表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/16

#015「夏の終わり」

「お疲れさまです、松本主任」

「お疲れ、木村くん。久し振りね」

「ここのところ立て込んでいたので、擦れ違ってばかりでしたね」

「本当ね。唐突だけど、鉛筆で下書きしてペンで清書するのって、日本らしいと思わない?」

「今朝のトピックですか?」

「違うの。ふと、思っただけ。鉛筆やシャープ・ペンシルが一般的な日本と違って、欧米だと早い段階でペン書きを習うでしょう? 何度もやり直して、最後に綺麗に出来た完成品だけを残す日本と、やり直しが効かない状態で、初めから綺麗に出来るように心掛ける欧米という違いが、国民性にも少なからず影響を与えてると思って」

「なるほど。興味深い差異ですね」

「ところで、天宮さんと一つ屋根の下で暮らすことになったそうね」

「そこは、いきなり切り込むんですね」

「ひと夏の恋に終わらなかったみたいだけど、どこまで進んだのよ?」

「手頃な物件が見付かったので、引っ越すことになりました。これで少しでも妹が自立するようになれば、助かるんですけどねぇ」

「智子ちゃんが変わるとは、到底思えないけど。家具や家電は買ったのかしら?」

「今週末に、シャトル・バスで量販店に行くことになってます。それにしても、一人暮らし用の家具や家電は無駄が多いですね」

「小型化するために、無理してるところがあるわね。同棲生活を始めるまでが一番盛り上がる時期だから、存分に浮かれなさい」

「旦那さんとも、浮かれたものでしたか?」

「思い返すと、顔から火が出るけど、目線を合わせる度に、意味も無く明美さん、和彦くんと呼び合ったり、新たな発見を報告し合ったりしたものよ」

「微笑ましいですね」

「ただいま、陽子さん。おかえり、大輔くん」

「物真似ですか? 似てませんけど」

「妄想よ。でも、いいこと? 先輩として忠告するから、覚えておきなさいね。空調設定と家事分担と財布事情は、事前に話し合うこと。それから、相手は血の繋がりの無い他人だから、察しの悪さは当たり前だと思うこと」

「家族とは違いますからね。空調、家事、財布には気を付けます」

「今はピンと来ないかもしれないけど、三ヶ月くらい経ったら、きっと意味が分かるようになるから」

「貴重な意見をありがとうございます。まっ、やり直しが効かなくならないように注意しますよ」

「人間関係は、書き直せないものね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ