エピローグ1
この第一部分はそのうち削除する予定となっております。理由はボツコーナーに添えてあります。
読み飛ばしてもOKですし、斜め読みでも構いません。
あと、ボツコーナーに戦闘シーンの展開をIFで出しておりますので、試し読みする方はついでにそちらを読んでみるのもいいかもしれません。
嫌になるほどの眩しい日照りが少女の不快感を募らせる。
腕に張り付けてある符が汗でふやけてしまうが、16歳のベテラン「能力者」少女に支障などない。
最期の時が迫っている。
生を全うするなら誰だって幸せに逝かせてほしいと願うもの。
だが神様は意地悪だ。
死に場所は一緒だと誓った最愛の戦友を奪った。
神様が死者を弔うべきなら、引き裂かれた私を迎えに来てほしい。
私にもう一度あの子に合わせてほしい。
いないのならせめて、じめじめした気持ち悪さからでもいいから解放してほしい。
この戦争からでもいい。
もう軍は瓦解寸前らしい。
噂では海軍は陸軍に吸収されるとも聞くし、連邦が宣戦布告したとも聞いた。
寡聞な少女にはこれからどうなるかなんてわかるはずもなかった。
この遅延戦闘の意味。
そして遅延戦闘の果ての顛末を。
「つぐみちゃん。あとちょっとで終わせるから。寂しいけどもう少しだけ我慢」
この戦争はもうじき終わる。皆誰もが帝国の敗北と連合の勝利が間近であることを信じて疑わなかった。
しかしそれは帝国の奇策により阻まれることとなった。島国であるその広大な領土に突破不能な結界「一部」を除く全領土に範囲で張り巡らせるという人類史上類をみない手段で。
この結界の規模は連合国を驚かせた。
結果として、幾年にも及んだ世界戦争の根源ともいえる帝国に正義の鉄槌を下さんとしていた連合国は、その最後の一撃を加える機会を失ったのだった。
物理的ありとあらゆる遮断を成功させてはや2か月が過ぎようとしていた。連合国側は突破の手段がなく外交面のテーブルも中立国に一方的な休戦声明が出されて以後返答がない。
残す攻撃目標は本土と切り離された南西の領土だが、切り離される以前から大規模な戦力投入が偵察からの報告がなされている。しかも航空偵察では兵器の存在は把握できたが肝心の「能力者」の存在は不明だ。
諸島戦の勝利を積み重ねた連合国としても、本土決戦の抵抗による流血は免れることはできないだろう。
しかし風前の灯火ともいえる帝国の最後の抵抗は勝利を覆すものではない。戦力比で既に勝敗は決しているのだ。物量の差は戦場では絶対であり、空襲は昼夜問わず絶え間なく、そして無差別的におこなわれている。
この状況下まだ奇策が残っているというならば、その源である能力者を爆撃で吹き飛ばすだけのこと。
ただそれだけのことだった。
「それで、玖州に譲渡された新政府から何か返答はなかったのかね?」
連合国軍総司令官のチェーンラビ大将は会議冒頭、この戦争は決戦による本土制圧で決着をつけるべきだと主張する。
「はい。未だ沈黙を続けております。抵抗を続けるつもりだと思われます」
チェーンラビは燻った葉巻を灰皿に押し込み、そして一呼吸入れて今度の作戦方針に言及した。
「こうなった以上玖州制圧作戦を早急に推し進めなければなるまい。あの大結界の内側で戦力の立て直しを図られたと想定すべきである。こちらからの手出しができないのであれば、玖州方面に連合軍を駐屯させ向かい打つ準備をする必要がある」
あの忌まわしい卑怯者共め……。
チェーンは内心苛立ちを隠すことが出来ない。手の中に収めた勝利がするすると指の隙間からするすると零れ落ちていく感覚。
あの卑劣な開戦からはや五年が経とうとしているこの最後の、最後の局面は後手に回ることも、引き延ばしを許すこともできないのだ。
「司令。例の兵器について使用許可を頂けないでしょうか?本国からはデータを集めよとの指令も出ております」
ある参謀からの発言。この新兵器を実戦投入するかの決定はこの会議で判断することとなっている。
「本国はこの兵器をどう思って開発したのだろうな。フンッ……。まずは上陸作戦と併用すべきかどうか検討する。」
実験段階通りの性能だとすれば、この一撃で上陸作戦を行わずに帝国を滅ぼせるはずだ。
しかし、標的の都市はあらかた焼け野原になっているのに加え、能力者の分散ゲリラ部隊が予想される為、敵兵力殲滅を掲げるならば上陸作戦も必要である。
徹底抗戦の要である魔導兵は出来る限り刈り取らねば、戦争継続の意思を挫くことは出来ないであろう。
戦後処理の問題もある。駐屯地が毒の焼け野原ではたまらん。
「悪魔狩りに悪魔の兵器か……。」
チェーンの呟きは、喧騒とする会議の空気によりかき消されていった。誰もこの兵器に異を唱えることはない。そして研究者の懇願署も虚しくも届くことはなかった。
新兵器の実践投入が決定される。




