20・ギルド
俺は意気揚々とギルドの扉を開く。二人の天使はあいかわらずキョロキョロと落ち着かないが、ギルドの中に入ったところで、やっと正面を向いた。――そして俺たちに集中する視線たち。
「おい、ゼロだ。ぷっ」
「本当だ。ゼロじゃないか。ぷっ」
「まだ冒険者やってるのか、Eランクだっけ? 憐れだなぁ。ぷぷぷ」
そんな声がまわりから聞こえたが無視だ。そう、俺はここではゼロと呼ばれていた。魔力ゼロのゼロだ。
俺の魔力なしはここでは周知の事実だった。それをやつらは好きに弄ってくる。
「よお! ゼロ! 久しぶりだな。生きてたか!」
知っている顔が近づいてきたが、俺はこいつが好きではない。他のやつらと同様に俺を弄っては笑いものにするのだ。ランクCのサガート。俺より五つも年下のくせにランクが上という事で態度がでかい。
「今日はどうしたんだ? お前の受けられる依頼はどうせないぞ? 天下のゼロさまの出来る仕事なんてどこにあるってんだよなぁ? お前らもそう思うだろ?」
「ちげぇねぇ! ワハハハハ」
「サガートか。言ってろ。俺はこれからパーティーを組むんだ。ちゃんと依頼を受けられるんだ。ほっといてくれ」
「へ? パーティー?」
ポカンとしたサガートが、俺の隣にいる二人の天使を見た。
「まさかゼロおめぇ、ここに居るガキとパーティー組むとか言うんじゃあるめぇな」
「ぶっははははは! 笑える! 天下のゼロさん! ホント笑わせてくれる!」
まわりも騒ぎだすが知ったことか。俺は無視して受付の窓口へ向かった。
「おいおいゼロよまじやめとけって、さすがにお前よりは強いかも知れねぇけど、よりによって子供を頼るとかないわぁ」
サガートはそう言いながら、つまらないと言う顔をして仲間の元へ戻っていった。
天使たちに手を出されなくてよかった。もしそうなったら、ただでは済まない所だったからな。
あいつが。
目の前のその子供はおそらくお前より強いんだぞ。
俺は心の中で呟いて、受付の女性に登録の申し込みを願い出た。
女性はアリナという名で、俺の事を馬鹿にしたことがない。真面目そうなギルド職員で、長い金髪が綺麗なお嬢さんだ。まぁ、心の中でどう思っているかは分からないけど。
「そちらの方の冒険者登録ですね。分かりました。では、あちらの部屋までお願いいたします」
登録には賢者の石を使って魔力値を測る。それによってランクが決まるのだが、これは一応個人情報で人に教えるものではない。別部屋にてギルド職員の立会いの下、行われるのだ。
ただ細かい数値は分からなくても、そのランクを知られれば、ある程度は想像できてしまうものだがな。
ランクはA~Fまであって、Aは魔力値が五千以上とも言われている。そして実際はAの上にランクSという特別な位が存在しているのだが、これはランクAである程度実績をあげた者しかなる事はできない。
こんな田舎町ではランクSどころか、Aさえ居ないはずだ。
討伐対象の魔物もC以下がほとんどだし、稀にB対象が出てもその時はギルド職員も参加する条件で、ランクCのパーティーが参加できるようになる。
ランクAや世界に数人しか居ないとされるランクSの冒険者は、王都にでも行けば会えるかもしれない。
とにかくこの田舎町ではランクBが居ればいい方で、それだけで田舎のギルドながら上質の冒険者を抱えている、と言えてしまうのだ。
アリナ嬢が案内する部屋へと俺たちは向かう。はたして天使の持つチカラに賢者の石は反応するのか、そしてその天使の魔力値とは如何ほどのものなのか、一抹の不安をよぎらせつつも、少なくない期待も同時に感じていた。




