表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第2章 めぐりあい編~フォウ~
24/105

23・オグル討伐

 東へ二時間ほどの森に着くと、ギルドで聞いた発見場所を探す。

 その付近には発見した村人が、木の幹に目印となる印を刻んでいるはずだ。

 目を凝らして探していると、ニナが何かを感じたらしい。


「あっちになにか居るなの」

「大きな気配がありますね」


 フォウも同意した。こいつら魔力感知でもあるのだろうか。俺には何も見えないし、何も感じない。

 しかし同時に木の幹の×印を見つける。


「よし気を付けて進もう」


 ニナの言う方角へ進むとやがて、その巨体が見えてくる。


「居たぞオグルだ。間違いない。でかいな」


 その巨体は三メートルほどもあった。武器こそ持ってはいなかったが、その拳で殴られようものなら俺は瞬殺される自信がある。


 俺は二人に先を譲る。

 敵を目の前にしたら、出しゃばらない事にしたのだ。

 盗賊の村で懲りたからな。


「よし準備はいいか? 倒し方はお前らに任せる。俺は後方待機だ。いいな、無理はするなよ」

「はいなの」

「了解しました。行ってきます」

「よし。では、やっておしまい!」


 二人は打ち合わせも何もせずに、オグルに向かって飛び出して行く。

 と、思った瞬間にはオグルの両目に矢が刺さっていた。――いつの間にかフォウの手には弓矢があった。

 同時に二本射出して一瞬のうちに両目を射抜いたらしい。神技とも言えるスキルだ。

 その直後にニナの魔法が炸裂する。


「うーーやーー」


 可愛らしくも気の抜けた掛け声とともに、その両手から一陣の鋭い風が放たれた。

 両目を射抜かれて、グォォと動きの止まったオグルにニナの放った風魔法は、オグルの両足をふとももから切り裂き、切断してしまう。さらに追い打ちとフォウが空中に舞い、オグルに迫る。

 いつ弓矢から剣に持ち替えたというのだろうか。手にした細身の剣は妖しい蒼と輝き、最初から持っていたと言わんばかりに、既に振りかぶっていた。


 その剣筋は目にも止まらぬ速さでオグルの首元を過ぎ去り、一筋のラインを赤く色付ける。

 時間差で首がずれ始めると、後は本体と別れを告げるのみだった。

 フォウの一連の動作はゆっくりとした動きに見えてその実、何も見えなかった。


 首が落ち両足をも失った巨体も、遅れて倒れた。

 この間、わずか三秒。……いや、三秒もかかっていないかもしれない。

 武器の持ち替えなども、まるで見えなかった。袖口ポケットなんだろうが、フォウはまだまだ武器を隠し持っていそうだ。


 俺は身震いした。いくらなんでも規格外だ。

 オグルのようなCランクの怪物なんて倒した事も立ち会った事も俺はない。ランクEの俺があるわけがないのだ。初めてのCランク魔物の討伐がこんなに簡単でいいのだろうか。


「いける……」


 この先どんな魔物が相手でもいけると思ってしまった。この二人の姿を前にしたら誰もがそう思うだろう。


 ニナとフォウは汗もかかず、何事もなかったかのように俺の元へと帰ってくる。


 おっと、まだ仕事は終わっていない。俺は無残な死体と化したオグルに近寄り、ギルドカードの裏面を翳す。するとカードが発光して討伐記録が登録された事を示した。


 この世界の生物は、生きている時と死んだ時ではオーラの種類が違う。

 カードはそれを判別して、絶命した魔物の種類さえも識別し登録するのだ。

 このオーラは死後一時間ほどで消えてしまうので、ずっと放置はしておけない。

 ちなみにカードの表が個人用、裏がパーティー用となる。

 俺が裏面で登録したので、ニナとフォウはこの作業をする必要はない。

 ギルドも便利なカードを、上手く作ったものだ。


「お前たち、打ち合わせもなくあんな連携が出来るのか。すごいな本当に」

「えへへーなの」

「ありがとうございます」


 その身は返り血も浴びていない。


 ニナが俺の左腕にしがみ付いてきたので、右手でその頭をなでてやると、嬉しそうにしていた。

 フォウにも同じ事をしてやろうかと見ると、わたくしニナよりお姉さんですからオーラを出していたので遠慮しておいた。


「食べる? たべるなの?」


 食欲旺盛なニナは、オグルを食べないのかと言う。


「せっかくだがこいつは肉が固くて味も不味いんだよ。もし食ったとしたら、口の中で一日中嫌な臭いが取れなくなるらしいぞ」


 食った事はないが、聞いた話を教えてやる。

 ニナはまだ諦めきれないのか、オグルをじっと睨んでいた。こいつなら美味そうに食うかもしれない。


 討伐した魔物は基本放置だ。いずれ他の魔物や動物たちが寄ってきて、食うなり突くなりしてそのうち消えてなくなる。

 武器や防具に使える部位を持っている魔物は限られるのだ。

 このオグルに使い道はない。


 二人に帰るぞと促して、踵を返したところで固まった。


 森の雰囲気が変わった。

 風が変わった。

 匂いが変わった。

 そして……何者かがこちらを窺っている。


「アラン、ゴブリンの群れです」

「ぶりんぶりんなの」


 ニナは踊っているが、俺たちは無数のゴブリンに囲まれていた。

 オグルの血の匂いに惹かれて集まってきたのだろうか。全貌は分からないが、かなりの数のようだ。


「多いな。……やれるか?」

「問題ありません」

「なの!」


 天使達のやる気に再度、森の空気が変わった。

 広がる安心感。

 払拭される恐怖。

 敵から伝わる動揺。

 そして……。


 天使たちの殺戮劇が始まった。




   

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ