




   

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