魔導海兵隊奥義 大風呂湯沸し術
Q何話か前にお風呂回やったよね?
Aはい。正にその通りであります。そのことにつきましては、明らかに作者の都合と趣味に問題があるとの報告書が上がっております。
Q下世話とは?
Aそのことにつきましても、作者の悪趣味が全ての根源です。弁解の余地はありません。
Q最後に。前書きをこんな風に使ってもいいの?
Aそこは作者にもわかりません。不評を買わないよう小説投降に鋭意励みます。
New Q修正多くない?
New Aストーリの差し替えまであるので、出来る限り減らします。告知しない方向で修正します。
一応埋め合わせは外伝を執筆して挽回します。ちょっと尻切れトンボなので、また弄ります。
「ねぇかーりー。お風呂の水冷たかった」
つぐみはとてもがっかりした様子で冷え切った水面を叩いてみせる。大風呂で伸び伸びと浸かれると大はしゃぎだっただけにそのままがっくりとうなだれる有様。
「残念だけど練習艦に乗り組んだ人達を待ってから入ろうか。私たちが挨拶もなしに一番風呂に入っているのもやっぱり悪いだろうし」
今時刻は日暮れ前だが、今からこの大風呂を沸かすなら帳が下りるかどうかの時間になりそうだ。そうなると多分、教班で生活している魔導兵と入浴の時間が重なってしまう。
一応三科さんにお風呂の件は既に確認済みで、自由に利用して構わないという許可を取り付けていただけに私も無念な思いだ。
「ねえかーりー。お湯沸かしちゃダメ?」
「私もお風呂の為に符を用意してたけど、あくまでドラム缶で利用するものだったから」
能力に頼りたいのだけどつぐみの能力で熱量具象は成功例がない。お風呂即席符は準備してあるのだが、目の前の大風呂を目にしてドラム缶で入るのはなんとも寂しい。
(ちなみにお風呂即席符とは、かりん考案のドラム缶にお風呂の残り湯を張った状態の容符、かまどで作った熱石容符の2つを指す。容符は取り込んだ物体を状態停止させる性質があるので熱量減衰することなく符に取り込んでいる。外に外泊したことないので試し風呂の一度きりだったが湯加減の調整も良く上々の出来だと私は自負している)
ひとまずお湯をすぐに沸かせるかどうか、兵舎の裏に設けられていた小屋を確かめてみることにした。
ここの大風呂は循環式のようで、今から火を起こすとなると日が暮れてしまうだろう。しかし私はふと、少し気になったことがある。このかまどはあまり使われた形跡がない。というのもかまどは真新しさが残っているのだ。かまどというのはよく煤が溜まる。そして灰を掻き出す必要がある。こんなにもきれいなまま使うとはあまり思えないのだ。
ここの他に沸かす設備はないように思えるのだが、疑問に思ってても仕方がないのでそのままつぐみの元へ戻ることにする。
「ん?」
服?誰の服だろうか?今さっきまではなかったぞ?魔導隊の人が戻ったのだろうか?しかもこっちにはつぐみのものある。風呂場前にある棚には二人分の服が入れられている。
不安になりながらも恐る恐る戸を開いて大風呂に目をやる。そこには大風呂で湯船に浸かりまったりするつぐみと体をタオルで洗う際中の女性の姿があった。立ち姿で拭っているが、黒髪の背の高い女性だ。
この奇妙な光景に目パチクリと瞬かせる他なかったが、寸でのところで姿勢正して敬礼し、自己紹介の挨拶をする。
「入浴中大変失礼しました。私は暫くの間兵舎に居まわさせて頂くことになりました、御郷 花梨と申します。若輩者ですが何卒、よろしくお願いします」
なんとか先に挨拶をすることはできたのだが、相手の表情はなんともいえないものを見た様な顔をしている。値踏みをされているのか、沈黙の間が生まれる。
流石に浴室での自己紹介はまずかったであろうか?それとも目の前の光景に混乱して何か不行き届きなことをしでかしてしまっただろうか?
「かーりーもお風呂入ろ」
意も介さず湯船で手招きするつぐみ。一方のつぐみは極楽気分だ。何故?お湯はどこから?と問い詰めたい気持ちに駆られてしまうが、この居合わせた中では疑問は全て後回しにする。
黒髪の女性は、タオルをそっと足元へ置くと、続けて姿勢を正す。
「こちら魔導海兵隊第四小隊所属 花房小尉だ。気構えは大変結構。だが……。大風呂に於ける挨拶は出来る限りユーモアがあるほうが好ましいな御郷」
男勝りなはきはきとした声だ。浴室なのでとてもよく響くのだが、背の高さと非の打ちどころがない身のこなしも相まって威厳が増す。
しかしながら生まれたままの姿で堂々とした挨拶だ。目のやり場に困る。
しかしお風呂は無礼講のほうが良いというが、語尾は強く目元も鋭くそれに全く笑ってない。正直言って怖い。
「はっ!では浴室ではユニークに富んだ挨拶をお披露目できるよう努めます」
「くっ……ふふっ」
後ろでつぐみが肩を震わせる。笑われてしまった。いや。これは流石の私でも誤りだとわかった。硬い挨拶を叱責されたのだからできる限り軽い言葉を選んだ方が良かった。
と思っていたら笑い声がもう一人分増える。よくわからないが花房さんも肩を震わせている。
「あぁ。すまない。君の年相応の初愛いしい返答も大変ユニークなものだな。風呂場で固まってしまうのはいただけないぞかりん。いいから君も大風呂に入りなさい。固まって動けないのなら相棒に背中でも流してもらったらどうだ?」
高らかに笑いながら、また体を念入りに洗う作業に入る花房さん。
まさか……からかわれてた?いやいや、無理無理無理。いやだって、初対面で軽はずみな事なんて絶対に無理だって。
「かーりーおもしろーい」
あぁ……。つぐみは別。
「脅かしてすまなかったな。いやなに。君のような若造が殊勝なことを言うからな。上官からの有り難い洗礼だと思ってくれたまえ」
「はぁ……」
張り詰めた緊張が解けたせいだろう。返事がどうも雑になってしまう。もうなし崩し的に服を脱ぎ隣で体を洗うことになる。
「君たちのことは聞いているよ。従軍記者か。大変立派な仕事だ。精進したまえ」
「あ、あの、一つ聞いてもいいでしょうか?」
「なんだ?いってみろ」
そう、私はどうしても聞きたい疑問があったはずだ。
「私は先ほど兵舎の裏手に周りました。このお湯はどこから來たのでしょうか?」
そうだ。大風呂はかまどを使わずにお湯を供湯してるのだ。歩きながらとはいえ私が裏に回ってからそんなに時間は立ってなかったはずだ。
「ああ。そう不思議がる事でもないさ。熱源はここにあるだろ?」
胸辺りを親指でグッと指示す。それにしても横からでも随分とというか関係ない事を思案する前に、先ほどまで抱いていた疑問が晴れる。
そうか。目の前にいるのは魔導師だった。そもそもかまどが使われるはずが無かったのだ。
「君たちはみたところ夢想魔術師だからあまり馴染ないだろうがね、私たち魔導師ならこの程度のお湯を沸かせること造作ないのさ」
水に対する魔力循環は比較的安定して行うことが出来る。
もし鉄に熱エネルギーとして魔力循環させてしまえば恐らく鉄全体に熱が行き届く前に接触面の皮膚が火傷することになる。しかし水は結合と熱量伝導の関係で隅々まで循環し、熱がムラなく広がるのだ。ある意味常識とはいえるのだが、訓練後にやすやすとこなす人がいるなんて想像もできなかった。
「私が一番風呂を決め込もうと入ったらな。どうにも困った様子で水をピチピチ叩いてる奴がいてね。手が冷たかろうと思って沸かせてやったんだ」
私が来る前に既につぐみは入ってるのだからそれはもう驚いた。
この怖い魔導師に寒水浴させられてると思っても仕方がないくらいに。まあ大風呂間が湯気で満ちるほどだから湯なのは間違いなかったし十分な温度の湯加減だということは大体つぐみの顔で分かる。
「だが、私が一番乗りで良かったよ。ここは男性陣も利用するから決まった時間に入れ。そこらへんのことは新米の教育係にやらせるからな。新参者がくると喜ぶからいろいろ聞いてやってくれ」
「はい。いろいろとありがとうございます」
念入りに海の塩を落とした花房さんは、湯船に浸かると遠慮なくつぐみの横に腰を下ろした。つぐみもそんなに抵抗がないようでそのまま湯を満喫する。
「すみません。つぐみをお借りしてもよいでしょうか?」
「? ああ。かまわんぞ」
隣に座った花房さんが話し相手にしたいのかもわからないので、一応断りを入れてからつぐみを呼んだ。
「つぐみ。おいで」
「ん」
「ええと。一度拭く?いや、気にしなくてもいいか」
つぐみはまだ護符を張ったまま湯に入っている。不可視化常態の護符を付けたまま湯に入っても関係ないのだが、なんだか体全体を覆ったままだときちんと浸かれているのかいまいちなので解放させておく。汗は不可視化した護符をすり抜けるのできっと問題ないのだろうが、気持ちの問題であろう。
しかし、その。ちょっと言いにくい部分。股座の護符とは別の種類の符は外さないとまずい。外側の水に影響されないとは思うけど流石に……。
私もびしょびしょだが、護符の吸収は支障なくとり行う。一瞬で符がつぐみの体から剥がれ私の元へ舞い戻ってゆく。そして私の全身に貼り付き、溶けるように消えてゆく。
取り込む前に濡れてしまうと破けやすいので注意すべきだが、破けてもストックはある。股座の符だけは保持したくないのだが、普段とはいかないので致し方なし。
いや、あまりに下世話な話だから釈明させて欲しい事実なのだが、たまに……。そうたまにあるのだ。 よ、夜とか。一応断っておくが、つぐみは私より多い。
具体的な内容は口にしたくないし、生理的症状を克服するのは戦時下の過酷な環境をを生き抜くうえで重要な要素だからある意味、軍人としては一つ上位の存在として君臨しているので決して、決して恥じる必要はないと信じたい。
その、足してる最中にもし頭を撃ち抜かれたらそれはもう未来永劫語り継がれる程の羞死だ。名誉の戦死がそうであって欲しくはないという願いに応える為の素晴らしい符なのである。
ただ、女性としてこの話を戦場に赴く以上決して軽はずみで取り扱うつもりはない。
女性兵は時として大地を赤くし、その辱めを耐えてなお命を尽くし、任務に忠実でなければならないのだから。
私たち子供の粗相はさておき、とってもデリケートな話であることには変わりなかった。
一応この有り難い符の存在については私の涙ぐましい試行錯誤を重ねた努力の成果なので、私とつぐみが墓場まで持っていく内緒の一つなのだ。
しかしそんな申し訳一杯な寂寥入り混じる念を抱きつつ、護符の解放をとり行っていた私と違って、花房さんは初めて見るであろう私たちの習慣を終始真面目な顔で見ていた。
「はい。おしまい。いいよ」
つぐみはさっさと湯船に浸かり直し、また元いた場所に腰を下ろす。
「極楽じゃ~」
「君の能力は随分と面白い力だ。通りで」
「?」
私も無礼講と思い、花房さんの横に失礼させてもらう。やっぱり大風呂はいい。腰を下ろしたまま壁に背を預け、手足をゆったりと伸ばす。それはもう格別だった。
いつも入ってた大釜式の風呂は手狭だしなかなか入るのが難しかった。枝が触りますというどころかいつもつぐみを抱きかかえての入浴だった。
そもそもつぐみが底板踏むのが苦手で一人では入れないのでしょうがない。しかし窮屈から解放されても、いつもある真っ白な頭が傍にいないのは少し寂しい気もする。
それから私たちは長めのお風呂をしばらく堪能し、風呂上がりの護符の貼り付けを念入りに行う。そしてそのまま大風呂を後にする。
花房さんも同じタイミングで風呂から出る。案内役に任せるまでは付き添ってくれるそうだ。
「おやいいところに。随分と早かったな。いいいとまつり見なかったか?」
ちょうど大風呂から移動しようとした時だった。花房さんは廊下を歩いてきた女性魔導兵に声を掛けた。
「小隊長。二人はまだ帰投しておりません。衣斐潜航艇の遅れのため、霧峯曹長が付れ添っての帰投をするとのことです」
「そうか。あいつらにお願いしようと思ったんだがな。ご苦労。ゆっくり風呂に浸かりたまえ」
「失礼ですが、小隊長。後ろの二人はどなたでしょうか。まさか花房隊長。先に戻られたのはお風呂で若い幼躯を欲望のままに手籠めにす」
「おっと。ジョークはそこまでだ軍曹。聞き捨てならんように口が動くのなら、両手は遺書を書くべきだと伝えなかったかな?」
「あれ?違いましたか。あれだけ張り切ってたので、つい邪推してしまいました」
花房さんは小隊長なのか……。と、挨拶をしないと。今度こそピシッと挨拶を決めねば。
「本日からしばらく従軍記者としてこの兵舎に居まわせていただくことになりました。花房 花梨といいます。こちらは、同期の西莉 つぐみです。何卒、よろしくお願いします」
一先ず挨拶。つぐみは姿勢を正して敬礼のみ。挨拶とは先手必勝。機を逸するわけにはいかない。
「従軍記者って新聞社は随分と若い社員が戦地へ赴くんですね。もしかして、人材が不足しているんですかね?」
「概ねあってるよ。美祢。彼女らのような存在は新聞社にはそういないからな」
とぼけた話を……。花房と美祢の視線が交錯する。美祢は恐らく感づいている。伏在の件というわけでないが、言葉の裏でそう首肯するしかなかった。
いや、そもそも私の小隊で彼女らがここへ来た理由が分からぬ者はいないだろう。
私の小隊が女性のみで編成されているのとほとんど同じ理由。
海軍の魔導兵は女性割合が多い。本来ならばそれだけのことだが、今回ばかりは事情が違う。
私の部下が全員女性なのは私自身に一任されたための単なる贔屓でもあるのだが、今回の引き抜きでいずれ本人たちも知る時がくる。軍隊はそういう組織なのだと。
戦争に道義心なんて大層な物は邪魔なのだ。
「光神 美祢魔導軍曹です。主任務は偵察及び対空見張り、着弾観測、艦隊直援です。可愛いカメラマンさん。私を撮るときは、カッコイイ飛び様をいっぱい写して下さいね」
それではご機嫌よう。と私とつぐみに軽く手を振り大風呂へ向かった。年は恐らく花房さんとそう離れてはいないだろう。大人の女性というイメージが持てる人だ。
職務を全うする以上、できる限りいい印象を与えておきたい。しかし大人の女性の会話する機会がないため、どうも緊張してしまう。
「ねえ花房。私たちみたいな子供がここに来るのって初めて?」
よ、呼び捨て……。つぐみの遠慮の無さに思わず頭を抱えたくなる。
「ああ。そうだな。人材が不足していると言っても、魔導幼年学校か士官学校を経て入営するのが普通だ。君達のような者がここで寝泊まりするのは例外中の例外かも知れないな」
「ふーん」
「花房は私たちを守って下さいますか?」
つぐみは続けざまに問う。真意はよくわからない。花房さん達と同行すると決まったわけでもない。
でもつぐみの勘が鋭いから、何か確信めいた質問に聞こえた。
「ああ。君達を全力で守ると約束する。私たちの職責は、国民を守ることだからな」
「ん」
今の答えに納得したのだろうか。つぐみはこれ以上は何も言わなかった。
「君達の世話をしてくれる奴は帰りが遅いらしいから、部屋まで迎えに行くよう伝えておく。兵舎のことはそれから聞いてやるといい」
花房さんとは少し歩いてから別れる。
私たちは素直に自分たちの部屋で待機。帰投中の案内役の二人を待つこととなった。
魔導兵と書いた場合
魔導兵 「夢想」 魔導兵 二つを指示すことになる為、判別しにくくなります。
そのため明確な名称に変更します。
魔導兵 「夢想」 魔術兵 という変更処置を致します。
魔導隊の中にも魔術兵は含まれます。比率上の関係で「夢想」能力者のみを指示す際に魔術兵及び魔術師というワードを用いるというように認識してもらえると幸いです。(能力的に融通の利く「魔導」と、一個限りの理を歪める能力「魔術」として大まかな線引きをしたいというのも理由の一つです)
あと、作者自身 海兵魔導隊 なのか 魔導海兵団 なのか 魔導海兵隊 なのかわからなくなることが多々あります。
見つけ次第修正していきますので、温かい目で見守ってやってください。
追記 タイトルが間違っていることに気が付きました。はい。こんなザマなので、何卒、よろしくお願いします。




