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ラジオ放送

 照徳16年 師走


「ねぇかーりー。ラジオ放送流れてる」


 私はラジオ放送に耳を傾ける。私はついにこの日がきたと、武者震いをする気持ちでラジオに嚙り付く。


「そうだ号外貰ってこなきゃ……!!さぁつぐみちゃんも早く着替えて!!」


「え~ねさむ~い。寒いから昼までねとこーよ」


「いいから早く起きるの。さあ私が脱がすから」


 私はそれらしい被服に着替えてから手際よくつぐみの服を剥ぐ。この子は眠気が抜けてないらしく目を瞑ったままちょこんとしている。しかしよくこんなマイペースで厳しい訓練を耐えてきたのは不思議でしょうがない。しょっちょう泣いてた私とは大違いだ。


「つぐみちゃん下どこ?」


「えーどこだったかねー」


 仕方なく自分のもんぺをあてがう。ささっと穿かせて忘れ物がないかチェックする。ついでにつぐみちゃんの鞄も見つけ、中身に不備がないか確認。


「つぐみちゃん行くよ。あぁっ袖で鼻水拭かないの。はいちーんして」

 私は自分の能力を使いつぐみちゃんに紙切れを渡す。鼻をかむことに能力を使うのは不本意だしよく揶揄われるのだが、実際使い慣れているのでとても便利なのだ。


「かーりーありがと。はい。返す」


 返された紙切れはまた私の能力で手首に溶け込むようにして消えた。鼻かんだ紙を体に取り込むようで嫌なのだが捨てるのが勿体ないので回収する。

 皺があろうとつぐみちゃんの鼻水がついてようが私の能力で元の状態に戻せるのだ。どうせまた鼻をかませる時は同じ紙を差し出すので何ら問題はないはず。


 家の戸締りも終え、駆け足で目的地の新聞社へと向かう二人。普段から足繁く通っているので道は迷うよことはない。


「ああ、おはよう。今日は早いね」


 新聞社の目の前で新聞記者の藤高さんに声を掛けられる。この人は私たちの上官もとい監督者だ。私たちは不適合による学校の落第が決まっているため、ここの仕事を貰って過ごしているのだ。(学校のほうは新聞社の意向で席だけ残している。定期的な出席で卒業する手はずとなっているらしい)


「おはよーございます!高藤さん。ラジオを聞いて飛び出してきました!」


「ああ。今日のうちに号外ができるだろうから今日はいっぱい配らないとね」


 私は魔導兵士にはなれなかったけどここでは私にしかできない仕事が沢山ある。同期と戦場で肩を並べることは叶わなかったが、彼らの活躍を広めることはできる。ここが私の戦場なんだ……。私にしかできない仕事を精一杯こなして、御国の為に。みんなが幸せに暮らすために尽くす誉高い魔導師になるんだ……。

 

「ふぁあ~。ねむぅぃ……」


 つぐみちゃんは相変わらずのようでいつも通りのほほんとしている。


「つぐみちゃん。挨拶」


「おはよおございますぅ」


「ああ、つぐみちゃんおはよう」


 高藤さんは今までの大人と違って優しい。前の学校でこんな態度をとれば折檻どころかお尻を棒で叩かれる。体制は違えど能力者の学校は兵隊学校とそう違わないらしくとても厳しかった。


 これから忙しくなるから邪魔にならない様に張り切って仕事しよう。そして今日の号外は全身くまなく張り付けておこう……。




 -海軍省-


「それで、この子達を海軍に取り込むと?」


「はい、大佐。直接的な戦闘に従事させるわけではありません。しかしながら彼らの魔導は無限の可能性を秘めております。陸軍に招集される前に確保すべきかと」


 私が彼女らを初めて見た時には既に戦闘不適合であった。隅で非戦闘隊員としての訓練をしていた彼女らに陸軍の視察の眼が行き届かなかったのは幸いである。既に海軍に取り込む手回しは済ませてあり、配属先さえ確保できれば海軍の魔導兵として採用する手はずとなっている。


 ここまで念入りに手をかけるのは理由がある。それは魔導師人事を陸軍が掌握しているためだ。そもそも魔導兵学校も陸軍の機関である。更に海軍上層部も受け入れに消極的な姿勢をとっているのも大きい。そのため魔導兵が海軍にくることは稀であった。最近海軍に採用された魔導師は長距離知覚者の大物が一人いたが、これほどの適任が認められない限りは海軍側も受け入れの要請をしない。なので魔導師は皆陸軍の部隊に配備されるのだ。


「ふむ、魔導師の試験的な導入は君に一任している。他の魔導部隊については異存はない。よくやってくれた。しかしながら、その子らの配属先については保証しかねる。12歳の少女らにあわせる軍服はあるまい」


 一応魔導兵の年齢制限はないのだが前例のない話である。少女の存在に疑義を呈する輩も出てくるだろう。


「私は彼女らの力は帝国の勝利に貢献できると確信しております。彼女の能力を最大限に引き出すことが叶うのなら、帝国一の魔導兵士になり得るかと存じます」


 水元大佐はもう一度資料に目を通す。こんな幼気な少女達も戦争をする時代となったのかと目を細めずにはいられなかった。


「高藤少佐、君にこの二人を任せよう。配属先は先ほどの通りだが、別な機関に所属先をつくりたまえ」

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