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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第3章 めぐりあい編~サーラ~
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33・匂い

「おにくーおにくー」


 巨大な肉が天に召された事で、ショックを隠せないニナは俺の治療を忘れていた。


「ちょ、ニナさんまだ治療終わってないよね? お願いだから早くして! 死んじゃうから! 俺死んじゃうから!」

「だって……おにくが……なの」

「今度いくらでも食わせてあげるから! なんでも買ってやるから! フォウもなんか言ってやって!」


 涼しい顔で戻ったフォウは言う。


「ごめんなさいニナ、つい。……今度から消滅魔法は控えます」

「それはいいから! ニナ早くしろぉ!」


 ニナはおにくおにく言いながら、やっと俺の足を治してくれた。


「死ぬかと思ったぁ~」

「アランはちょっと大袈裟です」

「なの」

「いやお前らこんな傷、負った事ないだろ! 絶対ないだろ! まじめに死ぬかと思ったんだぞ!」

「アランの雑魚っぷりが健在で安心しました」

「なの」


 なんかちょっと酷い言われようだが。

 ダメだこいつら。

 俺の気持ちを分かってくれない。




「旅の方、大丈夫でしたか? 私は今回の旅の責任者でフォグナーと申します。お怪我は?」


 責任者を名乗る男が挨拶してきた。

 八つ当たりしてやろうかと思ったが、とりあえず怪我は完治したからいいか。


「俺たちは大丈夫だが、護衛のやつらは残念だったな」

「はい。高ランクのパーティーを護衛として雇ったのですが、運がありませんでした」


 それは仕方がない。あんな化物が出てきてしまったんだ。

 ニナとフォウが居なかったら全滅していただろう。


「フォウ、あいつは何だったんだ? 変異体と言っていたが」

「はい。稀に魔獣が原因不明の変異を遂げる事があります。進化するとも言います。その時の魔獣の強さは数倍にもなると言われていて、その特異例をわたくしたちは目にしたのだと思います」


 本当に運がなかったんだな。そんなものと遭遇するなんて。


「あの、助けていただき本当にありがとうございました。それで、その。この先の道程の事でご相談がございます」


 商人風の責任者は言う。


「よろしければこの先の護衛を引き受けていただけないでしょうか、もちろん報酬ははずませていただきます。どうでしょう」


 ほぅ。どうせ馬車に乗せてもらっている身だ。

 何かあれば、どのみち自分らで身を守らなければならない。

 それで報酬が付いてくるというのなら、引き受けない手はないだろう。


「報酬は高いぞ? なにせ俺たちはAランクパーティーの『エンジェル』だ」

「おおっこれはこれは! Aランクパーティー様でしたか! 道理であの巨大な魔物をたやすく……もちろんですとも! さきほど全滅してしまったBランクパーティーの倍はお支払いしますとも。是非お引き受けいただきたい!」


 俺はフォウにギルドカードを提示するように言った。

 俺のカードはDランクだからな。


 フォウのカードを確認したフォグナーは――


「確かにAランク! すばらしい! Aランクなんて初めて見ましたよ。では報酬は……ごにょごにょごにょ」


 ――後半は俺に耳打ちする。

 なになに、報酬は金貨二十枚ですと? そんなにくれるの?

 まぁ確かに命には代えられないし、道のりもまだ三分の一だ。


「ふ。Aランクの依頼としてはどうかと思うが、どうせ行く先は同じだ。よかろう、引き受けようじゃないか」

「ははっありがとうございます! Aランク様!」

「お前らもそれでいいな? 魔物が来たらやっつけるだけの簡単なお仕事だ」


 両隣の天使たちに確認するとニナは、「おにくー」とまだ未練を残したままでフォウは、『またこいつは』と言いたげな目が冷ややかだった。


「では私は護衛たちの遺体を処理する作業がありますのでこれで。その間は休憩としますので、また後程。護衛の件はよろしくお願いいたします」


 フォグナーはそう言うと去っていったが、入れ替わりに一人の少女が近づいてきた。


「あ……あの……」

「なんだい? お嬢さん」


 いかにも魔法使いですみたいなローブに、背中のロッドらしき長ものが目に入る。

 明るい茶色の髪を肩まで伸ばし、顔だちは可愛いがその目は脅えている。

 フォウより少し年上くらいだろうか。


 するとニナが身を乗り出し、少女に鼻を近づけた。


「アランと同じ匂いなの」


 ニナが爆弾を投下した。




  

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