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プロローグ
ほの暗い水の中を
ゆっくりと沈んでいく少女
仰向けのまま脱力した四肢に
纏わりつくいくつもの泡沫
首から浮き上がる金の十字架は
僅かな光を反射して点滅を繰り返す
長い金髪は天に巻き上げるかのように
揺らめき
その影となった表情は窺い知れない
動きを止めたその身体は
気を失っているのか
それとも……
何も無いその空間で
少女だけがただ
ゆっくり、ゆっくりと沈んでいく
悠久の時をずっと
そうしてきたかのような少女も
やがて……
……やがて水の底にその身を静かに横たえ
白い服だけを揺らめかせる
そして静寂と闇の中に包まれた