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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第3章 めぐりあい編~サーラ~
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34・合流

「アランと同じ匂いなの」

「え?」

「え……」


 ニナが割って入ってきた。同じ匂い? ――それってまさか。


「お前さんまさか……」

「えと……えと……」


 さっきから会話になってねぇ。


「あの……わたし……さ、サーラと……もうし……ます」


 消え入りそうな声で、やっと挨拶してきた。


「そうか。俺はアランだ。よろしくな。隣のこいつがニナで、こっちがフォウだ。で、あんたもしかして……魔力なしか? それも普通じゃないやつ」


 俺はストレートに聞いてみた。ニナが同じだと言うのなら、それしか思いつかない。


「あ……は、はい……わたし……マイナス値の……生まれ、です」

「やっぱりそうか! すごいな、俺以外にも居ただなんて。いったいどういう事だ?」

「あ……あの……」

「うんうん」

「わ……わたし……」

「はいはい」

「その……」

「……」


 会話が続かねぇ。

 ちょとイラッとしてしまった。――だが。


 その時ふと、今までの自分の境遇が思い起こされた。




 それは悲惨な人生だった。信じられる者など誰も居らず、魔力なしと蔑まれ続けた人生だ。

 この子は俺と同じだ。同じ……魔力なしだ。


 きっと俺と同じように、これまで生きてきたに違いない。

 しかも女の子という事で俺とはまた違った、もっともっと悲惨な人生を歩んだに違いない。

 俺はこの子の事が分かってしまった。……俺だからこそ分かってしまったのだ。


 そう思ったら、俺は既に泣いていた。


「う、うぉぉぉぉ! ああああうぅお前さん……これまで苦労したんだろうなぁ……うぅぅ分かる! 分かるぞ俺には! うひっうぅぅそうか……。そ、そ、それでそんなに人間不信になっちまったか……。分かる! 俺には分かっちまうんだうううおおお……辛かったろう? 苦しかったろう? うおぉぉうひっく俺には分かるんだよぉぉぉぉ。ひっくぅぅぅそれにその……背中の杖……わ、分かるぞぉぉうううぅ魔力なしはさぁ……ひっく。憧れちまうんだよなぁ! ううぅぅぅ。魔力がないからこそさぁ! け、け、け、決して……使えなくてもさぁ……あ、憧れてそういうもん持ったり……ううう。しちまうんだよなぁぁうおぉんおんおん」

「アラン、その杖……普通じゃ……」


 フォウが何か言おうとしていたが、号泣している俺には聞こえない。


「こ、これまで何があったかは聞かない。うおぉぉお、俺には分かるからなあああ……ううううだから俺はぁぁお、お、前の事をぉぉ……サーラと呼んでいいか? サーラの事をうぉぉぜ、絶対に馬鹿にしないいうっうっううう絶対にだ! うう……さ、さ、サーラの事を馬鹿にするやつが居たらぁぁぁ俺は絶対にぃぃぃそ、そいつを許さないぞぉぉぉ! うううぅぅぅ……ひーんひんひん」

「あ……ありがとう……ございま……す」


 見ればサーラも涙を流している。

 きっとこれまでの事を思い出してしまったに違いない。


 さっきまでサーラのその挙動不審でハッキリしない態度に、イラついていた自分が恥ずかしかった。許せなかった。

 こいつはこうなりたくて、なったわけじゃないんだよ!


 辛くて苦しい生き方を余儀なくされて、人と接する事を極度に恐れて、それでもまだ生きていかなくてはならなくて。きっと若い女という事で、女として嫌な事もされてきたに違いない。あんな事やこんな事もだ! 許せねぇ。そいつらを殺してやりたい。あんな事やこんな事をやらかした連中に天罰を下したい。そしてその気持ちはこのサーラもずっと持っていることだろう。魔力なしという事で、絶対的弱者のレッテルを張られた俺たちの人生なんて、ゴミ以下なのだ。


 そんな同じ境遇の者が俺の目の前に居る。守ってやらなくては!

 どういう経緯でここに居るのかは分からないが、追って聞くとしてとりあえず俺はこのサーラと離れてはいけないという強迫観念に囚われた。

 絶対に守ってやるのだ。あんな事やこんな事を迫る悪魔から守るために!

 

「あんな事……こんな事……」


 ぶつぶつ言っていると――サーラが何やら一生懸命に伝えようとしてくる。


「あの……詳しくは……あの……馬車で……その……一緒に」


 彼女の話をまとめると、詳しい話は馬車の中でするので同行させてくれ。と、いう事だろう。


「分かった。それであの馬車はサーラのか? 俺たちが一緒に乗っていいのかい?」

「はい……おねがい……しま……す」

「よし。ちょっと待っててくれ」


 俺はフォグナーの元へ行き、護衛は引き受けるがサーラの馬車に乗り換える旨を伝えた。


 サーラの馬車の御者台にはフォウが座り、後ろの荷台部分に残りの三人が乗りこんだ。

 幌付きの立派な馬車だった。幌の支柱となる部分に、魔女と杖を表した紋章が刻まれていた。

 この馬車を作ったメーカーのエンブレムだろうか。


 俺はサーラという、この世界で一番か弱いであろう少女と、行動を共にする事にしたのだ。




   

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