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転生失敗してるんだって?

 『誰だお前は?』


 俺の前に現れた物体は、先ほどまであった見えない壁の方を眺めた後、電子音のような音声で「まじか……」と呟いている。


「私は神さまである。敬いたまえ」

『黙れよ生首。お前の姿何回か動画投稿サイトで見たことあるぞ』

「ああ、神さま基本身体ないから君に見えるように急ピッチで用意したんだ。有名だぞ敬え」


 どこまでも偉そうにしている自称神を名乗る物体に、俺はどうしたら良いのかわからずに呆気にとられる。

 生首はなにかぶつぶつと呟くと羊皮紙を取り出し、それを俺につきだす。


「まずは、君の今の状況について知ってもらおうかな?」

『俺の今の状況?』

「そそ。今君に渡したのは現在の君のステータス。なんでそんなのがあるかと言うとこの世界は私達が作り上げたゲームの元の世界だからだね。君はクロスゲートオンラインって知っているかい?」

『知らん。そもそもゲームなんてしてるなら妹とおままごとしてた方が有意義だ』

妹魂(シスコン)か!? それなら別に聴き方をした方がいいか。君は転生って知っているよね?」

『前世の記憶を持ったまま新たな生を承る事だろ?』

「うーん……もしかして君……異世界転生ものの小説を読んだ事がない人種かい?」

『なめるな。妹が面白いって言ってたお姫さまや令嬢に転生するようなやつなら読んだことある』

「あー……うん。そっちも転生ものだね。僕が言いたいのは転生したら○○だったとか最強能力で転生したとかそっち系」

『それは妹が読んでなかったから読んでない』

「てめーの基準は妹か!?」

『当たり前だ!!!』


 妹が興味を持たないもので必要なのは妹を護るための武力と妹の質問に何でも答えられる賢さだけだ。それ以外は俺には不要だ。


『あえて言おう。愛しているんだ妹を!!!』

「うわー」

『おいそこ、引いてんじゃねえよ』

「……うん。今の君の言葉でなぜ君の転生先があの身体だったのかって事とその体になんで君が転生出来なかったのかがわかったよ」

『なんだその言い方は。それじゃ俺が転生失敗してるみたいじゃないか?』

「はっはっはっ……してんだなぁ、これが」

『は?』

「正直に言いますとね君、転生失敗しちゃってんのよ。まず転生したにも拘らず肉体がないのが最初の手違い。それに君が入る予定だった肉体には君の妹が入っているらしいね。こんなケースレアだよレア」


 肉体のないこの状況から、俺は彼女の守護霊になったと思っていたのだが、それは違っていたらしい。

 俺はほんとはこの世界に転生して第2の人生を歩む予定だったのだろう。そして、この神が言っている事から俺が転生する予定だったのはあのアザレアだったって事か?

 そうなると妹は……ツツジはどうなるんだ? 今のアザレアの体に入っているのは紛う事無き妹の魂だ。


「ああ、それね。元々あの妹さんは死ぬ予定なかったんだよね」

『あ゛?』

「元々あの強盗に殺される予定だったのは、君とその場の数人だけだったんだよ。君はこの世界に転生した後、元の世界に還るべく禁忌の研究を行い異世界転移を編み出そうとしたが、その過程で魔神になり英雄に討ち取られるって筋書きだったんだ。君の研究はその後この世界で異世界転移の基礎盤となって大いに役に立つことになる布石だったんだけどね~」


 こいつ、さらっととんでもないこと言ってくれてるな。俺は殺されるためにこの世界に呼ばれた? はっきり言ってふざけんなって言いたい。なにより妹は死ぬ予定になかったとこいつは言ったが実際はあいつは死んでこの世界に来ている、それについてはせつめいしてくれるんだろうな?


「それについても説明するよ。彼女が君を庇う事は元々こちらの目算にはなかったんだ。彼女は怯えて動けない、私達はそうふんでいた。だが、彼女は君を護るべく強盗の前に立ってしまった。まさか、そんなご破算をしてしまうとはうっかりだったぜ、はっはっはっ」

『ふざけんなこのやろう!!!』


 何笑ってんだこの野郎。こちとら最愛の妹が動かなくなったことでどんだけ傷ついたと思ってんだ。トラウマだぞトラウマ。今でもふとした瞬間に思い出しちまうほどに心にぶっ刺さっているんだぞ!?


「でもそのおかげで君はその最愛の妹と合法的に結ばれる世界に来れたんじゃないか?」

『……おまえてんさいかよ!?』


 そうだよ、この世界なら俺はツツジと結ばれることが出来る。他の男にツツジを奪われるなんて理不尽に合わなくて済むのならこれ以上完璧な世界はない。


「まあ、結ばれる前に君視えてないんだけどね~」


 そうだった……。今の俺見えないじゃん。早くしないと妹がどこぞの貴族に嫁がされてしまう。俺も肉体を得ないとあいつに声もかけられない。どうしたらいいんだ!?


「そのために、私が来たんですけど」

『おまえ、実は良い奴なのか?』

「もともと、君の転生は他の担当の神がいたのですが、自動転生案内システムを使っての転生だったせいで君のようなイレギュラーが出てしまったんだ。それにその神は今回の問題を隠蔽して発覚まで期間が開いてしまったんですよ。引継ぎの手続きやらなんやらでくるのが遅れてしまったのはこちらの責任でありまったく遺憾なことです」

『んな政治家みたいな事言ってないでどうにかしてくれないか?』

「はいはい、わかってますよ。じゃあ、まず君のステータスを視てください」


 俺は神に従って、手に持っていた羊皮紙を広げる。そこにはいろいろな事がびっしりと書かれていてちょっと引いてしまいそうになる。


 名前:守屋 茅白 年齢:18歳

 性別:男   種族:守護神霊


 Lv.0ⅲИ七

 STR(攻撃力):p@[sof-0se

 CON(生命力):u9rqw0uire0

 INT(知 力):1500

 POW(精神力):3000

 DEX(器用さ):58u2q30-vmq

 AGI(素早さ):756b984we

 LUK(幸 運):±

 才能

 守護

 我流戦法

 気配感知

 精神統一

 魔法耐性マイナス


 転生ポイント950w3bn85u-0



 なんだこれ? 読めないんだが……。この世界の言葉でもないし一体何がどうしてこうなってんだ?

 それでもいくつか読めるしなんでこんな事になっているんだ?


「君のステータス見事にバグっているだろ? それ私達では数値化できないってことなんだよね。転生システムは、元々他の世界の神様が使っていた物で、そっちの世界では数値化できたものでも、こっちじゃ対応してないものもあってどうする事も出来ないんだよね。だから君にはこの数値の適正化の為にしばらく僕とステータスとにらめっこだね」


 どうやら、俺の能力はこの世界には合っていないらしく、あの数値化されていない部分はバグらしい。

 このバグがなくなれば俺は人間になれるということか?


「世の中そんなに甘くない。バグを直したところで君の今の状況はわかりやすくなっても変化はしないよ。肉体を得るなら、もう一度転生するか、誰か他の人の体を奪うかするしかない。もしくはスキルを得るかだね。とりあえず作業を始めようか?」




 それから俺は、半年かけてステータスの見直しを行った。最初直すだけなら俺いらなくないか? とも思ったのだが、どうやらステータスの変動もしてくれるって言ってくれるのでお言葉に甘える事にした。

 転生ポイントについても教えてもらったが、転生するにあたってそのもののこれまでの不運と不幸の数値分だけもらえるらしいが、俺の転生ポイントは幸福の絶頂からの急落下によるもののおかげか最初から高く設定されており、そのほとんどを使っていないとも教えてもらった。

 あのステータスの異常については、俺が行っていた鍛錬と最後に壊した見えない壁の影響だと言うことらしい。

 神が言うには、


「あの壁は、通称エリア領域。ゲームなんかである街や村にモンスターが入ってこれなくしたり、村人が外に出て行かないようにするためのものだ」


 それは個人個人に設定されておりラスボスなら最後のダンジョン、裏ボスなら隠しダンジョンと言ったようにそれぞれの領域を持っているらしい。俺の場合はアザレアが歩いた部分だけと言う設定でだから屋敷の外には出る事が出来なかったんだろう。

 領域は、誰にも壊されないように触れられないように設定されており、俺が触れたのは同じ不可視の存在だったからだろうとの事。

 これが壊れた事で、始まりの街にもラスボスが突っ込んでこれるようになったということらしい。


「まあ、今まで通れなかったから今も通れないと思い込んでいるだろうし、もうしばらくは安全なんじゃない? しらんけど」


 あいかわらず投げやりである。


「そもそも、あの領域は壊れないように設定していたのに、それを壊してくれやがって。直すのに何十年かかると思ってるんだ。まあお前は領域壊したおかげでこの世界の誰よりも強い存在になったから危機感はないだろうけどな」


 だが領域がなくなった事で、アザレアの父ユーストマは毎日のように領地を巡回するようになった。村にモンスターが入ってこれるようになったせいで、毎日どこかしらで被害が出ていると言う話らしい。そのせいで民間人の街の統一化の話も出ていて、その説得にも動いているらしい。知性のないモンスターがいつでも襲いに来る状況を打開するために動いている人々にはほんとに申し訳ない事をしたなと反省している。

 しかし、気にしても仕方ない。今の俺には出来ることはなく、神がいうには「君が肉体を得るのは早くても10年必要だ」との事。見ている限りあの父親もここらでは結構強いらしく、姿が見えただけで領民が安堵をもたらす事ができるほどに信頼されている。実際あの男がたたかっている所を見てたがモンスターなどものともしない強さで今のところ負傷者はいても死者は出ていない。

 そんなわけで俺はする事もなく、神が渡してくれた一覧を見ながら転生ポイントの使い道を決めるべく、今日も頭を悩ましていた。


『魔法を覚えるのもよさそうだよな……でもこっちの覇王道も捨てがたい……おっ死神の眼なんてものもあるのか……迷うな~』


 俺が貰った転生ポイントは結構多いが全ての能力を獲得できるわけでもなく、この先使い道があるものを選ぶ必要がある。中にはいかにもな能力があり、それを取りたい願望も少し出てきてしまう。


『ん? 人化?』


 能力の中にあった能力で変身能力なるものを見つけ、眺めているとその中に人に化ける能力を見つける。

 その事に気付いた神も作業の手を止め俺が見ていた一覧を覗き込んでくる。ちなみに今は黒髪おかっぱ清楚系美少女の姿を作業している。


「ああ、それはあまり進められないよ。実際人になれるわけでもないから下手したらモンスター扱いされちゃうし、そっち取るなら人体練成のほうが安全だよ」

『人体練成って、そっちの方がやばそーな雰囲気醸し出してんだけど?』

「人体だけなら問題ないよ。そのさらに上の能力の生命練成ともなると、禁忌だけどね」

『禁忌なんてあるのかよ、先に言えよ。他には取ったらまずいのってどれだ?』

「んーっと、まずは「七つの大罪」でしょ、あとは「絶望の灯火」に「加護」と付くもの。それに「魔神」に連なる能力もやめといたほうがいいね。「加護」はその者が決めた存在にしか効果ないからとっても何の意味もないし、他のは下手したら世界の害敵と見做されて討伐されちゃうよ」

『さらっと物騒な事言うな』

「まあ、転生ポイントは後からでも使用出来るんだし急いで決めることでもないと思うよ~」


 そう呟きながらも俺のステータスの修正をしている神は、いまだに難航しているバグ消しに疲れたのかのびをした後屋敷の床をコロコロ転がっていく。他の使用人達に見えていないらしく誰もその奇行を見ても気にしない様子だ。と言うより清楚系の外見で床を転がるなよ。

 あの動作をするときは休憩の合図だと最近気が付いた。最初は逃げようとする神をひっつかまえて無理矢理修正させていたが、あの神が粗相をしてからはそんな事をする事は無くなった。と言うか神も洩らすんだな……。


「今凄い失礼な事考えていなかった?」

『なんでもないぜお漏ら神』

「その言い方やめてください! あの一回以来洩らしていないでしょうが!? てかそのせいで私の可愛いアバター壊れちゃったんですよ、あなた反省してるんですか!?」

『チッうるせーな……反省してマース』

「絶対反省してないよね!? ここまで酷い扱いは今まで一度しか無かったよ!!!」


 一度はあるのかよ……。


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