真冬のリトルガール@ワンピース
Q設定的に戦前の日本と近いようなのに買い物?
A ご都合主義設定でちょっとだけでもご容赦ください。
(具体的な時代背景で考えるなら、このころからすでに規定の規格以外の服は作れもしないし流通もしてなかったはずで、そもそも衣類は切符で支給)
「かりんちゃん。これもお願いね。あとこっちも。このぬいぐるみとってもキュート」
出航前の慌ただしい訓練の合間、小隊の面々に連れ出され街中を練り歩くのには一つ事の理由がある。
目的といってはまあ仰々しいもんで、単に目の前に積み置かれる缶詰タバコ等海の上で貴重な娯楽品の品々を手に入れるためだ。
酒保では頂戴できず、かつ航海中 要りようになるものを優先的に買い求め、ブリキ缶に詰めては容符に取り込み、そして私の能力で体に貼り付け保有させるという一連の動作に追われつつも、小隊各位の赴くままに付き従っている。
ただいま雑貨屋でとある魔導兵の買い物を待つ最中である。
航海生活を目前に控えた小隊に、物資内密保有可能な能力者であると魔導隊の面々に周知された私は、今や超高性能缶詰もとい一 輜重兵として荷物持ちという有り難い職務を頂くこととなり、かれこれ一週間も経たぬうちに膨大な量の容符の取り込みと並行した個別管理に追われていた。
この有様だと、私たちが使う取材用の機材は全て手運びになり、私物も全て慰問袋に詰めなければならないほどだ。出航前に私の保有量限界まで詰め込めるだけ積み込んでいく腹決めらしい。
「しいらさん。流石にそのぬいぐるみはいかがなものかと。持ち込むにしても見つかれば怒られます」
「えー?お俸給海の上じゃおやつしか買えないもの。また帰ってくるのいつ頃かわかんないし今のうちに買わないと」
大隅 しいら魔導少尉は私のおずおずと答えた進言には気にも留めず、その大きなクマも手放すつもりはないらしい。
そして更にそのまま雑貨屋の店主と値切り交渉、隣にたたずむウサギのぬいぐるみとの抱き合わせ値引きに入る。
非の打ちどころのない美貌と甘え上手でキュートな彼女にとっては店主の商売魂を抜かすなんてことは朝飯前なのであろう。
すでに別のお店で四件の交渉に成功してるのを目の当たりにしているので、ここで引っ掛けてももうなにも驚くまい。
交渉が終わり、店の外で待機していた私に戦利品を両脇に抱え無邪気な笑顔を引っ提げてピースするハイカラ娘少女は、私たちの世話をしてくれている小隊の中で、花房少尉や光神軍曹と肩を並べるベテラン少女でもある。
花房小隊長と光神軍曹が第四小隊最年長「六十六期卒」の同期だということを踏まえても、彼女の存在は特別らしい。
彼女が魔導電信兵なる小隊の通信網たり得る兵科だからということも十分な要因といえるが、指揮魔導伝達にあわせ情報共有の戦術的な指示を担う、若く聡明な彼女の手腕と判断が局地的戦闘を打破せしめることで勝利へと導く。
その魔導兵としての才幹以上の素質を認められてのことだった。
魔導潜航艇の頭である小隊長と、魔導航空偵察が主任務かつ編隊組んで列機との緻密な連携指揮を執る光神軍曹が全体に指示を送るのはほとんど戦闘前なので、戦闘中はすべて彼女の指揮で小隊は連携し戦闘することができる。
そしてもう一つ。魔導隊の一癖二癖もある集団の中でも更に特異にさせている点が彼女の平時と訓練中の性格の温度差。
それがもうなかなかのもので、今のにっこにこの天真爛漫な少女が訓練中に厳格な指揮官に変貌するとは誰とも想像できないだろう。
理不尽な海軍精神に基づいた喝が飛んでくるよりかはいくばくかはましだが、年上どころか小隊長にさえも食って掛かる様は末恐ろしく、航海訓練中に塹壕を探し回りたくなるほどのものらしい。
その恐ろしさに二重人格者なのでは?と実しやかに囁かれているが、実際のところどちらが本当の姿なのかは誰にもわからない。藪蛇は御免被るので誰も触れてない小隊内の一種タブーに近いそうだ。
「あと、じゃーん。こんなのも買っちゃいました」
そんな鬼士官殿が鳴りを潜める比較的賑やかな繁華街。ぬいぐるみを受け取り埋もれている私にしいら少尉が可愛らしい仕草と共に見せてくれたのは、肩ひものついた所謂ワンピース服と云われる随分と西洋な代物。
シンプルながらも胸元辺りにふりふりとリボンが装飾された純白のワンピース。実用的婦人国民服のワンピースとは程遠いリトルガール仕様のお洋服だった。
物不足の有名なスローガンが掲げられ、被服や様々な生活必需品に統制が敷かれ、ぜいたく品排斥運動が盛んな今日におかまいなしに買えてしまうのはいかがなものかと問い詰めたいのだが、店の奥の非売品まで買い漁れば一つ二つと規定外の品を持って行ってしまえるのだろう。
また随分と目立ちそうな衣類を着るつもりなのかと考えていたのだが、ふと再びワンピースを注視する。彼女が着るには一回り小さい気が……。
忽ち嫌な予感が脳裏をよぎってしまう。そういった際の予感は外れた試しが無いので、半ば確信めいたものがある。いや、まさかね……。
「いやー。見つけた瞬間、絶対に似合うと思ったの!もし寸法合わなかったら仕立て直してもらうから。じゃ早速試着部屋で着替えてみて」
誰がとはもう言うまでもなかった。我が親友つぐみはただ今茉莉さんと唯咲さん達に連れられて外出中なのだから、袖を通べく人は周りを見回しても私のみ。
これが被服なのかと疑うほどのハイカラチックな代物を私が着る?通す袖がないノー、スリーブは服の想定の域を超えてますから。そしてなかなか際どいスカート。一応下穿きパンツがあるとはいえ絶対寒いです、それ明らかに冬の格好じゃないです。お膝が寒くて足と股座がすーす―するのは間違いない。
ありあわせの布でやりくりをしているつぎはぎもんぺを着回し、みずぼらしい恰好と言ってもいい私の装いで、無論お洒落心のかけらも持ち合わせていない。そう出会うはずのない対極の衣類が、今まさに私の目の前に立ちはだかっている。それを私に着こなせとな?
これを着こなすのは物資統制とは一切無縁な富豪令嬢や華族の方々という上級国民と呼ばれる人々と、戦場にまで化粧品を持ち込もうとする目の前のハイカラ魔導少尉ぐらいのものだ。
戦時下のお洒落といったものは今どきというものではなく、未来的な発想と言わざるを得ない。
序列的にも下っ端な私たちにいつもお世話してくれる魔導小隊の面々には感謝しきれないのだが、ここだけは、この瞬間だけは断りの意を表すべき。かりん。負けちゃダメ。と、自分に言い聞かせ必死の抵抗をかける。
「わ、私はその、お洋服は間に合ってますから……。あと、別にお洒落た恰好したくもありませんので……」
「女の子なんだからお洒落しなくてどうするの?ほら、私じゃサイズ合わないし、物を粗末にしちゃいけないご時世にわがままなんて帝国精神に反するのだよ」
くっ、しいらさんの目が明らかに獲物を狩るギラギラな視線になっている気がする。これは愉快犯に違いない。
「あっ、つぐみちゃんなら興味あるって言ってましたからもしかすると着るかもしれません。わたしも着れないの残念ですけど、私なんかよりあの子のほうがきっと喜ぶと思うんで、そのワンピースは是非つぐみちゃんに譲ってあげてください」
つぐみ……。ごめん。君の犠牲は無駄にはしない……。
私は不在中の親友に今度お菓子譲る約束を密かに頭の中で交わす。咄嗟の逃げ口につぐみにブン投げたわけではなく、個人的に純白ワンピース姿の天使のような、あどけないつぐみを見てみたいという興味もあるからだ。決して親友を売ったなんてことはない。
胸が迫り出たつぐみならきっと似合うんじゃないかな。うん。はい、結構投げやりないいわけです。つぐみ……。ゴメン。
私が大胆なワンピースに着られてしまうぐらいならよりつぐみのほうが着こなせるし適任だろう。この服もそのほうがいいに違いない。よし目の前のこれはつぐみに譲ってしまおうそうしよう。
しかし、つぐみに着せてしまえば私もかわいくおしゃれした姿を見れるし、降りかかる毒牙からも逃れられるしなかなかの妙案といったところか。
即座に目の前に立ちはだかったこのワンピースを、如何にしてつぐみに着せてしまおうかに切り替える。
私が今の現状を乗り切るにはそれしかない。
「ダイジョーブ。そんなこともあるかと思って、じゃじゃーん。同じサイズの二着目も値切ってきたよ!あ、どっちでもいいよ?どっちの色が好みかな?」
あーーーーーー。あーーーーーー……。
もうだめだ……。おしまいだ……。
というかはなっからどっちも標的だった。元より逃げ場ないじゃん……。
すがる間もなく、そしてなす術もなく、あっという間に試着室に押し込まれてしまった。その手には、先のとは違う色合いのワンピース服。私たちの年頃の被服なのだから多少、リトルガールチックな服なのはわかるが、ひらひらスカートの圧倒的な破壊力の前に女子力〇少女は、試着室の中でただただ途方に暮れるしかなかった。
ただ、しいらさんを待たせるわけにもいかないので、手短に着替えるしかない。
私が持ってる被服は普段から着こんでいる軍服のような男性用国民服に似た服装、だぶだぶの割烹着とつぎはぎ自作もんぺが大半であと、何着か寝間着やら下着等々。ブラウス系もなくはないが、優先的につぐみに回しているので、洋服のイメージといえる服はほとんどなかった。
ワンピ―スなんて一度も着た覚えがない。
さて、目下の懸案に思考を戻そう。今ここで問題なのは肌着とノースリーブのワンピースが合わないこと。衣類すべて容符として私が保有しているためこの場ですべての組み合わせができるのだが、着合わせる服なんて持ち合わせてません。どう見ても詰んでます。
下着も今着ていたのが腰回りの厚めのかぼちゃパンツなのだが、もし腰回りのラインが出るとなにか不味かったりするのだろうか?座る時にぶかついた線が浮くのがダメだとか……。ショーツタイプの下着は持ち合わせてないので、何が正解なのか皆目見当がつきません。
軍規に扱かれて困惑することもままあれど、まさか服飾の着こなし方で途方に暮れてしまうとは全くの予想外であった。いっそ、下もなにも穿かないほうが正解なのか?
このご時世は布面積の大きいお洒落服に対しての風当たりは強い。一方このリトルガールワンピースはそのおひざもとを寒空の吹き付く風当たりに晒すことで、世間様の際どい批評を巧みに躱せる膝が隠れるか否かの短い仕上がりの丈となっている。
これにノーパンはまずい。モロ見えも辞さない際どさスリリングを楽しむ気は生憎と持ち合わせていません。
が時間も差し迫る私はついに英断を下す。そう、あえて何も穿かず着ずの生まれたままの姿でワンピースを着る道を選んだ。
私には寒さの問題には目をつむりつつもこの状況を打破する秘策があった。そう、下着のラインが気にならない最善手、下着の着用無しに適応できる能力を備えていることを忘れてはならない。
私はすべての服を脱ぐと能力を解放させる。忽ち全身を覆うように浮かび上がってくる護符ですかさず全身の肌を隠す。
つまるところ普段より全身を覆っている護符の不可視常態を解除させるだけでよいのだ。
その後に覆う必要のない肌の露出個所を再び不可視化させて解決。いつものお風呂あがり水気を取っていた術の応用ともいえる。
つぐみのほうもやろうと思えば同じことが出来る。つぐみの場合は日課の護符貼りの際に施す必要があるが。
もしこの場で着替えをのぞこうとする輩がいようとも、この護符に覆われ、全身に護符を憑依させた夢想魔術に一瞬の隙も有りはしない。そう、衣服のラインなど解放された私を縛るるに足りないのだ。
ただ、逆に体のラインは紙越しにくっきりなので護符の紙質を厚くしない限りは白肌の裸身を公衆に晒すようなものなのだが、胸は晒のようにきつめの憑依を施しており、臀部のラインも布地をピタッと貼り付けない限りはまあ大丈夫。たとえまじまじと見られたとしてもセーフ。だと信じたい。
もし下から覗きこまれるとなると、お尻の付近をガン見されたら恥ずかしいかも。紙越しでもラインが出るやも知れないし。
このフロンタル作戦(たった今命名した)も半ば苦肉の策であるため、替えの下着が手元にない以上、この際諦めるしかなかった。
もしつぐみのような胸元の双丘があれば、そことなく晒を巻いたような変化が見受けられ一部抵抗感も薄れるのだが、いかんせん窪んでないだけましだという程まだまだ平坦な自身の体躯ならもとより凝視されまい。
かがんだ時の胸元の隙間にだけは気を付けよう。
「かりんちゃんよく似あう!!私の見立てに狂いは無かったわ。その白の帽子も似合ってるし、うん。完璧すぎる。これでよかにせスーパー魔導師に早変わりね!」
試着中自分の姿を確認しようがないので自分がどう映っているかは定かではない。
だがハイカラ少女の見立てと、厳しい審美眼で精査したうえの太鼓判を頂くことで、一先ずの窮地を脱したといってもいいだろう。
少しサイズが大きいようで肩ひもがはだけそうなのが少し気がかりなのだけどはしゃぎながら抱き着くのはちょっとやめてください。人に見られてます。
根本的な羞恥の問題からは逃れられていないうえ、普通に寒いのだがそこはなんとか我慢してみせる。
布も薄いものではないので、大きく透けたり服としての役割を損なうこともなく、露出部位の脇と足回りの寒さにとどまっている。
しかしとある少女がくれたこのハイカラの白帽子を被ることないままで忍びなかったので、今ここで丁度似合う格好が出来て良かったかもしれない。
あと、今更ながらハイカラ上官の付き添いに質素な姿を晒しながら歩いたことが少し気がかりとなった。
私がこの格好で連れが地味な恰好なら居心地が悪いかも。
いくら目立つ格好とはいえ外出中の服装は上官の意向に合わせるべきだったと後悔する。ドレスコートというやつ。
私が並んで歩くことによって彼女の品位を知らず知らずのうちに下げ、よくない心象を抱かせていたのかもしれない。
おお。今まさにこの現状を振り返るととても危険な橋を渡っていた気がするぞ。
このワンピースのような超弩派手衣類を宛がわれる前にそれなりの服を用意しておかねば……。
「ハイカラかーりーはレアだね。金髪少女にこのスタイルはとても前衛的だわ……。夢想魔術師の証たる鮮やかな色髪を余すことなくファッションに取り入れる尖った姿勢。この栄えある姿はまさに魔導士の鑑。襲踏させしむべき完成された魔導兵の姿だわ。これはつまり魔法少女……?檻の中で現存させるべきか?腰のラインもなかなか華奢で素晴らしい。むむっ……」
…………んん!?
これからの身の振りを思案していたため、一瞬何が起こったのか脳がフリーズを起こし目の前の出来事を理解出来ずに固まる。
かがんだ体勢で、私の着ているふりふりワンピースの裾を腰上まで捲仕立てたスカートめくり犯罪者が、私の薄紙隔てる絶対領域を至近距離で凝視する姿がそこにはあった。白昼堂々の犯行である。
「へぇー。腰のラインが気になってたけど、こーゆーことなのね。こんな使い方もできるなんて相当便利な能力だね」
一瞬時が止まった。思考回路の復旧に伴い弛緩した時間は緩やかに流れる。
そして固まってしまった私をゆっくりと融解させる。
遅れてむくれるカエルの鳴声のような声が響いた。
あ゛あ゛あ゛ーーーーーーーーーー!!
清楚とは程遠い悲鳴を上げている私にお洒落は半世紀ほど早かったようだ。
「どうしたつぐみ?」
「かーりーの悲鳴が聞こえた」
「へぇ……。御郷は確か大隅少尉と同行してたよな?」
「うん。あっちー」
「衣斐、つぐみ。あんた達その肩車で街中を歩くのは何とかしなさいよ。目立ちすぎだから」
「まつりは大げさだな。飛ばないだけましだろ?」
「あんたこの前つぐみを抱えて飛んで、小隊長と鬼の逆鱗に触れたばかりじゃないの。いい加減凝りなさいよ」
「しょうがない。さあ、降りなつぐみ。さて、そろそろ飯でも食うか」
「わーい」
「えっ?かりんはそのままでいいの?」
「んー。今の叫び方が痴漢に遭ったっぽい声だったからへーき」
「私にはその状況がどう平気なのかさっぱりだわ……」
投稿遅れつつも十部まで達成しました。一応十部を一つの区切りとして作品を練りたいと思います。
十部執筆したら外伝少し触ろうかなと考えてたので、そっちの投稿が先になるかもしれません。
作者の煩悩のせいで話が進まなくて作者自身困惑しています。
かっこいい戦闘シーンばりばり、魔法設定ましましの作品を目指しているはずなのに現段階どうしてこうなった感がいがめません。
艦内生活だとなかなかこういう描写できないから最初に詰め込むしかなく、当初から多めに入れるつもりでした。後悔はしていない。多分。初作品なので多少ちぐはぐでも思うままに完走を目指します。
Q 前書きのQ&Aの自己完結読者的なうけを考えずに勝手に続けて大丈夫なの?
A 5~10年程前のケータイ小説(某異世界シューティングゲーム系二次創作)でこの方式を見た記憶があります。我流ではないですが、本編の前にあると読みにくいというのが実態。なので予備事項はすべてあとがきに移行します




