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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第8章 魔王誕生編
102/105

101・抗うものたち

 俺はフォウの展開した結界の中でそれを見ていた。


 ニナが倒れ、ルルが倒れ、フォウが倒れている。

 フォウは咄嗟に俺だけに最小限の結界を、最速で展開したのだ。その結界にフォウ自らは入っていなかった。


 俺たちは扉を開けて入った瞬間に、攻撃されたのだ。


 ニナが回復魔法で復活してこちらに駆けようとした瞬間、第二波が襲い、ニナは衝撃で転がっていった。


「サーラぁ!」


 俺は叫んだ。だがサーラは冷たい眼で、俺たちを静かに見ているだけだ。


 この部屋には中央に玉座がひとつ、あるだけだった。

 その玉座の前に立ち、杖を構えたサーラが俺たちを睥睨する。


「サーラ! 目を覚ませ! 俺だ! アランだ!」

「ア……ラン……」


 その言葉が聞こえた瞬間に理解した。サーラはまだ存在している!

 魔王になりかけだが、サーラはまだその中に居るのだ!


 だがその杖からまたしても衝撃波が放たれ、俺たちを襲う。


 激しい音と閃光が生じ、フォウの結界が壊れた。

 今度は俺も吹き飛ばされ、フォウを巻き込んで転がった。


「がっ……はっ!」


 俺の口から血がドボドボと吐き出される……内臓までやられた……たった一撃で俺は死ぬ寸前まで追い込まれている。

 フォウの結界がクッションになっていなかったら、すでに死んでいただろう。

 

 フォウは俺の下敷きだ。ニナは……少し離れた場所で気を失っている。

 ルルは――


「おじいちゃん!」


 ――ルルは叫ぶや、サーラに飛び込んで行った。


 サーラはルルに向けて杖を振るうが、何も起こらない。

 その杖の赤いはずの魔石は、今は黄色に輝いていた。


「おじいちゃん! ウチだよ! ルルはここだよ!」


 ルルがサーラに抱きついた。その杖ごと。


 杖に嵌め込まれた魔石は、ルルのおじいちゃんだと、初めてルルと会った時に聞いている。

 その杖は――魔石は、身内のルルに反応して、攻撃する事が出来なくなっているのだ。


 だがサーラは杖がなくとも、魔法はいくらでも使える。

 サーラを抱きしめているルルは、次第にその姿を、存在を薄くしていた。


「サーラ! 止めろぉ!」


 ルルの姿が透明に近くなり、消滅して行く。


 ルルの存在がほぼ無くなりかけた時、床が激しく揺れ、俺の後ろから凄まじい程のオーラが放出された。

 

 フォウは両手を広げ宙に浮き、その体を眩しいくらいに輝かせていた。

 青き髪は天に広がり、瞳は閉じて。


 ルルが稼いだ時間は、フォウの詠唱を完成させていた。


 その目が開くと――世界は光に包まれた。


 フォウを起点に、サーラに向けて床が次々と剥がされて行く。

 サーラと共に居たルルの姿は既になく、その杖も消失していた。


 サーラは光に包まれた。

 両手は前に向けて開いている。

 光りに対抗しているのだろうか。全身は小刻みに震えている。

 やがてその両手を天に翳し、地に叩きつけるように振り下ろした。


 床を粉砕しながら、撥ね返されたチカラは、俺とフォウを直撃した。


 俺は床を激しく転がりながら、時間がゆっくりと回っていくのを感じていた。

 ゆっくりと体が回転している。

 ゆっくりと右腕が千切れた。

 ゆっくりと左足がもがれた。

 ゆっくりと顔の半分が、床に削られて無くなった。

 フォウが倒れているのが見えた。動いていない。

 ニナが粉砕された床から、湖に落ちて行くのが見えた。


 それが、最後に見た光景だ。


 俺は死んだ。




  

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