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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第3章 めぐりあい編~サーラ~
28/105

27・サーラ

「サーラよ、ここに来るのじゃ」


 わたしの師匠でもあり育ての親でもある、大魔法使いのゴウランドお婆様が呼んでいます。


「はい、お婆様。すぐに……」


 お婆様は目の前の巨大な水晶玉を見つめながら、何やら難しい顔をしています。

 その水晶玉は世界に三つしかないと言われる、大竜の心臓と呼ばれる大変貴重な宝具です。


「西の洞窟にお前と同じチカラの反応が出た。洞窟に住まうじじいのモノではない。誰かがじじいを訪れ、それがお前と同じチカラを持つ者であることは間違いあるまい」

「わたしと……おなじ……」

「そうじゃお前さんと同じ、負のチカラじゃ」


 負のチカラとは、わたしが生まれながらにして持っていたものです。そしてそれは、本来チカラとは呼べないものでした。賢者の石による反応は、マイナスの値として表示されます。


「じじいになにやら吹き込まれたかもしれんな。天使を二匹も連れておるのがその証拠じゃ」

「天使様を二人も……ですか……」

「じじいにあのチカラを解放する事は出来ないはずじゃ。だが何かを知っていた可能性はあったかもしれんの。そのための天使か。いやそれ以前にこの時代にサーラ以外にも負のチカラの持ち主がおった事も驚きじゃ」


 お婆様は少し思案に耽ると、思い切った面持ちでわたしに告げます。


「サーラよ、お前さんのチカラはワシの本気を持ってしても半分しか取り戻せんかった。だがそれでも現存の勇者なんかよりよっぽど強いチカラじゃ。しかしお前に眠るそのすべてのチカラを取り戻す事が出来たのなら、この世界をも変えるチカラとなるだろうよ。ワシはな、サーラよ、そのチカラを見たいのじゃ。世界が変わる程のチカラを生きているうちに見てみたいのじゃ。どうじゃ、サーラ、お前さん……旅に出る気はないかえ?」


 お婆様はとんでもない事をおっしゃいます。

 わたしは今のままで充分なのに、これ以上は望まないのに、さらに上を目指さないかと言うのです。


 わたしはマイナス値の卑しい忌み子の生まれですが、偉大なる大魔法使いのお婆様に拾われて、そのお力によって生きる術を与えてもらいました。

 マイナスの値の半分が使えるようになったのです。

 そしてお婆様に数々の魔法を授かりました。

 平均的な魔力値の魔法使いでは一生かかっても覚える事が出来ないであろう大魔法も、いくつも教えていただいて身につけました。そんなわたしがこれ以上何を望むというのでしょう。


 ですがわたしには、お婆様に返しても返しきれないご恩があります。


「わかりました……お婆様。わたしに出来る事でお婆様がそれを求めるのでしたら……わたしは喜んでそれを成し遂げてまいります。これからどうすればいいか……教えてくださいお婆様……」


 わたしは心の迷いを振り払うようにして告げました。


「よく言った。サーラよ。いいかよく聞け。西の洞窟へ赴いてじじいに会うのじゃ。そこで思ったような話が聞けなかったら、すぐに帰ってきてもよい。じゃがお前さんのチカラに関して、前向きなものが聞けたのならそのまま旅に出るがよい。いいか、あくまでもお前さんのチカラの全開放が目的じゃ。それが叶わぬと言うのであれば引き返し、少しでも可能性があればそれを成すべく動け。とりあえずそこのじじいが何か知っておるはずじゃ」


 わたしはこの日、十七歳を迎えました。

 捨てられていたわたしに、お婆様が決めてくださった誕生日です。

 

 それがお婆様の元を離れ、遠く旅立つ事を決心する日になるとは、夢にも思っていませんでした。

 正直、不安しかありません。でも、わたしにお婆様のために出来る事があるかもしれないという事が少し、勇気を与えてくれます。

 

 頑張ろう……お婆様でさえ出来なかった、わたしのチカラの開放の謎を解き、そしてここへ帰ってこよう。

 わたしは目を閉じ、胸に手を当て、心に誓うのでした。




   

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