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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第2章 めぐりあい編~フォウ~
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14・懲りないやつら


 木の影から数人の男たちが飛び出してきた。


「ひゃっほぉい! てめぇら! 金目のもの出しな! 女は生かしておいてやるがてめぇはダメだ、死んじゃいな!」


 男が剣を俺に向けながら言い放った。また盗賊か! しかも今日は十人は居る。昨日と違うグループなのだろうか。

 あにきと呼ばれた、ニナに腕を壊された男は居ない。

 だが取り巻きの中のひとりが、先頭の男になにやら叫びだした。


「かしら! かしら! そいつらやばいっす! 昨日アニキがやられちまったのはそいつらっす!」


 昨日のやつが居たらしい。かしらと呼んでいる。こいつが頭領か?

 体格も他のやつらと違ってデカくて強そうだ。


「なぁにぃ? ルグルのやつが世話になったみてぇだなぁ? そいつぁお礼をしとかねぇとなぁ?」

「かしら! ほんとにやばいっすよ! 特にそこの女が! 手も触れねえでみんなすっ飛ばされたっぶへぇ!」


 かしらと呼ばれた男は、そいつをぶん殴っていた。


「うるせぇ! お前らそれでやり返しもしないでぬけぬけと逃げてきたってか! よぉく見とけ! 俺様がこんなガキどもに負けるわけがねぇだろうが!」


 こいつ、死にたいらしい。そろそろ忠告してやろうか。

 俺は一歩前に出て、親切心で言ってやった。


「おいかしらとやら、逃げるなら今のうちだぞ。でないと命の保証はしてやれん」

「なぁに言ってんだてめぇ?」


 剣が向かってきてグサリと何処かに刺さった。


「え?」


 あれ? なんか痛い。


「うぎゃぁ! 足がぁ!」


 男の剣が俺の右のふとももに刺さっていた。

 やばいやばいやばい! 痛い痛い痛い!


「ちょまておまやめ! いててててて!」


 剣が抜かれると、勢いよく血が噴き出した。俺は尻餅をついて、男から離れようと必死になって後ずさりしていた。


 思い出しました。俺、戦闘力ゼロでした。いきがってすいません。偉そうな事言ってすいません。

 生まれてきてすいません。


「なんだぁ? こいつ。てんで弱っちいじゃねえか。 ひゃっはっは! お前ら! 昨日はこんなやつから逃げてきたってのかぁ? よく見ろ! 俺様の前で何もできねえぞ!」

「さ、さすがかしらっす! そいつ手も足も出なかったっすね!」


 フォウが俺を庇うように男との間に入った。


「おう? 今度はお嬢ちゃんが相手かぁ? 俺様は手加減できねぇぞお?」

「そうですね。これ以上アランを傷つけるのでしたら、わたくしがお相手いたしましょう」

「おう! 言ってくれるねぇ! それじゃあ俺様の取って置きの魔法を見せてやる! くらえ! ファイヤーだ!」

「おおおっ! かしらの大魔法が見れるぞ! かしらの大魔法をくらったらウルフだって逃げるんだぞ!」


 取り巻きが騒ぎ出す。すると、かしらはなにやら詠唱を唱えだした。


「ぶつぶつぶつぶつあぶへっ!」


 最後のは悲鳴である。


「敵を目の前に詠唱を始めるとか、馬鹿ですか」


 フォウの右拳が男の顔面にめり込んでいた。


「いてぇ! てめぇ! ちょっとまて! 今からひげぇ!」


 上背はニナよりちょっと高いくらいのフォウ。その鉄拳が、再び男の顔面に炸裂した。

 身長差があるのでいちいちジャンプしている。


「どうせなら俺が刺される前に、助けてくれよ!」


 俺はといえば、ニナの回復魔法でとっくに全快してしまっていた。

 もう出しゃばるのはやめて傍観しておこう。


「アランいたかった?」

「いやもう大丈夫だ。ありがとなニナ。お前の回復魔法はやっぱりすごいんだな」

「はいなの」

「ぶへぇ!」


 またしてもフォウの拳が炸裂したところだ。

 ジャンプして殴るたびに、その青い髪が舞い上がり、踊る。


「こ、このガキ! もう怒ったぞ! 俺様を怒らせたてめぇは終わだばぶひぃ!」


 何発目だろうか、フォウの繰り出した拳を防御しきれずに、男はその顔にめり込ませる。


「こ、こうなったら短縮詠唱でぷぎゃあ!」


 懲りずに詠唱を始めた男の顔面が陥没する。

 顔面は既に血まみれで、鼻は潰れ、口内の歯はすべて折られた事だろう。


「こ、こ、こ、こにょお!」


 ようやく魔法を諦めて、手に持っていた剣を振り上げた。――最初からそうすればよかったものを。

 だが振り下ろされたそれは、彼女に傷を負わす事は出来ない。

 フォウはその剣を小さな手で掴んで止めてしまったのだ。体はミリも動かず、衝撃のすべてを吸収した。


「ふぇ?」

「そろそろ終わりにしましょう」


 左手に剣を掴んだまま、右手を男に差し出して掌を開いた。ニナと同じ魔法を使うのかと思ったが違った。

 掌が赤く発光したと思った瞬間、激しい業火が噴き上げたのだ。――やはりフォウも無詠唱だった。


「ぎゃあぁぁぁぁぁ……」


 男の断末魔が森に響き渡った。彼女に容赦は無かった。

 ゴォォと男を包み込んだ業火はあっという間に、男をまる焦げにしてしまう。


 凄い。……魔法の杖すら使っていない。

 魔法の杖は必ずしも必要なものではないが、これほどの威力の魔法を使うとなれば、必須と言えるアイテムだ。

 しかもフォウは詠唱を必要としない。


 恐らく男が出そうとしたファイヤーなど、比べものにならないだろう。男のそれはウルフが逃げる程度のものらしいからな。


 まる焦げになった男は既に炭と化していた。

 骨まで残らず消し炭になるというのは、魔法の威力を測るうえでの指標となる。

 フォウはニナ同様、とんでもない魔力の持ち主だった。


 最初の殴打はなんだったというのか。遊んでいたとしか思えない結末だ。


「ひゃぁぁ! やっぱりやばいヤツだったぁ!」


 盗賊たちが逃げ出そうとしたので――


「ちょ待てやこらぁ!」


 ――先ほどの醜態など忘れた俺は、やつらに怒鳴った。


「お前らこのまま逃げれると思うなよ? この通りかしらは死んじまった! どういう事かわかるか? アアン?」


 数分前にもう出しゃばりませんと誓った事は無かったものにして、俺はどうするか考えた。

 このまま逃がしたら結局こいつらは同じ事を繰り返すかもしれない。ならフォウに頼んで全員殺すか? いや、もっといい方法が何かあるはずだ。


「とりあえずお前らのアジトに案内しろ。あるんだろ? お前らの拠点がアアン?」

「は、はいぃ。あ、案内するっす……」


 盗賊のひとりがブルブル震えて答えてくれた。案内してくれそうだ。


「じゃあ行くかアアン?」


 俺たちは盗賊どもの拠点へと向かう事にした。

 ここで何かしらの対策を講じないと、こいつらは同じ事をきっと繰り返す。

 もしどうにもならないと分かったら、その時はフォウさんの出番だ。もちろん俺は何もしない。


 俺の隣でフォウが冷ややかな視線を向けているようだが、気のせいだろう。

 うん。俺は気にしない。




   

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