第一章一話「ニンファ村」
ここは精霊と人が共存し、精霊とは裏腹に忌み嫌われる存在の悪魔がいる世界。悪魔と契約することは世間一般的に禁忌とされている。しかし代償を払うことで契約を交わし、自分の願いを叶えてくれる悪魔に手を出す者も少なくはない。ただ、悪魔と関わろうとした人がその後良くなったという話は聞かない。
つまり、そういうことなのだろう。
四大精霊と呼ばれる高位の精霊が住む小さな村がある。そこには多くの人が四大の下暮らしている。その村、【ニンファ村】に住む一人の少年ルカ・フォルネウスは村の人々と協力し、仲良く暮らしていた。
その少年の平穏な生活はある日を境に変貌を遂げていくことになる。
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「ふあ~、よく寝たぁ」
黒髪に黒い目をした少年は寝ぼけまなこを指でこすりながら手元の時計を確認する。時計が示す時刻は9時半を回っていた。
「うわーーー!寝坊したあああ!約束の時間とっくに過ぎてる!?」
二階建ての少し大きめな家から悲鳴にも似た声が上がる。
騒がしい一日が始まる...
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「もう!おっそーい!」
頬をぷくーっと膨らませて不機嫌そうにしているのは僕の幼馴染のサラ・ソロモンだ。 今日は一緒に森に果物を採りに行く約束をしていたのに僕が寝坊をして約束の時間に遅れたことにご立腹らしい。
「ごめん!、昨日は色々手伝いをして疲れ切ってたから長く寝ちゃったみたいなんだ。」
僕は顔の前で手を合わせて謝る。
「まったく、せっかく今日は手伝いをしないで遊んできていいよってお母さんに言われたって言うのに...」
そう、僕には両親がいない。僕がまだ小さい頃に死んでしまったらしい。だからサラの両親にずっと面倒を見てもらっていると同時にサラのお母さんの手伝いや村の食糧確保をしている。
そして今日はその役割をやらずに遊んでおいでと言われたのだ。
「ほら、時間も遅れてるんだしはやく行こ?」
「ちょっと待った」
サラの言葉を遮るように僕は言う
「こんどは何?」
ちょっとばかり声のトーンを低くして僕に語りかけてくる。
「四大精霊様に挨拶してくる。今回も無事で遊べるようにってね。」
だからもう少しだけ待っててとサラに言い、四大精霊のいる神殿に向かって颯爽と駆けていく。
そう、この村には四大精霊と呼ばれる精霊が神殿に住み、村民と共に暮らしている。神殿とは言ったものの他の家より少し華美な装飾がされているだけで普通の家屋なのだが
「四大精霊様、これからサラと森へ行ってくるので挨拶をしに来ました。」
その言葉を聞いて紅い髪をした荘厳な面持ちをした大男は言った。
「そうか、楽しむことと同時に安全にはしっかり気を配るんだぞ」
見た目からじゃ想像もできないような優しい言葉をかけ、足早にその場を去ろうとしたがルカの一言で足を止めることになった。
「今日はイフリート様だけなんですか?」
「ああ、最近何か不穏な気配を感じててな、三人はその調査に向かっている。森でも何があるかわからん 十分気を付けるようにな」
「わかりました。では失礼します。」
そうして僕は神殿(笑)を後にした。
「せめてあの子たちには何も起こってほしくないな」
イフリートはルカが去って行ったあと独り言を呟いていた...
「ごめんごめん、じゃあ行こうか」
「そうね、行きましょ」
そうして僕たちは森の中に足を踏み入れた