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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第2章 めぐりあい編~フォウ~
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12・進むべき道

 フォウと呼ばれた少女は、ニナによく似た美少女だ。天使たちは皆、同じような顔立ちになるのだろうか。

 顔は似ていたが髪はブルーで肩まで伸ばし、横にふわりとふくらんでいる。瞳もブルー。

 ニナは薄いブルーだがフォウはもっと濃い色合いだ。

 ワンピースも青で、その上に黒い、袖口が大きく広がったタイプの長袖の上着を羽織っていた。


「はじめまして。フォウと申します」

「ああ、アランだ。よろしくな」

「ふつつか者ですが、よろしくお願い致します」


 俺に挨拶をした後で、フォウは神様に向き直り――


「ジダルジータ様におかれましては、ご健勝のようでなによりです」

「ふむ、呼び出したのは他でもない。そこの者に付き従い、助けとなるがよい」

「はい。先ほどからお話しは聞こえておりました。ジダルジータ様の仰せのままに」


 ――神様の名前がジダルジータだと初めて知った。

 そしてニナの言うじじ様とはジジイではなく、その名前から取ったものだという事も分かった。

 どうでもいい事だが。


「フォウは魔族領まで案内できるのか?」

「はい。お任せください」

「じゃあよろしく頼む」

「フォウと一緒なの! うれしいの!」


 ニナは浮かれてフォウに抱き着いていた。


「じゃあ神様、ちょっと行ってくるわ。フォウを貸してくれてありがとな。いろいろと聞かせてくれた事も合わせて、礼を言っとくわ」

「お、おう。……気を付けて行くがよい。道のりは険しいぞ。何かあればフォウに頼るのじゃ。いろいろと忘れてしもうたニナっ娘と違って、いろいろと出来るからのぉ」

「そうか、じゃな」

「行ってまいります。ジダルジータ様」

「じじ様またねーなの」


 俺は二人の天使を連れて、洞窟へと繋がる扉に向かった。


「あやつなりに進むべき道を見つけたというところかの。どう転ぶかわからんが、なるようになるじゃろ。もしチカラを手にしたとしても、第四天使が抑止力となってくれるじゃろうしな。……それにしてもあやつ、人が変わってしもうたわい。……開き直ったという事かのぉ」


 扉を開けた時に、神様が一人でぶつぶつと何やら言っていたが、気に留める事もなく部屋の外に出た。




 洞窟の長い通路は何事もなく、俺たちを素通りさせる。

 凶暴な魔物たちは鳴りを潜め、姿も現さなかった。

 天使たち二人に見つからないように、隠れているのかも知れない。


 洞窟を抜けると外はすでに夜だった。


「失敗したな。神様んとこで泊めてもらえばよかったかもな」


 いまさら長い洞窟を戻るのも気が進まない。さて、どうするか。

 洞窟の入り口で考えていると、フォウが提案してきた。


「アラン様、湖のほとりで野営いたしましょう」

「まあそれもいいんだが、キャンプするにしても何も用意してきてないんだ。木に寄り掛かって寝るか?」

「大丈夫ですアラン様。用意はございます」


 見ればフォウはニナ同様手ぶらだ。

 どこにそんな用意があるのか分からないが、俺たちは湖に沿って歩き、洞窟のちょうど反対側まで来た。


「では準備いたします。少し離れてください」


 フォウは上着の袖口に手を入れ、おもむろに何かを取り出す。

 それは柔らかい曲線を描きつつ、にゅるにゅると飛び出してきた。

 気付くと目の前には巨大なテントが出来上がっていた。その大きさは大人五人は入れそうな程だ。


「おい。なんだそりゃ!」

「野営用のテントでございます」

「いや見りゃわかるが、どこから出した? どうなってる?」

「わたくしのポケットからでございます。どうなっているのかと言われましても……天使のたしなみ? としか言いようがございません」


 分かったような、分からないような。……そんな答えが返ってきた。


「ニナもポッケほしい! ポッケほしいなの!」

「ニナも持っているはずですよ? どこにやってしまったのですか」

「えー持ってないよー、ほしーよーなの」


 ニナはぴょんぴょん飛び跳ねていた。フォウと再会してからのニナはやたらとテンションが高い。


「まぁいい、地面で寝ないで済むのなら助かる」


 俺は無理やり納得して、テントに入ってみた。驚く事に中にはすでにベッドが三つ揃っていた。


「こりゃいいな。フォウ、俺が先に外を見張っているから後で交代してくれ。ニナはあてにならんから、二人でいいな?」


 無防備に三人揃って眠るわけにはいかない。俺は交代で見張る事を提案すると


「ご安心ください。すでにテントを中心として周辺にはわたくしの結界を張ってございます。何者かが結界に触れればわたくしもすぐに気付きますし、恐らく結界内に侵入する事も不可能かと思われます」


「なんでもありかよ」


 結界なんていったいいつ張ったというのだ。魔法陣も無ければ、それこそ詠唱さえしていない。

 俺は呆れつつも、フォウの言う事を信じる事にした。もう、なんとでもなれだ。


「ポッケほーしーいーなーのー」


 ニナが今度はフォウの首に両腕をからませて、しがみ付いていた。


「それとフォウ、アラン様はやめてくれ、様は」

「分かりました。ではなんとお呼びすればよろしいですか」

「そうだな、呼び捨てでいいぞ」

「はい、アラン。そういたします」


 順応するの早いな。躊躇いも恥じらいもまったく無しだ。


「ニナもアランってよぶー」

「お前はもう、そうしてるだろ」

「そうなの! です! なの!」


 今度は自分の手足をバタつかせて踊りだした。こいつのテンションわけわからん。


「もう俺は寝るぞ。お前らは好きにしろ」


 食事はさっきパンを食ったからそれで充分だ。ニナも食ってたな。フォウは……まぁ好きにするだろう


「わたくしも休ませていただきます」

「ニナもなのー」


 二人とも寝る事にしたようだ。フォウはさっさとベッドに入ると横になったが、ニナは何を考えたか俺のベッドに入り込んできた。


「いっしょにねるなの」


 さびしがり屋か? 俺に少女趣味もないし、問題ないだろう。

 このまま俺も寝てしまおう。昨日も今日もいろいろあって疲れた。ジジイの話なんて実際、半分も分かっていない。

 

 だが俺にもしチカラがあるというのなら、それに賭けてみたくもある。

 ジジイの言っていたチカラというものが俺に発現したとしたら、それこそ今まで考えた事もないような、夢のような人生が広がるに違いない。

 どん底の人生を歩んできた俺が少しくらい、夢を見たっていいじゃないか。

 それこそ自由だろう?

 

 俺はほんのちょっとだけ、希望というものを心に抱いて、進むべき道を夢みた。





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