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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第8章 魔王誕生編
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102・サーラ 魔王誕生

 アラン様たちがついに、来てしまいました。

 わたしは玉座に座りながら、城の外の湖に辿りついた魔力を感知しています。


 このままでは、お婆様の時と同じ事を繰り返してしまいます。

 ですがわたしには……いえ、諦めてはいけません。何とかしないとならないのです。


 アラン様のマイナス値が、酷い事になっていました。

 今のわたしには数値が読めます。


 その数値は、(-125000)となっていました。

 いったい何があったのでしょう。

 元々の数値は知りません。ですが、こんな酷い数値なはずがありません。

 これではチカラを表に出す事なんて出来ません。体が持つわけがないのです。それくらい分かります。


 ああ……城に到着してしまいました。

 この部屋にまっすぐ向かっています。


 わたしはもう一人のわたしを、何とか抑えて表に出ようとするのですが、上手くいきません。


 扉が開かれました。

 もうひとりのわたしは問答無用でした。

 いきなり『魔王の波動』を発動させ、かろうじてフォウ様の結界が間に合ったアラン様以外を、吹き飛ばしてしまいました。


 魔王の欠片が今、唯一使えるスキルです。

 『魔王の波動』――それは物理的な攻撃力と共に、絶望的な恐怖を同時に振りまきます。少しでもそれでダメージを与えれば、そこから恐怖が発生して、対象者は戦う気力すら無くなるというものです。『魔王の威圧』はこれの劣化版です。


 ですがニナ様は回復されて立ち上がり、倒れたフォウ様の元へと、駆け寄ろうとしていました。

 そこへ、容赦なく追撃を仕掛けます。

 ニナ様は吹き飛ばされてしまいました。


 わたしはずっと、もう一人のわたしに抵抗しているのですが、体を動かす事もしゃべる事もままなりません。


 ルル様が飛び込んできました。

 杖を振っても何も発動しませんでした。

 杖の魔石がいつもと違う色に輝いています。


 ルル様のおじい様が、攻撃をする事を許さなかったのです。

 わたしはその翼で抱きしめられました。

 ああっ駄目です……やめて!


 ルル様がわたしの魔法によって、その存在を消されていきます。

 もう一人のわたしは、あろうことか、次元魔法の小型版を試作して今、実験しているのです。


 ひどい! やめて! こんな事しないで! お願いだからやめて!


 わたしの叫びは誰にも届きません。


 気付くとフォウ様は消滅魔法を発動させています。


 ああ……今のわたしはいつかの魔獣のように、その魔法を向けられる対象となっていたのですね――


 光りに包まれたわたしは両手を前に突き出し、抵抗していました。

 ルル様も杖も、消えてしまっていました。


 さすがはフォウ様の魔法です。わたしも少し、抵抗にチカラを籠めていました。

 でも……今のわたしには――

 

 両手を振り下ろして攻撃を撥ね返すと、アラン様もフォウ様も激しく転がって行きました。


 ああ……ああああ……あーーーーーーっ


 フォウ様は……まだ息はあります。

 ニナ様は……壊れた床から湖に落ちてしまいました。


 アラン様は――

 アラン様は……死――


 ふ……ふ……ふ――


「ふざけるなああああああ!!!」


 気付くと自分の声で発声していました。


「いいかげんにしろおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 久しぶりのわたしの声は、自分でも聞いた事のない叫びでした。


「わたしの体を返せえええええええぇぇぇぇぇ!!!」


 はぁ……はぁ……はぁ……。


「とり……戻した!?」


 体も動かせます!

 急げ! 急げ! わたし!

 この体の自由がいつまでなのか分からない!

 急げ!!!


 覚醒したわたしには、どうすればいいのか分かっていました。

 アラン様がまだ、死のオーラを出しているうちに処理すれば、間に合うと。

 

 ただ再生魔法はあっても、蘇生魔法は存在しません。

 わたしがこれからやるのは、賭けなのです。


 顔の半分が無くなったアラン様に、再生魔法を発動。

 顔どころか無くなった腕や足も、同時に再生されました。


 わたしは少し躊躇いました。

 本当にこれは賭けでした。

 もし生き返ったとしても、アラン様がアラン様であるという保証はないのです。


 でも……でも、これしか……ない!


 アラン様の唇に、わたしの唇を合わせました。

 わたしの初めての口づけは、血(死)の味がしました。


 魔力を自分のおへそのあたりに集中して、それを呼びます。

 それ(・・)が可能だと思ったのは、それ(・・)自身もアラン様に惹かれていたからです。


 そう、アラン様のそのとてつもない、マイナスのチカラに。


 わたしがお腹の底から呼び出したのは、魔王の欠片です。

 紫の塊はアラン様のマイナス値に惹かれて、わたしの口からアラン様の中へと移動して行きました。


 移植が終わったのを確認して、アラン様の唇から離れました。

 わたしの唇とアラン様の唇のあいだに、細い糸が引きます。


 アラン様の体に今の所、変化はありません。


 わたしは今のうちにと、フォウ様の元へ駆けより、回復魔法を施しました。

 フォウ様は全快しましたが、まだ目は覚めません。


 ニナ様を探そうと湖を覗いた時、それは起きました。



 アラン様の体が光を帯び、痙攣し始めます。

 その痙攣は次第に激しさを増し、光は増大し、やがて爆発したかのように拡散しました。


 気付けばアラン様は片膝をついて座っています。

 しかもその姿は、十歳くらいの少年のものとなっていました。


「アラン様……」


 アラン様は目を開け、辺りを見回し、わたしと目が合っても不思議そうにしています。


「アラン様……お気分は?」


 見た所、お体は大丈夫そうです。魔力は――


 魔力はすべて……(125000)もの魔力が表に現れ、そのオーラが――


 そのオーラは――


 





 魔王を示していました。




  

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